厚生労働省の調査によると、新型コロナウイルス感染拡大の前から1人暮らしの女性の3人に1人が貧困状態にあるという。そんな中、総務省が調査した2020年の統計によると、「非正規労働者の人数」が2019年と比べて男性が26万人減少した一方で女性が50万人減少し、女性が大きな影響を受けているという実態が明らかになった。今回、番組では女性100人にアンケート調査を行って、若い女性の『生活困窮』の実態に迫る。

新型コロナ禍で職を失った 飲食店に勤務していた26歳の女性

 6月2日の大阪・ミナミ。緊急事態宣言下とあって夜の街では多くの店がシャッターを閉めている。しかし深夜になっても街には女性たちの姿があった。取材班は、夜の街を行き交う女性たちにアンケート調査を行って、『不安・悩み・日常の変化など』を尋ねた。

 飲食店で働いていた26歳の女性はコロナ禍で職を失ったと話す。
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 (飲食店で働いていた26歳の女性)「無職なんで…」
 (記者)「コロナが理由で?」
 (飲食店で働いていた26歳の女性)「そうなんですよ。正社員が私と男性もう一人がいて、私の方が勤務歴が長かったんですけど、『女性』って理由で。2人いてどっちを切るって話になった時に私が切られたので『男性じゃなくて私なんだ』って。まあ悔しいですね。ショックではあります」

 女性はいま、新たな仕事を探しているという。

「外出自粛…でも仕事を休めない」19歳の専門学校生

 街の一角で友人と話し込む19歳の専門学校に通う女性がいた。

 (19歳の専門学校生)
 「夜に学校に通っているんですけど。休みが本当になくて…」

 女性は日中にアルバイトをしているという。アンケートでこの女性は、死にたいと感じたことが“ある”と答え、その理由については次のような不安を書いている。
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 【19歳の専門学校生が書いたアンケート調査の回答内容】
 「外出してはいけない中で仕事が変わらずあること。地元(実家)からは帰省のときに白い目でみられること」

 (19歳の専門学校生)
 「(親は)帰ってこないでほしいっていうのが本音で、でも私的には実家で休みたいというのがすごくあったので。ぐちゃぐちゃになった時はありましたね」

女性100人のアンケート調査『葛藤や孤独感』

 今回、アンケート調査に応じてくれた女性は100人。アンケートにはコロナ禍で抱える葛藤や孤独感が綴られていた。
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 【アンケート調査への回答内容(一部抜粋)】
 (25歳・アパレル店員)
 「生活が苦しくなり、収入が減り、以前のような生活が出来なくなってしまった」
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 (23歳・接客業)
 「コロナが明けたとしても、元どおりお客さんが来るとは思えない。収入が0円の時ももちろんあるので、そこがいつも不安です。“もう借金も返済できないし、国もたすけてくれない”」
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 (19歳・フリーター)
 「夢がない」
 (18歳・大学生)
 「大学に行けず、友達に会えない」
 (派遣社員・宅配業)
 「本業を退職することになった」

 アンケートから、若い世代の厳しい現実が見えてきた。

総務省の労働力調査 雇用者数の減少幅『女性は男性の2倍以上』

 総務省が行った「労働力調査」によると、2020年の男女別の雇用者数が3月~4月の1か月間で、男性は35万人減少したのに対して、女性は74万人減少していた。女性の減少幅は男性の2倍以上になっていて、非正規雇用の女性が特に影響を受けていると指摘されている。

匿名の悩み相談チャットに1年間で3万8000件の相談 7割が女性

 匿名で悩み相談ができるチャットを運営するNPO法人「あなたのいばしょ」。2020年3月からの1年間で「あなたのいばしょ」には約3万8000件の相談が寄せられて、その7割が女性だったという。
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 【『あなたのいばしょ』に寄せられた悩み相談の内容(一部抜粋)】
 「コロナの影響で解雇される可能性があり、将来の不安で大変辛いです」
 「主人の給料がコロナの影響で減っています。お金のことばかりで嫌になり、消えてしまいたくなります」
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 (NPO法人「あなたのいばしょ」 大空幸星理事長(22))
 「何もしていないのに涙が出ちゃうという女子学生の方からの相談や、本当に厳しい状況に追い込まれている女性の方からの相談がありますね。頼りたくても頼れないとか、話したくても話せないという“孤独の問題”がコロナ禍で間違いなく顕在化したと思います。結果として、風俗産業や神待ち行為というところに行かざるを得ない人たちが…」

