ジャニーズ事務所の元所属タレントが、創業者のジャニー喜多川氏からの性被害を訴えた問題で、5月14日、藤島ジュリー景子社長がおわびしました。一方で「故ジャニー喜多川氏に確認できない。二次被害に慎重に配慮」を理由に事実認定しないこととしました。今回の対応について、LGBT問題に詳しく、自ら同性婚を明らかにしている南和行弁護士は「藤島社長が事実を知らなかったからこそ、第三者委員会に判断にゆだねて、社会的信頼回復をはかってほしい」とジャニーズ事務所の今回の対応に疑問を呈しています。(2023年5月15日放送 MBSテレビ「よんチャンTV」より)

南和行弁護士(LGBT 同性婚 離婚 無戸籍問題などの家族に関する事案を扱う企業の不祥事対応などについての解説本の執筆にも参加 自ら同性婚を公表している)

藤島社長は「私たちは事実認定しません」と言っている。非常に無責任なこと。

---弁護士の南和幸さんの解説です。(ジャニーズの)元所属タレントが本当にその勇気を持って告白している非常にショッキングな内容ではありましたよね?

(南和行弁護士)まず性被害というのは男性であっても、被害を公に、自分の顔や名前を出して話すってのも本当に勇気がいることですので、前に出られた2人の方は本当に皆さん、支えてあげてほしいと思います。

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---性被害問題について、ジャニーズ事務所の藤島ジュリー景子社長が被害を訴えられている方々に対して「深く深くお詫び申し上げます」と動画で謝罪をしました。一方でもう亡くなったジャニー喜多川氏による性被害があったかについては、事実認定を避けました。14日夜ジャニーズ事務所公式ホームページに公開されました。一問一答の文章。カウアン・オカモトさんの告発について問題がなかったとは一切思っておりませんとした上で、当事者のジャニー喜多川氏に確認ができない、もう亡くなっていますので。憶測による誹謗中傷等の二次被害についても慎重に配慮しなければならない。これらを理由に事実認定をしないことに理解を求めるという形になりました。ホームページに記載されている内容で言うと、個別の告発内容について事実と認める、認めないと一言で言い切ることは容易ではない。この点についてどうぞご理解いただきたく存じますというふうにしています。ジャニー喜多川氏が2019年に亡くなっていますが、藤島社長が言うように確認できないものなんでしょうか?

(南和行弁護士)きのう公開されたものというのは、ちょっと全然良くないですね。確認できないことはないわけです。もちろんお亡くなりになった方に「この日、このとき、こういうことあったんですか」って聞くことは当然できませんが、被害を訴えられてる方のお話を丁寧に聞くこととか、あと周囲の状況とか、類似のことがあるのかないのかといった状況から、おそらく「どうだったのか」っていう結論づけというのは、事実認定のプロセスというのは組むことができるわけですね。その結果、「ここまでしかわからなかったです」「いやいやこうでした」っていうようなことがあるのかないのかの話であって、これは確認できないと言っているのではなくて「私達は事実認定をしません」と言ってる非常に無責任なことです。こういう言い方をするのはごまかしと捉えてもしょうがないと私は思うのと、「憶測による誹謗中傷等の二次被害」っていうのは、一番困るのは先ほどのお2人のように、ご自身が被害があったと、「私はこの体験は被害だと思う」という方に対する二次被害・誹謗中傷あるいは、他にもたくさんタレントさんに対し、世の中がただの興味本位で騒ぐこと。それの被害っていうのが二次被害だったり、誹謗中傷なんですよ。それは、むしろ、守ってあげるためにも、しっかりジャニーズ事務所との第三者委員会とかで話を聞いて受け止めてあげないといけないのであって、別に認定した結果を世の中の興味本位な、注目に応えるために公表する必要ないわけです。私達の下世話な、一般市民として知りたい知りたいって気持ちはたくさんありますが、むしろそれを止めるためにも、しっかりしたプロセスを事実認定としてやっていきたいっていうべきだったと私は思います。

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--調査をして事実認定するのと、それを公表するのはまた別の話ですよっていうことですよねこの件について以前から週刊誌等で指摘もありましたけども、ジュリー社長自身は知らなかったとしています。ホームページの記載では「知らなかったでは決してすまされない話だと思っておりますが、知りませんでした」ということです。ジャニー氏、そしてメリー氏の2人体制で自分がそこに入っていくことがなかなかできなかった、知ることができなかったという趣旨の発言ですが、どう思われますか?

