星野リゾートの星野佳路代表をスタジオに招いてアフターコロナの戦略についてあれこれ聞いてみた。まずは大阪。USJに続く大阪万博やIRといった“パワフル集客”をいかに大阪市内の消費につなげるか。さらにアジア依存の現状を変えて、観光の発信力の高い欧米の客を増やすかに注力すべきと話します。(2023年5月10日放送 MBSテレビ「よんチャンTV」より)

◎星野佳路氏:星野リゾート代表 31歳で星野温泉(現・星野リゾート)社長に就任 「星のや」「界」など国内外5ブランド67施設を運営

USJ、万博、IR…パワフルな集客コンテンツがある大阪だからこそ、大阪市内でお金を使ってもらいたい

---星野佳路さんに話を伺います。星野リゾートとUSJがコラボする。今どうして「USJとタグ」なのでしょうか?

(星野佳路代表)
大阪に観光にいらっしゃる方々の大体3割ぐらいがUSJ目的の方で、これすごく強い。「パワフル集客コンテンツ」って言ってるんですけど、意外にUSJだけで帰ってしまってる観光客が多いんです。USJだけ行って、それで終わってしまって帰る。私としてはぜひUSJ目的でらっしゃる方にぜひ大阪市内にもっと時間を使っていただいて、食べていただいて、文化を楽しんでいただいて、大阪市内の観光コンテンツを一緒に体験してもらうことで、連泊も増えますし、市内に落ちるお金の額も広がるし。ここでファンを作れば、またリピートしていただく理由にもなり、それはUSJさんにとってもゆくゆくプラスになるわけですよね。ですから大阪観光の相乗効果を上げていく。消費額を増やす。そして長期的な持続可能性を高めていくには、大阪市内の観光コンテンツをUSJさんが一緒になっていくことが大事。
もう一つ、実はパワフル集客コンテンツはUSJさんの後、大阪の場合は、あと2連発で続いていきます。まず万博、その後にIRが来る。これも同じような構造です。万博だけに行って、万博だけで帰ってしまうとやはり大阪の経済効果としては、今一歩なんですよね。万博を機会に来るんだけれども、どうやったら市内で時間を使ってもらって、そこで消費してもらえるか。そういう取り組みを今から始めて。私達だけじゃなくて、市内の観光事業者がみんな同じようなコラボレーションができると大阪の観光の長期的には非常にプラスになる。

---USJと星野リゾートだけじゃなくて、もう周りのみんなにもプラスになるよっていう考え方ですよね?

(星野佳路代表)
こういう取り組みをしていくことがこれから出てくる。万博とIRも含めてです。大阪の観光のキーの戦略になるんじゃないかなと思ってます。

---コロナも落ち着いてますます海外からもいらっしゃると思いますが、コロナ5類移行、観光地の現状はどうなんでしょうか。京都の今はどうなのか。3たします。大吉アナウンサーです。

(MBS大吉洋平アナ)
現在、八坂神社の目の前に来ています。四条通を歩いてきますと、すれ違う人の半分以上は修学旅行生、または日本や海外からの観光客の皆さんだなという印象を受ける。今日の京都ですね。東山区祇園の四条通の現在は、大きな混雑というのはないんですが、バスが止まると大勢の方々がバスに乗れないというようなシーンも何度かありました。地元の人に話を聞くと、観光客の皆さんが急に増えたので「バスにちょっと乗りにくいよ」「自転車移動に変えてます」という声があったり、錦市場は地元の人が買い物ができないんだという声はありました。ただこれは観光客に対する厳しい目というよりかは、跳ね上がる観光需要を受けいれられていない。対応が追いついていない。構造上の課題が見えてきた。そんな印象を受けます。最近よく耳にする「オーバーツーリズム」観光客が急に増えることによって起きる様々な混乱を言いますけれども、京都の一つの課題と言えるんじゃないでしょうか?スタジオの星野さんは、この辺りどんな印象を持っていますか?

(星野佳路代表)
実際にインバウンドが増えたことによってオーバーツーリズムが起きている場所は限られてるんですよね。東京、京都、大阪ですけど。東京、京都、大阪、北海道、沖縄で全体のインバウンドの65%とっちゃう。TOP10都道府県で80%取っちゃった。ですからもっと分散して、日本全体でインバウンド受け止めるようなことをしていけばオーバーツーリズムっていうのは十分解決できる課題だと思います。

