史上最悪と言われる黄砂が日本列島に襲来。視界を塞ぐだけではなく、中国大陸から様々な物質を巻き込んでくるともいわれていますが、果たして健康への影響は?アレルギーに詳しい近畿大学病院の佐野博幸教授はアレルギーだけではなく、ぜんそくの悪化や循環器系疾患への影響を指摘します。黄砂に付着する金属物質やニッケル、かびやエンドトキシンをあげ、心筋梗塞や脳梗塞を引き起こす可能性に触れました。さらに黄砂に触れた花粉が爆発する現象も紹介、より細かくなった花粉が気管支炎など引き起こす可能性もあるとのこと。
(2023年4月12日MBSテレビ「よんチャンTV」より)

日本では2000年ごろから黄砂問題化、そのころは「中国が経済発展して大気汚染が問題化」していた時期

---黄砂の健康への影響に詳しい近畿大学病院アレルギーセンターの佐野教授です。黄砂は中央・東アジアの砂漠地域や黄土高原で強風があると、大気中に砂塵が舞い上がります。浮遊した砂塵が偏西風に乗って日本の方に飛来してくるという流れ。ずいぶん遠くから飛んでくるのですが、よく昔のことを思い返すと、子供の頃って黄砂の被害ってあんまりなかったことはないなって思うんですけども。いつから問題視されるようになったのですか?

(佐野博幸教授)ご指摘の通りですね。かなり昔から黄砂はあったのです。黄砂という名前はついてないですけども、大体30年ぐらい前から細々と黄砂の研究はなされているんですけども、実は2000年ぐらいに東京に羽田空港に大量に黄砂が飛んでて、もう視界も悪いし、問題だと。2000年頃っていうのは中国が経済発展して、工場とかいろいろどんどんどんどんできてですね、大気汚染問題っていうのが、覚えておられますかね。政府が東京にこれだけの黄砂が来て、中国はあれだけの大気汚染があって、日本は大丈夫かっていうことで、環境省がすごくお金をつけてくれて研究がすごく進み始めたのが2000年ぐらいです。そういう意味ではかなり強く問題視して研究が始まったのは2000年ぐらいと考えていただいていいと思います。黄砂の量は2000年ぐらいはものすごく多かった。2010年前後になった急に減ったのですよ。少ししぼみかけたのですけど、また増えてきてるんですね。原因は中央アジアの砂漠のところから偏西風に乗ってくるんですけども、実は気象がすごく影響していて雨が少ないと、黄砂が少ないとそれともう一つは偏西風の蛇行の影響を受けて日本がどのぐらい被害を受けるかということが影響すると。ですから、増えても減っても、永遠に減り続けるとかはない。そういう意味ですから、一旦減ったとしてもですね、また増えてくる。今ちょうど増えてきているというようなところ。

2023.4.12kousa toyota.jpg---豊田さん、環境の変化とか気候の変化が影響しているということなんですね。

(豊田真由子氏)おそらくそれと、やっぱり砂漠化が進んでいるので、元となる砂がすごく増えているんだと思うんですよね。放牧とか農地にしたり、伐採したり砂漠化してしまっていると。それをどうするかっていうと発生源を減らすしかないっていうところが我々としては日本国内でできることがモニタリングぐらいしかないっていう。ちょっとモヤモヤするところ。現地で植林をするとか、農業とか制限をするとか、そういうことに支援するとか、研究の手伝いをするとかをやり始めたっていうところ。

---では人体への影響になりますよね。佐野教授によりますと、砂が問題というわけではなくて、砂に付着するカビなどの物質が問題だということ。まずはアレルギー症状。花粉症やアレルギー性鼻炎などの悪化。さらに呼吸器疾患、喘息症状の悪化。さらには循環器疾患では心筋梗塞との関連も報告されているということです。