(南和行弁護士)株式公開されてないような会社だと、老舗の会社だと結構有名なところでも、確かに創業者の人たちだけでワーッと全部決めちゃうので、実質取締役の人は口も出せないし、いろいろ問題あるときに言えないっていうことは現実に結構あるんですが、ただ、藤島社長がご自身が社長になる前、本当にそうだったのか私はわかりません。今回の「私は知らなかった」という部分は、ことこの問題についてご自身の責任についての弁明としてはありうることかもしれませんが、ただ、会社として、ジャニーズ事務所という事業体が社会、あるいはまた、何よりも被害者の皆さんに責任をどうとるかというときにはだからどうということではないですよと思いますし、本当に藤島さん、社長自身が全く知らなかったというのであれば、だからこそ徹底的なはい事実認定とか調査とか、第三者委員会にも全てお預けするのでお願いしますってこともできるんじゃないのだろうか。と僕は思います。

---第三者委員会の設置について、弁護士や外部の専門家、有識者を交えて検討したということなんですが、ヒアリングを望まない人も対象となる可能性が大きい。現役のタレントさんも、ヒアリングを受ける人。それぞれの状況や心理的負荷があるので、相談を受ける外部窓口を月内に設置する予定だということです。ただ、第三者委員会は設置しませんと。社内のコンプライアンス委員会の取り組みを強化徹底して再発防止に取り組むことを明らかにしましたこの第三者委員会先からねちょっとそんなお話も出ていますけども、この第三者委員会なくして真相究明は、南さん果たしてできるのかというのは気になるところですが?

「国際的なイベントとか、政府行事で『ジャニーズ事務所は心配』となりかねない」

(南和行弁護士)真相究明ができるかできないかという以前に、これからこの問題についてジャニーズ事務所が発表することについて世の中がちゃんと信用するかどうかの問題にかかっていると思うのです。結局、なぜ社内がダメかというと、事実認定をしていったり、調査をしていったり、あるいは被害者の方に答えていくプロセスというものについて、経営者の意向に沿った忖度があるのかないのかというところが、信用問題に関わるわけなので、そこは外部に委ねましょうということが今、第三者委員会的には常識なんですね。ここの問題点っていうのは、第三者委員会を作ってこそ、専門の方が受け皿になるわけです。だから、経営者側としては、むしろ第三者委員会の判断に自信を持って預けられるっていうことが社会的にも信頼を回復すること。逆に、いや「絶対うちでしかやりません」っていうことはかえって「そういう対応しかされないんだ」ということで、今後の、例えば国際的な大きなイベントとかあるいは政府が関わるような行事ごとなんかにジャニーズ事務所がこの問題でちょっといろいろ心配だからっていうことにもなりかねないっていうのは藤島さん自身も望んでらっしゃらないんじゃないかと僕は思うんですけれども。

---ジャニーズのファンの有志らでつくる団体も、第三者委員会の設置、そして検証実態調査を訴えているということですが、そのあたりをどういうふうに打ち出せるのか?

(中野雅至・神戸学院大学教授)第三者委員会をきちんと作って社会的に説明すべきだと思います。若者相手すると、やっぱネット上でこの情報はどんどんどんどん上がってきていて、ここまで火がついているわけです。これだけ大きくなった以上は、きちんと説明しないと、ますます火種が大きくなる。納得しないと思うんで、きちんとやるべきだと思います。

---例えば第三者委員会設置しながらも、丁寧に調査するということは皆さんできないもんですかね?

(南和行弁護士)できていますし、大学なんかでも、ハラスメントって起こりがちなところなので、結構多くの大学がハラスメントの相談というのは、大学の経営陣の意思決定と切り離されたところで対応できるようにね工夫しています。第三者委員会を作るのが常識だと思う。ジャニーズのタレントさん皆さん本当に素晴らしいなっていつも思いますし、ファンの皆さんとの結びつきとかも素晴らしいエンターテイメントだと思うので、だからこそちゃんと対応してほしいと思います。

---ジャニーズ事務所のホームページには、被害を訴えておられる方々、精神的に苦しんでおられる方々に対しては、カウンセラーを初め専門家の力もお借りしつつ、誠実に向き合ってまいります。それをやらずして、私達に未来はないと考えておりますというふうにも記述されています。