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(MBS大吉洋平アナ)
本当に官民による対策・分散をどう促していくかが大切だと思いますが、そんな中で2021年に八坂神社近くにオープンしたのが、星野リゾートが手がけるホテルです。「OMO5京都祇園」というホテルです。新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けが5類に引き下げられたことを受けまして、ホテルの対応というのも大きく変わっているんですね。のれんをくぐってホテルの中へ参りましょう。のれんもおしゃれですけれども、ちょっと提灯に明かりが灯されていてまるで夜の街を歩いているような風情と、少しばかりの色気が漂うような廊下です。こちらのホテルは全36室のうち24室にはキッチンがついています、長期滞在を好む外国の方や外食ばかりじゃなくて、例えば京都の地元の食材を使ってお料理したいという方々のリクエストにも応えることができる。こちらも特徴かなと。都市を楽しむためのホテルという位置づけだということです。さて、新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けが5類に引き下げられたことを受けて、ホテルで接客を行うスタッフの皆さん、もうマスクを着けていません。アクリル板なども設置されていません。総支配人の唐澤さんに聞きます。マスク完全撤廃についてお客さんの反応いかがですか。

(唐澤武彦総支配人)
皆様、笑顔が見られるとか、表情がわかりやすく、ということで概ね好評いただいております。働く側もみんなとも感情がより伝わりやすくなって、いい形で仕事ができるのかなと思っています。

(MBS大吉洋平アナ)
星野さん、街中を見ていると、マスクをつけるつけないこれは個人の選択が尊重されているなというのを京都歩いていたら感じるんですが、接客する側のマスク完全撤廃、ある種先駆けとも言えると思うんですが、このあたりどんな思いで踏み切ったんでしょう?

(星野佳路代表)
マスクを含めて私達ホテル業っていうのは、身だしなみを大事にしてるんですよね。社員たくさんいますが、ユニフォームをお願いしているし、髪型やアクセサリーにも一定のルールをみんなで持っているわけです。マスクも私は身だしなみの一つだと思っていて、全員でつけるか、外すかの選択になるんですよね。5類になったときに外せないと、その後僕は社員にちゃんと説明できる理由は、起こらないと思っていまして。だから今回みんなですごく考えてきたんですけれども、この2類から5類になったチャンスにちゃんと外そうと、身だしなみを元に戻そうというふうに踏み切ったっていうのが今回の決断の背景にあります。

(星野佳路代表)
こちらのホテル、もう一つ注目いただきたいのが、休憩できるエリアなんですが。奥を見ますと、周辺の地図が描かれています。そこにいろんな木札が貼ってあるんですが、これはさっきのユニバーサル・スタジオ・ジャパンとの取り組みともよく似ているんですが、こちらのですね、OMO5京都祇園のスタッフの皆さんが近くの町を歩いて、これをぜひともおすすめしたいと思ったお土産物屋さんとか、あと飲食店などが紹介されているんですね。ここに紹介されている京菓子とか和菓子を一つ買って、この場所にやってくると、つまり地域経済に貢献してこの場所にやってくると、なんとホテルで無料のあるサービスが受けられるんです。どんなサービスなんでしょう?

(唐澤武彦総支配人)
和菓子買ってきていただきましたら、抹茶の粉をご自身でも引いていただきまして、その粉を使いまして、抹茶をたてて楽しんでいただくサービスをご用意しております。

(MBS大吉洋平アナ)
今後、コロナの終息は何となく見えてきたのかもしれませんが、観光業はどうコロナと付き合っていくのか。星野さんに詳しく聞いていきスタジオにお返しします。

---現場から大吉アナウンサーでした。何かホテルが受身じゃなくて非常に前向きというか積極的というか、能動的な感じがしますね。

(星野佳路代表)
私達ようやく長い期間、コロナ対策もやってきましたが、社員の負担ってすごく高かったんです。5類になるチャンスには、もう元に戻るフェーズに私達入ってどんどん海外からいらっしゃったことも含めて、楽しんでいただきたいと思います。

---これからの話です。アフターコロナの観光業が目指すことはということで星野さんに教えていただきます。こんなデータがあります。2019年コロナ前の訪日外国人旅行者の内訳は多い順で中国・韓国・台湾・香港・アメリカ・タイということですよね。その他、欧州・東南アジアとなっています。星野さんはかねてからアジア依存からの脱却をということを唱えていますよね。

大阪はアジア依存度が高すぎる。もっと欧米の集客が必要。

(星野佳路代表)
今、京都が出てきましたが、京都と大阪っていうのはアジア依存度は全然違うんです。大阪の方が圧倒的にアジア依存度が高すぎるんですね。実は世界の旅行情報っていうのは欧米から出てます。欧米人が行くところが情報発信されて、そこにアジアの人たちのあこがれを持つというマーケティングの構造があるんです。なので欧米の人をある程度の比率で集客することが長期的にはすごく大事になってくる。安くて近いから仕方なくて行くっていう場所じゃなくて、素敵な場所だから行く。行ってみたいから行くっていうふうに大阪を持っていくためには、やはりアジア依存。アジアの方がお金かけるとすぐ集客できてしまうので、成果出しやすいんですけど、地道に欧米をターゲットするってことが長期的には大事になってくると思うんです。

---アメリカ出身のREINAさん、お友達で日本に旅行行くということ自体の受け止めってどんな印象ですか?

