舞台は東京都世田谷区。「アスパラ」をヒントに建てた、建坪10坪に16もスペースがある家を紹介する。
お店のような外観…中に入ると『10坪に16ものスペース』が!
住人(アルジ)は、小学生の子どもがいる3人家族。夫は建築家で、4年前、子育て世代に人気のエリアに家を建てた。まるで店のようなおしゃれな家の前には、夫のお気に入りの青い外国車が停まっている。実は外壁のレンガや玄関ドアの色は車の色に合わせて決めたという。
建物は、住宅街では驚きの4階建て。ただ建坪は約10坪、駐車場わずか2台分しかないという狭小住宅だ。
1階は大きなテーブルが置かれた玄関スペース。建坪10坪の割には広く贅沢な使い方だが、夫が仕事で来客時に利用したり、妻がママ友と団らんする場所になっている。
そんな玄関から続くらせん階段の途中には、夫が趣味で集めた椅子を置くギャラリー、洗面、トイレが並ぶ。2階まですでに4つのスペースがあるが、実は家には全部で16もスペースがあるという。こんなにも多くのスペースを狭小住宅に収めた鍵が「アスパラ」だそうで・・・?
「アスパラ」をヒントにらせん階段を駆使して狭小を克服
建築系の専門学校で出会った住人(アルジ)夫妻。結婚後、都内の賃貸マンションで暮らしていたが、子どもが小学校に上がる前に夫の設計で家を建てることに。そこで見つけたのが、人気のエリアにある古家付きの土地。だが、住環境は理想的だったものの、土地の後ろには5メートルの崖があり、左右からは隣家が迫っていた。
そんな三方を囲まれた困難な土地での、家づくりの秘策が「アスパラ」。専門学校時代、夫が卒業制作として設計したその名も「アスパラの家」は、都内の狭小住宅を想定したもの。狭い土地でもらせん階段を使うことで、アスパラガスのように空間を上に伸ばして狭小スペースを有効活用するという案だった。夫は卒業制作のことをすっかり忘れていたが、妻が思い出し「アスパラでいいんじゃない」と提案したという。
2階にあるのは、階段と一体化したキッチン。ひときわ目を引くのが夫がデザインしたシンクのカウンターで、珍しい銅板製なうえ、湾曲している。銅なのでコップや食べこぼしの跡が残ってしまうが、夫は「食事の歴史を刻むみたいな感じで、素敵な味として捉えている」とか。
リビングで野球の練習!?狭小を感じない“子どもがのびのびと遊べる”空間
キッチンから階段を上ると、約5帖のリビングスペースが。奥のスペースとは80センチの段差で仕切ったスキップフロアになっている。
段差で気になるのが、横並びに貼られた丸いシール。これは少年野球に所属している子どものピッチング練習用の目印。このシールを的に見立ててボールを当てているという。夫がチームの監督なので、子どもは毎日家の中で練習に励んでいるのだが、ボールのおかげで月にいくつか家の物が破損してしまうそう。
子ども部屋にはアスレチック用のネットが!シアタールームとしても活用
段差の上は、7メートルの吹き抜けがあるダイニング。さらにらせん階段の周りに家族のウォークインクローゼット、寝室が続いていく。
寝室から上はダイニングの吹き抜けにあたる部分で、なぜかアスレチック用の特注ネットが張られている。実はこの空間は子ども部屋。飛び跳ねて遊ぶこともでき、壁のスクリーンをおろせば家族で映画鑑賞ができるシアタールームにもなる。
家族のヒストリーを刻み続ける家
狭小住宅でも16もスペースがあり、子どもがのびのびと遊べる家。設計した夫は、「新築のきれいでピカピカなおうちが一番いい時じゃなくて、子どもが何か傷つけちゃったとか、汚れちゃったみたいなところも家族のヒストリーとして味になって、10年後、20年後に一緒に年老いて完成していくっていうのがいいおうちだと思う」と、これからの変化も楽しみにする。
困難な土地でも、アスパラのようにたくましく伸びる家。家族のヒストリーがどんどん刻まれることで完成していくのだろう。
(MBS『住人十色』2025年2月1日放送より TVerでも放送後1週間配信中)