神戸でスーツケースに入った6歳男児の遺体が見つかりました。男児の母親とそのきょうだい計4人が、男児の祖母への傷害容疑などで逮捕されています。男児の死因は打撲による外傷性ショックの疑い、繰り返し暴行を受けていたとみられます。次男の大地容疑者が家に加わった時期から家族に異変が起き始めたということや、大地容疑者が自身の母親への暴行を指示していたという供述も。大地容疑者が事件のキーマンとして浮上。犯罪ジャーナリストの小川泰平氏は、寄せられた情報から「しつけの厳しかった母親」への報復だった可能性を指摘します。(2023年6月26日放送 MBSテレビ「よんチャンTV」より)

◎小川泰平氏(元神奈川県警刑事 30年の勤務経験 第一線で数々の事件を解決)

「“非常にしつけ厳しかった”母親への報復か」 大地容疑者の小学生時代を知る人物は...

――事件を振り返っていきます。穂坂家は今の家に来る前に、垂水区内を複数回、転居していました。2011年には祖母と、双子の朝美・朝華容疑者が神戸市西区の今の家に住み始めました。2017年には長女の沙喜容疑者が同居を始め、その後6月に修ちゃんが誕生。そして昨年末に、次男の大地容疑者が同居を始めます。

――容疑者が4人それぞれ、「言っていることに整合性が取れていない」という話も入っています。犯罪ジャーナリストの小川泰平さん、現在はどんな取り調べが行われていると見られますか。

小川泰平氏:容疑者は4人います。まず逮捕容疑は4人の母親(修ちゃんの祖母)に対する監禁と傷害なんですけれど、それぞれ4人を別々に取り調べしております。その結果、4人の供述内容に食い違いが今、出ているというところなんですね。やはりこの4人のきょうだい、あとは被害者を含めた家族がどういう関係性であったのか、例えば長女の沙喜容疑者と母親との関係や、沙喜容疑者と修ちゃんとの関係、そういったところを1人1人、慎重に取り調べ、捜査しているということが言えると思います。

――新たにわかったこと、容疑者のうち1人が話したということですが、「祖母については、次男・大地容疑者の指示で暴行した」ということです。小川さん、実母へ対する暴行や監禁、これをどう見ますか。

小川泰平氏:これは、私のところに寄せられた情報の一つですが、二十数年前に、以前住んでいたところでの話で、大地容疑者がまだ小学生、ランドセルを背負っているときに、夜の8時とか9時に、公園にいるところを複数回見かけたと。その当時も、何か家庭内でトラブルが多かったというのを知っていたから、それを発見した人が連れて行くのは嫌なので、警察に通報しています。警察官が、今でいう大地容疑者を自宅の方に連れて行った。

ていうことが、一度ではなく何度かあったという話をしていたんですね。その方が言うには、今回監禁の被害にあっていた母親が、実は当時は虐待という言葉はなかったかもわからないんですけれども、非常にしつけが厳しい母親だったといったような話も情報として寄せられています。それの意趣返しというとちょっと違うんですけれど、そういったことも、頭の中にこの大地容疑者としてはあったのではないかな、というふうにも思ったりはします。

――小川さんの取材による情報ですけれども、もしかしたら母に対する何か報復のような意味があったのかもしれないということですね。

中野雅至教授: 閉ざされた家庭の中で起きていることって、行政や今の法律では介入できないですから、社会がこれをどう止めるか、考えても考えても答えが出ないんですけれど。僕らは、この段階の情報では、コメントしようもなく、非常に複雑なことだとしかわからない。ただ、家族の形が明らかに、昔のようにお父さんとお母さんと子どもがいて、そういうような家族像が全く破壊されているのがいくつもあって、それであれば「社会」というよりも行政が介入するしかない。児童関係の法律は何回も改正されていますけれど、そういう事例がもういっぱいあって、自分の頭の中にすとんと落ちるかって言われたら、全く落ちない。

――現状4人の逮捕容疑というのは祖母に対する監禁や傷害というところですが、この後、修ちゃんへの話になっていきます。防犯カメラにはスーツケースが映っていました。祖母によりますと、次男がスーツケースを用意するよう指示した、ということなんです。捜査関係者によると、修ちゃんへの暴行についても、大地容疑者がきょうだいに指示していた可能性があるとしています。

――家族の中における、弱い立場の人がもしかしたら狙われていたのかもしれない。どういう背景や心理状態が考えられるんでしょう。

大地容疑者の家庭内支配…学校のいじめに似たような心理状態

小川泰平氏:これはですね、学校とかのいじめに似たような心理状態。例えば、指示をされる。指示をされて本来やりたくもなければやっちゃいけないこともわかってるんですけれども、それをやらないと、今度はそれが自分に来てしまう可能性がある。というふうに考えてですね。仕方なくやる。ですから、一時的に沙喜容疑者が児童相談所に「自分の子どもを一時保護してくれ」と、いう話をしています。そういったのは自分の子どもを守るためにしていた可能性があります。

児童相談所も今回積極的に動いてくれて、複数回自宅を家庭訪問してるんですね。ですけども結果的には大地容疑者が前面に出て、対応をしてですね、沙喜容疑者と修ちゃんと直接面接をしたいという児童相談所の話を拒否して、実際会わせてないんですね。

――今回、修ちゃんの死因が、多数の打撲による外傷性ショックの疑いということで、一体どういう状態なのか。関西福祉大学の勝田教授に聞きました。「複数の傷や打撲などによって出血や内出血を起こし、血圧が低下して死に至る」ということなんです。警察は、死体遺棄も視野に捜査ということですが、小川さん、今後の捜査のポイントは。

小川泰平氏: やはり1人1人の供述、どのあたりまで知っているのか、あとは4人の関係性、4人のパワーバランス。誰が首謀者で、誰が実行犯で、例えば1人だとしたら、他の3人がどういうふうに実際動いたのか、どういうふうに考えていたのか、といったところですね。やはり昨年の暮れから大地容疑者が同居してきて、それから大きく家庭環境が変わったということは、周りの方の話からも、間違いないのではないかなというふうに私は思っています。