舞台は岐阜県多治見市。あらゆるコストダウンに挑戦して建てた、予算3000万円の“コの字型”の家を紹介する。
「コの字型」設計で“土地の暗さ”をカバー
住人(アルジ)は、2人の子どもがいる4人家族。夫は建築家で、東京から地元の岐阜へUターンし、2年前に家を建てた。シンプルな外観の建物は、奥に向かって2棟並んでいるように見えるが、実はつながっていて、上から見るとコの字型になっている。
1階には夫の建築事務所があり、2階が生活のメインスペースであるリビングダイニングキッチン。階段を上ると、明るい空間が広がる。明るさの理由は、4.5mの吹き抜けに設けた壁一面の開口部。この場所はコの字型のへこんだ部分にあたり、大きなガラス窓が付いている。元々、北側以外の三方を隣家に囲まれた暗い土地だったため、建物を東に寄せ、さらにコの字の内側に大開口を設置。これで周囲の視線を遮りつつも、建物が低い南西側から光を採り込むことができた。
結婚を機に、夫の地元・岐阜へUターンした住人(アルジ)夫妻。賃貸で暮らしていたが、子どもの成長とともに手狭になり、家を建てることに。そして妻が、場所は便利だが三方を家に囲まれた暗い土地を見つける。が、当初夫は乗り気ではなかったという。そのまま土地が決まらず3年。すると、敬遠していた土地の価格が1500万円から500万円に値下がりする。そこで土地の購入を決め、明るさ問題を解消するためにコの字型の家を計画。土地のデメリットを家の形でカバーすることができたのだった。
「コストダウン全部のせ」できることは全てトライ
一方、建物の予算は3000万円。だが、延べ床面積46坪、設計事務所を含めた3階建てで、現在の一般的な建築費用は5000万円にもなる。それを40%オフの3000万円に収めなければならなかったため、住人(アルジ)夫妻はコストダウンを“全部のせ”。DIYをはじめ、コストを削減できることはすべてトライしたという。
室内は全て木目。通常は壁を塗装したり、クロスや天井材を貼るところ、コストを考えて下地のまま完成という形にしたという。仕上げを省くことで約180万円ものコストダウンに成功した。
カーテンも「DIY」トータル10万円カット
実は、家をコの字にしたことで壁の面積が増え、60万円アップ。しかし、建物が「尺モジュール」でできているので、大きな開口部には既製品のサイズのサッシが入っているだけだ。尺モジュールとはいわゆる「尺貫法」のことで、尺をベースにした寸法での計測法。
家は一見変わった形状だが、家の寸法の基準となる尺モジュールを厳密に守って建てているので、既製品のサッシがそのまま使用でき、約70万円のコストダウンにつながった。
さらに4m以上あるカーテンは、妻が購入した布でDIY。これで家中のカーテンはトータルで10万円コストダウンできた。また、カーテンレールではなく安価なカーテンワイヤーを利用し、約2千円のコストカットに。
キッチンは「ほぼ見せる収納」約80万円カット
キッチンは、壁と同じく安価なラワン合板を使用し、ステンレス天板をはめた。IHや食洗機込みで総額は110万円。さらに、“ほぼ見せる収納”にすることで、全てに引き出しをつけたときと比べて約80万円削減した。収納では、ファイルケースや衣装ケースなど、通常キッチンで使わないものを転用し、地道にコストダウンしている。
水回りも、ラワン合板むき出しの壁。ただ洗面ボウルだけは、夫がずっと憧れていたドイツの老舗メーカーのものを設置したという。
「のびのび過ごしてる」子どもは家が大好きに
子ども部屋があるのは、3階のコの字部分の北側。コの字の大開口から明るい光が届き、吹き抜けを介して2階のリビングともゆるく繋がっている。
子ども部屋に置いてある子ども用のキッチンは、妻が端材でDIYし、おもちゃまでコストダウンする徹底ぶり。さらに子どもたちに金銭感覚を身につけさせるために、階段掃除10円、風呂掃除20円など、お手伝いによってお小遣いが変わるシステムを導入。夫妻共働きなので、子どもたちにも家事を協力してもらいたいとはじめたところ、進んでお手伝いしてくれるようになったとか。
“コストダウン全部のせ”で予算40%オフに成功したコの字ハウス。夫は「間仕切りの少ない家でもありますので、子どもがのびのび過ごしてるっていうところは良かったのかなと思います」と満足する。実際、子どもは家が大好きになったそうで、勉強しやすいところが気に入っているそう。
この家に住んで、勉強もお手伝いも、家で過ごす時間も大好きになった子どもたち。コストダウンした分、家族の笑顔が大幅にアップしたようだ。
(MBS『住人十色』2025年2月22日放送より TVerでも放送後1週間配信中)