(佐野博幸教授)砂が悪いわけではなくて、砂が悪いんだったら海岸沿いに住んでいる人みんな病気になる。中央アジアから中国の上空を飛んで、台湾であるとか日本であるとかいろいろ来るわけです。そこで金属物質のマンガンであるとか、僕らが調べたやつでは、ニッケルなどの付着金属物質、それからエンドトキシン。例えば付着している金属に対するアレルギーのある人ではあると、湿疹やじんましんが出てくるっていう人もありえますし、循環器疾患で心筋梗塞で皆さんびっくりされてどういう関係があるのかと思われたと思うんですけど、脳卒中も増えるということはですね。日本、台湾、韓国からも報告されていますので、おそらくそれは砂のうちのかなり微細な粒子が肺に吸い込まれて、肺の末梢から血管に入り込んで、それが血管の中で炎症を起こして血栓を起こして心筋梗塞とか脳卒中になるんじゃないかという類推ですけど、そういうふうに考えられているところです。
健康への影響非常に幅広いですさっきの先生のお話だとその

吸い込まなくても「肌荒れ」、吸い込むと「下気道」に影響か

---吸い込まなくても肌についても肌が荒れるとかそういったことがあるんですか。

(佐野博幸教授)そういったアレルギーのある人であればそういったこともありえる。

---黄砂の量は1991年から30年間の観測平均値をみると、4月は圧倒的に多いです。今月は特に要注意で、他にも注意しなければいけないことは洗車です。タオルでの拭き取りはできるだけ傷がつくのでやめた方がいい。大量の水で洗うことをおすすめします。洗濯もできるだけ部屋干しにしてくださいということです。もう一つ気になること。黄砂と花粉が同時に飛来すると、「花粉爆発」ということが起きるんです。花粉が黄砂と接触しますと、花粉に亀裂が入ります。そこから水分を取り込んで膨張し、この花粉が破裂します。そうすると、より細かくなった花粉を人間が吸い込んでしまい、気管支炎などの症状を引き起こす可能性があるということ。花粉ってこんなふうに破裂するんですか。
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(佐野博幸教授)そうなんです。元々ですね。スギ花粉なんかでもう大体30マイクロぐらいの直径というか、一方黄砂はだいたい4から5マイクロですから、ずいぶんと大きさに違いがあるんですね。大きな花粉というのは、アレルギー性の花粉症の鼻炎であるとか、目のかゆみとかの原因にはなるけど、下気道には影響ないって言われていたんです。ところが黄砂のようなもので亀裂が入って、花粉が破裂して、その中には抗原性があるものがいっぱいあるわけですね。かなり小さいもんですから、肺の末梢まで入ってくると。つまり喘息なんかでも、昔は花粉では悪くならないあ。スギ花粉で悪くならないなんて言われていたんですけども。今はスギ花粉でも、こういった現象で気道にダイレクトに作用しえると。ですから喘息も悪くなり得るというようなことを言われています。破裂して中から出てきているのは花粉の断片ですね。そこには抗原性があるということです。いつも同じ時期ですから、花粉症とね。大体2月3月4月5月ぐらいがピークですから。これに関して花粉症のある人はちゃんと治療しておくっていうことがすごく自分の予防というか。これ今までもう我慢できていたから我慢するっていうと、この黄砂も一緒に来ると我慢できなくなると非常に強い影響が出てくるというふうに言われています。

---治療というのは抗アレルギーの薬を飲むということですか?

(佐野博幸教授)そうです。あるいは点鼻薬とかね。

---今回は対策も伺いました。佐野教授によりますと、マスクは完全ではありませんと。なので、疾患のある人は普段の治療を続けることを推奨します。そして不要不急の外出はできるだけ控えてください。
帰宅すれば手顔を洗う、あとは衣服を払うということも有効。研究では空気清浄機も効果的であるということが報告されています。

(佐野博幸教授)マスク完全でないっても効果ないわけじゃないですから、一定の効果ありますけど、サージカルマスクでもう100%防げるわけでは残念ながらないので、やはり病気のある人は治療しておいてほしい。

---今後は土曜、日曜も西日本に飛来する可能性があるので、まだまだ気をつけていきたいということです。この土日もぜひテレビなどメディアなどで黄砂の情報をしっかりとチェックをしていただいて、対策をとっていただきたいと思います。