舞台は神奈川県横浜市。土地にまつわる三重苦を乗り越え、抜群の眺望を手に入れた家を紹介する。
住人(アルジ)は、会社員の夫妻と子どもの3人家族。1年前に構えた念願の新居は、なぜか外壁から合計15本の梁(はり)が飛び出ている。しかも家が建つのは、3メートルもある「擁壁(ようへき)」の上。加えて敷地は、道路に接する間口が狭く奥に敷地が広がる旗のような形をしている「旗竿地」。しかも旗部分も四角形ではなく、台形をしている「変形地」だ。
「擁壁」「旗竿地」「変形地」 三重苦を乗り越えた家
住宅に囲まれた旗竿地は暗いイメージがあるが、家の中に入ると22帖の明るいリビングダイニングキッチンが広がる。そしてキッチンの向かいにあるのが「空中縁側」。実は目の前が小学校の校庭なので、縁側からは旗竿地とは思えない視線が抜けた抜群の眺望が広がっている。
東京都内の賃貸マンションで暮らしていた住人(アルジ)夫妻は、子宝に恵まれたのを機にマイホームを計画。「縁側がある家」という妻の理想を求めて土地を探したが、予算と折り合いがつかず難航していた。そして最後の候補が、通勤圏内の横浜にあった擁壁のある変形の旗竿地。図面で見るとまさに三重苦だったが、実際に足を運んでみた夫妻は景色に一目惚れ。しかも、擁壁を含む縁石の先まで敷地に含まれていたため、擁壁の斜面上も建築可能範囲だった。そこで敷地ギリギリまで梁をせり出し、宙に浮く形で縁側を作ったのだった。
空中縁側は“万能”なプライベート空間!?
外に飛び出た15本の梁はそれぞれ「挟み梁(はさみばり)」という2本の梁を組み合わせた工法が使われている。1本ではかなり太い梁になってしまうが、2本にすることで細くても力を分散させることができる。その結果、空中縁側も部屋の中と変わらない強度をクリア。今後はまだ空いている梁の上にスペースを拡張していくことも考えているのだとか。
空中縁側は外側の建具を閉めることができるので、人の目を気にせずくつろいだり、プール遊びや散髪、ゴルフのパター練習にもぴったり。中でも妻お気に入りの縁側の使い方が、向かいの小学校の運動会の応援。練習の様子から楽しんでいるとか。
特注の大きなカウンターキッチン 縁側にも持ち運んで使用するソファー
6帖の広々とした対面キッチンは、長さ3.6メートル、奥行き80センチの大きなカウンターを特注。前面はすべて収納スペースで、縁側がある開口部には物を置けないため、文房具や書類などキッチン用品以外も収納している。
4.5帖のリビングは家族のくつろぎの空間。プロジェクターを設置し、真っ白の壁をスクリーンにしている。存在感のあるソファーはフランスのリーン・ロゼ社の「ロゼトーゴ」。世界中にファンがいる人気モデルはウレタン製の軽さも魅力で、縁側にも持ち運んで使っている。
家族の生活スタイルに合わせて部屋が変わる2階
2階には約4.5帖の個室が4つ。スライドの建具で区切っているので、将来的に子どもが家を出て使わなくなった後は主寝室を広くするなど、家族の生活スタイルに合わせて部屋を変えられるようになっている。
三重苦を乗り越え、手に入れた縁側と眺望。実際に生活してみると、妻は「最高です」とひとこと。一方夫も、今後も梁を活用して使い方が広がりそうな家に「住んでからも、まだ“家をこうしたい”みたいに考えられるのはすごい幸せだなと思いますね」と語る。
デメリットだらけの土地で手に入れた唯一無二の空中縁側。この開けた眺望のように、家族の未来も明るく開けていくのだろう。
(MBS『住人十色』2025年4月19日放送より TVerでも放送後1週間配信中)