(REINAさん)
もちろん憧れてる人は多いんですけど、やっぱりちょっと若干ハードルが高いかなって。やっぱりヨーロッパに行く旅行と日本に行く旅行は情報量も全然違いますし、ちょっとエキゾチックな雰囲気もあるのでなかなか気軽には行けないのかなっていう印象はあるかもしれません。

(星野佳路代表)
日本の各自治体さんも国もそうですが、インバウンドや観光プロモーション予算ありますが、どうしても短期的に成果が出るアジアにお金を使いがちなんですよね。私は短期的に効果がそれほどでなくても、欧米にしっかりと予算をかけてプロモーションしていく。長期的には非常に日本に行ってみたい度を上げていくためには、すごく大事なことだと思う。

---観光立国推進基本計画で、訪日外国人旅行客の消費額の単価を2025年までに20万円にしたいと。2019年の実績15.9万円をさらにアップさせたいという。旅行者の消費額、宿泊する期間に着目することが重要だと。

(星野佳路代表)
基本計画の政府の意図とは少し違うかもしれませんが、実は消費額のことを含め、コロナ禍において世界の有名観光地は結構、観光客がいないわが町って素敵だよねっていうことに気づいた。渋滞がなくなった、オーバーツーリズムがなくなった。込まなくなって快適になって、観光客いないと海も綺麗になったし、山も見えるようになったっていう場所は世界中で話題になってしまう。今、世界の有名観光地の方向は2019年に戻るのではなくて、人数ばっかりをかけるんじゃなくて、人数を追っかけない新しい観光の形になろうとしてるんですね。私は「ステークホルダーツーリズム」って呼んでいるんですけど、地元の住民または観光客も含めてみんなが観光産業からリターンをフェアに得るにはどうしたらいいだろうとかって考え方です。そうすると人数を追わないで経済効果だけをもらうためには、どうしても何人来たかじゃなくて、1人1人がいくら使ってくれたのかっていうことを見ていくことになりますし、日本では一泊観光が多いんですが、それを3泊4泊にすることができる。例えばあの交通と旅行代理店さんとホテルだけしかお金落ちてなかったのに、もっと地元にお金が落ちるようになるんですよね。ですから地元への消費額とか、地元に滞在していただく期間を長くして、地域文化を理解してもらう。そういったところの所、評価に変えてかなきゃいけない。万博も今何人来るのかばっかり。そうじゃなくて万博を機会に市内を楽しんだ人がどのくらいいるのか。万博以外のところで時間を使った人がどのくらいいて、それが大阪の価値をどのぐらい上げたのか。こういったところも評価にぜひ加えていただきたいと私は思っています。

(豊田真由子氏)
コロナ前の復活は多分駄目で、問題をどう解決できるかで、私ヨーロッパで住んでいて、彼らと1、2ヶ月バカンス取るんですよ。普段から。バカンスのために仕事をするって言っていて普段から旅行に行くというふうに日本人もあき方を変えなきゃいけない。それとお金の落とし方ってときに、アジアの方はやっぱりブランド品爆買いとかしていただいても、地域経済って全く潤わないので、本当に星野代表がやってらっしゃるように、もう一歩進んだ日本の自然とか文化とか食事とかを楽しめるような環境を作ってあげたら、もっと世界中から人いらっしゃると思うのですごくいい取り組み。

---そしてもう一つは、ゴールデンウィークやお盆、土日に旅行の需要が集中。ゴールデンウィークもすごかったですけども、星野さんは休み方の改革が必要なんじゃないかと?

大型連休の地域別取得をすれば、旅行関連スタッフの年収が増える

(星野佳路代表)
28兆円という日本の観光消費額の中の22兆円が日本人による国内観光なのです。ゴールデンウィークお盆、土曜日、年末年始に集中しているんでいすね。それが結果的に日本で5番目に大きな産業にも関わらず、非正規雇用が私達は70%なんですよ。今、岸田政権の新しい資本主義、賃金を上げようとしていますけど、賃金を上げるためには休み方改革が観光では必要です。分散して休んでいただくことによって、実はすごく正社員雇用が増え、観光産業に従事するスタッフの年収が増えてくるんですよね。同時にお客様にとっては、分散すると価格が下がり、ゴールデンウィークすごく高かったのは集中するから高くなるんであって、分散することによって、お客様の価格が下がり、長く滞在していただくことにも繋がるんですよ。ぜひ大型連休の地域別取得、これをヨーロッパなんかでやっているんです。日本人の場合、1億2500万人で2500万人ずつが代わる代わるに、違う週にゴールデンウィークを取ってずらして休みを取っていく。そういう改革にこの機会に進むんでいくといいなと私は思っていますね。