JR大阪駅直結の駅ビル「イノゲート大阪」に7月31日オープンした『バルチカ03』。軽く一杯飲める立ち飲み店からゆっくりと食事を楽しめる店まで50の飲食店が並びます。ホルモン焼き・串カツ・海鮮など、どれも“おっさん”の大好物。

 この開業の日を特別な思いで迎えていたのが、「バルチカ03」の仕掛け人・舟本恵さん(46)です。「おっさんの人口密度が一番高い場所になれたらいいなと思います」と話す舟本さん。ターゲットを“おっさん”に定めた新スポット誕生の舞台裏に迫りました。

そこにしかない名店×安さ=おっさん憩いの場!?

 5月下旬、舟本さんの姿はなんばにありました。行われていたのは、テナントに入る中華料理店『海鮮中華 Ja.Cha』のメニュー撮影。誘致したい店には必ず足を運ぶのがポリシーで、自ら出店交渉などを行います。

 (舟本恵さん)「おっさん代表として食べたくなる写真ですね。いい感じです」

 JR西日本に入社した舟本さんは、1年間駅員を務めたほかは、ずっと駅ビル開発などに携わってきました。得意のマーケティング力を武器に、『天王寺ミオ』『ルクアイーレ』などこれまでいくつもの施設を成功させてきた“駅ビル開発のエキスパート”です。そんな舟本さんが今回戦略の軸に据えたのは、おっさんの受け皿づくり。

 舟本さんが梅田エリアを分析した結果、観光客など“非日常”を求めて来る人が楽しめる店が増える一方で、“日常”を過ごすサラリーマンたちの憩いの場が減っている現状が見えてきたといいます。

 (舟本恵さん)「梅田はある程度の価値が提供されている。唯一困っていたのが、梅田で働くおっさんたち。(梅田は)お昼を食べるのも高い。ランチで1000円以下は難しいし、夜飲みに行くのも高い。男性、特におっさんサラリーマンが飲みたいけど飲めない。おっさんたちが行き場を失っている状況があったので、じゃあおっさん向けのバルチカ03を新しく作ろうかと」

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 ターゲットをおっさんに絞った舟本さんがまず手掛けたのが、ニーズの掘り起こしです。半年かけて、梅田で働く男性1000人にアンケート調査をすると、各地で愛されている“そこにしかない味”を求める声が見えてきました。「そこにしかない名店」かつ「リーズナブルな価格帯」が、おっさんをひきつける鍵のようです。

 (舟本恵さん)「そこにしかない名店を便利なところに呼んできてほしいと。わざわざ行くより近いほうがいい」

創業72年のそば店「それなら同じ味が出せる」と出店を決断したワケ

 7月、舟本さんが訪れたのは、大阪市内の知る人ぞ知るフレンチの店『le comptoir』。舟本さんの依頼に応え、初めて商業施設への出店を決めました。

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 店は『バルチカ03』で提供する新メニューの開発真っ最中。酒のお供の定番、牛スジとホルモンを赤ワインで煮込み、春巻きの皮で包んでカラッと揚げた一品を作っていました。

 (店の人)「フランス料理らしく、かつ、おじ様が好きなのかなというものを包みました」
 (舟本恵さん)「バランス的に、ホルモンが入っていながら油分はそんなに強くない。見た目が華やかで楽しげで、演出もあっておじ様も喜ぶ」

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 狙いを定めた店に商業施設への出店を決意してもらうことは容易ではありません。営業時間が決められていることや、本店と味に違いが出ることを懸念する店が多いのです。そこで舟本さんは、商業施設としては異例ですが、営業時間を店側が自由に決められるようにしました。また、味が変わることを嫌って出店を断っていた店も、事情に応じた打開策を提案し、説得しました。

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 創業72年の『夕霧そば瓢亭』は、今回初めて商業施設への出店を決めました。名物の「夕霧そば」は生地にゆずの皮が練り込まれていて、生卵が入ったつゆにつけてすすれば、ほんのりと優しいゆずの香りが広がります。

 (客)「おいしい、めっちゃおいしい。コシがあって、ゆずの香りがして」
 (客)「満足しています、最高」
 (客)「仕事帰りとか疲れたときとかに、ビールとおそばをさっと食べて、元気が出るお店です」

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 本店は梅田のお初天神からすぐの場所。新しい施設から車で10分足らずの距離にあります。打ちたてのそばを本店から運ぶアイデアを舟本さんから提案され、それなら同じ味わいが出せると決断しました。

 (夕霧そば瓢亭 代表・艸葉典久さん)「近場で次の店を出そうかと。いろんなお客さんに知ってもらいたいというのもあるので、出店を決めさせていただきました」

大盛況のオープン当日 舟本さん「梅田経済圏の活性化の一端を担えたら」

 オープン10日前。自ら声をかけた出店者らと最終確認に余念がない舟本さん。『バルチカ03』に入る『夕霧そば』では、実際にそばを茹でて提供するまでの流れを確認していました。

 (夕霧そば瓢亭 代表・艸葉典久さん)「(バルチカ03の店舗は)利便性が高い。JRでどこかから来られた方も、時間がないけれどすぐにパッと食べたいというときも味わってもらえる場所を提供していただけて、われわれもありがたいなと思っています」

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 7月31日、迎えたオープン当日。50店中35店舗が商業施設初出店とあって、待ちわびた多くの人が訪れ大盛況となりました。中でも目立ったのは、楽しそうなおっさんたちです。

 (客)「梅田でこういうおっちゃんたちが飲めるのはありがたいです。上司と飲める場ができたのですごく助かります」
 (客)「サクッと食べてサクッと飲めてね。あとぐるっと回ってガンガン行きたいと思います」

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 (舟本恵さん)「梅田で働く男性サラリーマンのみなさんが楽しそうにご利用いただいているのは、本当にやってよかったなと思います。梅田経済圏の活性化の一端を担うことができたらなと思っています」