気象庁は9日、「エルニーニョ現象が発生したとみられる」と発表し、秋にかけてエルニーニョ現象が続く可能性が高い(90%)と予測した。前田智宏気象予報士は、今年は『単なるエルニーニョ』ではなく、西日本豪雨や台風21号で各地で大きな被害が出た2018年とよく似た状況とみて、異常気象が起きる恐れと心構えが必要だと指摘する。

前田智宏予報士:
長期的に見ますと、今年はちょっと厄介な天気の夏になってしまうかもしれないと心配しています。その原因となるのがエルニーニョ現象です。赤道のあたり、太平洋の海面水温の問題なんですね、南米ペルー沖の海面水温が、普段よりも高くなる状況のことを「エルニーニョ現象」と言います。それとシーソーになるかのように西側のインドネシア辺りの海面水温はちょっと低くなるというのが一般的な状況です。

エルニーニョ現象が起きている時は、海の温度なんですけれどもそれが巡り巡って日本の天気にも影響してくることがあるんです。エルニーニョ現象起きている時は西日本は、気温が低く冷夏になりやすいと言われます。

また雨が日本海側で多くなることが多いということが分かっているんです。ただ今年の夏のエルニーニョは「単なるエルニーニョ」ではなさそう。というのは、今年の冬までは「ラニーニャ」という、エルニーニョと全く反対の現象が起きていたんです。

「ラニャーニャ」から急転「エルニーニョ」で、何が起きる?

この、ラニーニャから急に入れ替わりでやってくるエルニーニョ現象っていうところが大きなポイントなんです。ラニーニャ現象っていうのは、エルニーニョと反対で、ペルー沖の海面水温が低くなり、インドネシア辺りで水温が高くなるというものなんですけれども、急激に、エルニーニョに変わってきているっていうことで、日本の天気に影響が出てもおかしくないという状況になっているんです。

過去、こんな風にラニーニャがエルニーニョに急に切り替わった年がありまして、それは2018年のことなんですね。この年どんなことが起きたかといいますと2018年は、大雨や台風に相次いで見舞われた年だったんです。

7月の西日本豪雨は、中国・四国を中心に近畿でも大きな被害が出ました。また、関空連絡橋にタンカーがぶつかった台風21号、それが起きた2018年は、ものすごい風で、木があちこちで倒れ、信号がゆがみ、外を歩くこともちょっとままならない状態でした。

同じ状況だから、これと同じになるとは必ずしも言えないんですけれども、こういった大雨や台風に十分注意が必要な年になるんじゃないかと、ちょっと似てきているということです。

この先の3ヶ月の見通しが気象庁からも出ていまして、どういったことが起こりそうかというと、ラニーニャの影響がまだ若干残っていてインドネシアあたりの海水温が高めなんです、で、海面水温が高いと台風が起こりやすいので、この先もしかしたら台風がちょっといつもより多くなってしまうかもしれない。

あとエルニーニョの影響が出てきますと、太平洋高気圧の張り出しが弱まる傾向があるんです。今年の夏は日本の南の方で少し張り出しが弱くなりそうな見通しなので、高気圧って時計回りに風が吹いていますので、この縁沿いに湿った空気が日本の方に流れ込みやすくなってしまう。

それが梅雨前線を刺激してしまうと、今回のような大雨に襲われてしまうような恐れがあるということなんです。やっぱり備えをきちんとすること、今年はいつもと違う異常天候や、異常気象が起きる恐れがあるという心構えをしていくことが大事かなと思います。
(2023年6月5日放送 MBSテレビ「よんチャンTV」より)