8月8日、2019年の運用開始以来初の発表となった「南海トラフ地震臨時情報」。臨時情報(巨大地震注意)の発表を受けて国は、「1週間程度、日頃からの地震への備えを再確認」を求めています。
気象庁も「臨時情報」を発表した翌9日から、毎日午後3時半に「南海トラフ地震関連解説情報」を発表し、地震の概要や留意点を示しています。きょう(13日)の発表でも、「8日の地震の発生後、南海トラフ地震の想定震源域ではプレート境界の固着状況に特段の変化を示すような地震活動や地殻変動は観測されていません」と発表しました。
臨時情報(巨大地震注意)は気象警報とは違って「発表ー解除」はない
実は臨時情報は、大雨警報などのように「発表ー解除」といった仕組みではなく、”巨大地震注意”は解除されるものではありません。内閣府によりますと、このまま特段の変化がなければ、発表から1週間経過する15日には、臨時情報の『呼びかけ』が終了する見込みです。
南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)の初の発表から1週間が近づく今、心配される「1週間以内に」地震が起きた過去の事例を振り返ります。(画像引用:南海トラフ地震関連解説情報(第5号)解説資料より)
南海トラフ地震「評価検討会」会長の見解
8日、臨時情報(巨大地震注意)発表を受けて記者会見をした南海トラフ地震「評価検討会」会長で東京大学名誉教授の平田直氏。平田氏は「いつ地震が起きても不思議はない状態のところで、さらに高くなった。地震学的には「数倍高くなった」は極めて高い確率」と説明しました。
『地震学的には「数倍高くなった」は極めて高い確率』とは―。元の数値はどれくらいなのでしょうか。
1週間以内にマグニチュード8クラス以上が発生した6事例
今後30年以内に70~80%の確率で発生するとされる南海トラフ地震。この「30年以内」を「7日以内」に換算すると、概ね「1000回に1回」程度となります。つまりは、約0.1%です。では、どのように計算しているのでしょうか。
これは、1904~2014年までに発生した世界の大規模地震の統計データに基づいています。気象庁によりますと、その期間にモーメントマグニチュード7.0以上の地震は世界で1437回発生しました。その地震の震源から50km以内かつ7日以内にマグニチュード8クラス以上の地震は6回発生しています(1日目:4事例、2日目:1事例、3日目:1事例)。したがって、発生確率は多く見積もって約0.5%となります。
約0.1%が約0.5%に―。気象庁は、平時と比べて「数倍高くなっている」と説明しています。
日常生活の感覚では高いとは感じづらいこの数値。一方で、数値だけではなく、13年前に起きた事例を参照すると、数値の見え方が変わるのではないでしょうか。
東日本大震災発生2日前の地震
マグニチュード7クラスの地震後、2日後に巨大地震が起きた事例は日本です。2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)の2日前、3月9日に三陸沖地震が発生しました。この地震では、宮城県栗原市などで最大震度5弱を観測。東北地方の太平洋沿岸に津波注意報が発表され、最大の55cmの津波が観測されました。この2日後、マグニチュード9.0の東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)が発生し、死者・行方不明者が2万人を超える甚大な被害となったのです。
(引用:気象庁のウェブサイトより)
さらに、世界で起きた大規模地震では、マグニチュード7以上の地震後、14日目にマグニチュード8クラスの地震が発生した事例が2つあります。
一般的に、地震が続けて発生する可能性は、地震発生直後ほど高く、時間の経過ともに低くなっていきますが、ゼロになるわけではないのです。
「日頃からの地震の備え」をいつまでも続ける
「臨時情報」の発表からきょうで6日目。これから“無事に”1週間を迎えるかどうかにかかわらず、地震への備えは普段からやっておいた方がよいことに違いありません。自然を相手にして“絶対”や“可能性ゼロ”はあり得ない―。
結局のところ、南海トラフ地震の発生確率が今後30年で70~80%とされているからこそ、「臨時情報」発表の有無にかかわらず、普段どおり備え続けていくことが大切です。
◆取材・文 福本晋悟
MBS報道情報局 災害・気象担当記者。人と防災未来センター特別研究調査員。今年5月、初の「臨時情報」発表時を想定した特集を放送。