ロシアでは、クレムリンがドローン攻撃を受けたり列車が爆破されたりという不穏な動きが続く中、対独戦勝記念パレードでプーチン大統領が演説に立ちました。そこでウクライナ戦線での死者を「西側のクーデターの犠牲者」として黙とうを捧げました。これまでと違って手元の原稿を読み上げる形でしたが、「いつもより早口で、何かを恐れているようだった」と話すのは筑波大学名誉教授の中村逸郎氏。プーチン氏は改めてロシアとウクライナは同じという伝統的価値観について言及する一方で、ウクライナでの戦果はいっさい触れることはなく、中村名誉教授は「すでにプーチン氏の支持率は30%程度でますますプーチン離れが進んでいる」と話します。(2023年5月9日放送 MBSテレビ「よんチャンTV」より)

▼中村逸郎氏:筑波大学名誉教授、専門は現代ロシア政治、プーチン大統領研究の第一人者、ロシア外務省から入国禁止対象に指定される

反プーチン派は「(プーチン大統領の)影武者が来るんじゃないか。演説は口パクになるのでは?」

---中村逸郎教授に聞きます。プーチン大統領の演説でどんな印象を受けられましたか?

(中村逸郎氏)びっくりしました。早口すぎる。普段のおそらく2倍ぐらい早い。すごく早い。だから同時通訳も大変だと思う。それともう一つ気づいたこと。去年に比べて、手元の原稿に目を落とす回数が2倍ぐらい多かった。今回はプーチン大統領が何を喋るかっていうテキストが前もって一切公表されていなかったですよ。本当は公表される。でも今回は全くなくて、しかも早口で。プーチン政権の中で反プーチンの人たちいるんです。その人たちのテレグラムがあって、いろんな情報が集まってくる。それでどうやら非常に危険だという。どうも影武者が来るんじゃないか。そしてテキストを書いたのは本物のプーチンで、あとは口パクじゃないかということで、それが本当かどうかわかりませんけども、とにかく早口で終わりたいという。

---なるほどここのところロシア国内でもいろんな爆発事件などもあってリスクは高まっているということですよね。

(中村逸郎氏)当初、来るって一か国だけだったんですよ。そうなればあまりにもプーチン大統領が国際的に孤立しているってことで、かき集めて旧ソ連諸国から合わせて6カ国ですね。ベラルーシ、

---カザフスタン、アルメニア、キルギス、ウズベキスタン、タジキスタン。これらの首脳が来るのではないかというふうに言われていました。

(中村逸郎氏)もう到着したようなんですね。特に私がびっくりしたのはカザフスタンのトカエフ大統領です。ものすごい反プーチンさんですが、でも来たんですね。おそらくきっと何かアメをぶらさげて。そうしないと、何と言っても国際的に見れば、プーチン大統領のやってる戦争ってのは戦争犯罪人だとICC国際司法裁判所が言っているわけですから、本当はもうこの人たちって来たくない。プーチンからすれば国際的に孤立している姿があらわになる。それで旧ソ連諸国の人たちを集めたっていうことでしょうね。ベラルーシのルカシェンコ大統領の名前がなかなか出てこなかったんですけども、やっぱり来たんですね。

---今回のプーチン大統領の演説のポイントはまず一つ目が「アメリカについてどう言及するか」ということですね?

(中村逸郎氏)アメリカだけじゃなくて、欧米がウクライナを妨害している。悪くしていると。本当はロシアとウクライナって元々一つの家族だよ、この伝統に立ち返りましょうというトーンでプーチン大統領は言ったんです。まさにウクライナは欧米の犠牲者になっている。ウクライナの人はロシアと一緒だなんて全く思っていなくて、全く別の文化だと思っている。あくまでも、プーチン大統領が自分の説で言っているだけの話ですね。

---同時通訳によると「ウクライナの国民の悲劇である」「西側のクーデターの犠牲になったんだ」という趣旨のこともありました。二つ目のポイントは「ウクライナでの戦果どう表現するか」ですが?

プーチン大統領の支持率は30%にまで低下している。やはり動員令が・・・

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(中村逸郎氏)一番知りたかったところなんですが、私の聞いた限り何も出てきてないんですよね。ロシア国民からすれば、戦果もない。いつまで戦争続くんだろうと、国内的に言えば、今回の演説を聞いてむしろ、プーチンに対する不信感っていうものが高まっていくんじゃないか。どんどんのプーチン離れが進むんじゃないかと、そんな今日の演説内容でした。

---数ヶ月前までプーチン大統領の支持率比較的高いなという印象でしたが、今はどうでしょう?

(中村逸郎氏)ロシアの独立系のメディアの調査によれば、支持率は30%ぐらいに下がっている。やはり動員令をかけてますから。プーチン離れを加速化させているということなんですね。