36人が犠牲になった京都アニメーションの放火殺人事件で、殺人などの罪で起訴された青葉真司被告(45)の初公判が9月5日に始まりました。予測死亡率95%と言われた青葉被告のやけどを治療した上田敬博医師は何を思っているのでしょうか。初公判の前日に心境を聞きました。

 事件から1か月後、入院先の病院で撮影された青葉被告、医師の問いかけに小さくうなずきます。青葉被告に声をかけているのが上田敬博医師です。

 (上田敬博医師)「あと少なくとも4回は手術をします。わかった?頑張れる?」

 広範囲に及ぶやけどの治療などが専門の上田医師。事件の2日後、当時勤めていた病院に全身にやけどを負い瀕死の状態だった青葉被告が搬送されてきました。青葉被告は全身の93%にやけどを負い、斜めにかけていたカバンのストラップに沿うようにわずかに皮膚が残っているだけでした。そのわずかな皮膚を培養して、シート状にした表皮を少しずつ移植していく、綱渡りの治療は約4か月にわたり、被告は一命をとりとめました。

 治療の日々から4年。初公判前日の今年9月4日、上田医師に当時の心境を聞きました。

 (上田敬博医師)「裁判につなげる、司法の場に出すために生かさないといけない、ということばかりを考えていた」

 被告を生かして裁きにかけることが亡くなった人たちや遺族のためになる、その思いで治療を続けたといいます。病院での治療を終えて大阪拘置所に身柄が移った後も、上田医師はたびたび診察で顔を合わせていました。しかし、会話が制限されていたため、接見を申し込んだといいます。

 (上田敬博医師)「治療中、一切会話がまともにできなかったので、だめもとで依頼したんだけど結局だめでした。(Q手紙を渡されたりは?)出しましたけどそのまま返ってきたので読んだかどうかもわからない」

 上田医師は、自分たちが必死に命を救った理由を、青葉被告は理解できているはずだといいます。そして法廷では、まず被害者に謝罪してほしいと願っています。

 (上田敬博医師)「大事なのは青葉被告がなぜやったかということと、非常に多くの何の罪もない方の命が突然奪われていますので、なぜそういう経緯をたどったかということはしっかり究明しないといけないと思います。そこが究明されるようなきっかけがでるような向き合い方を青葉被告にはしてほしいと思っています」