コロナ禍で仕事の収入が0に…「パパ活」を始めた24歳の女性

 今、SNS上では、貧困にあえぐ女性たちの投稿が相次いでいて、いわゆる「パパ活」を始めた女性もいる。

 取材班は今回、その1人である24歳の『アヤノさん(仮名)』に会うことができた。アヤノさんは去年11月ごろから「パパ活」を始めたという。

 (アヤノさん(仮名・24))「お父さんの方がちょっとまあ…って感じで。借金があったのと、片親できょうだいがすごく多くて。学費とかそういう面で、お金がかかってくるという感じですね」
 (記者)「お父さんが借金をしている?」
 (アヤノさん(仮名・24))「そうですね。1000万円くらいは超えています、普通に」
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 アヤノさんは5人きょうだいの長女で、同居する父親の借金を返済するために、元々飲食店やスナックなどで働いていた。

 (アヤノさん(仮名・24))
 「飲食店と夜のお仕事(スナック)をコロナの前はやっていて、両方とも休業みたいになっちゃって。本当に(収入が)ゼロで。ゼロになる前に(パパ活を)始めたって感じですね」
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 パパ活でこれまでに会ったのは20人ほど。一緒に食事をするだけで1万円~5万円ほどを毎回受け取っているという。

 (アヤノさん(仮名・24))
 「一度に大きなお金を稼げる。それがメリットであって。普通にお仕事をしていたら、たぶんカツカツになっているなと。先月はパパ活だけでたぶん50万円くらいはいきました」
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 (記者)「パパ活をしている自分は好きですか?嫌いですか?」

 (アヤノさん(仮名・24))「嫌いです。好きじゃないです全然。今はやめられないです」

 アヤノさんは中卒。“同じ苦労をしてほしくない”という思いから、高校や大学に通う弟や妹の学費を工面しているというのだ。家族を支えるために「パパ活」を始めた女性。

 さらに“アンダーな世界”に踏み込む女性たちもいる。

新型コロナがきっかけで風俗店で働き始めた29歳の女性

 取材班が夜の街の女性ら100人に行ったアンケート調査。とりわけ多かったのが「風俗業」に身を置く女性だった。その内容は切実なものだった。
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 【アンケート調査への回答(一部抜粋)】
 (18歳・派遣型風俗店勤務)
 「昼のバイトを2つかけ持ちしてて、コロナウイルスのせいで休業したりして、大阪に出てきてこのお店で働いています。今まで普通に働いて稼いでいたのが本当に稼げない」
 (22歳・派遣型風俗店勤務)
 「看護学校に行く学費のため」
 (28歳・派遣型風俗店勤務)
 「一般職を過労で退職、金銭的な都合で」
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 アンケートで、コロナがきっかけで風俗業を始めていて「将来の不安、収入が…」などと書いたのが、東京・新宿『歌舞伎町』の風俗店で働く知英さん(仮名・29)。知英さんは有名私立大学を卒業して、英語・インドネシア語・日本語の3か国語を話すトリリンガル。成田空港の国際線ターミナルで働いていたが、新型コロナウイルスの影響で月収が10万円以下に落ち込んだ。知英さんは夢を叶えるために金が必要だという。
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 【知英さん(仮名・29)】
 「頼る人は私もいないですけど、生きていかなきゃいけないし。諦めなければ何とかなるって思うようにしています。いつか海外も渡航ができる環境になると、いま信じているので、そこで自分が行きたい会社があるので、エアラインのお仕事を諦めていないです」

 コロナで顕在化した女性の貧困問題。一体、どうすればこうした事態を乗り越えられるのか。不安をかかえながら街を彷徨う人たちがいる。