関西空港に向かう電車の中で、乗客と車掌の計3人がナイフで切り付けられた事件がありました。近年は電車内での無差別殺傷事件が相次いでいますが、もし明らかな不審者を見つけたらどう対応するのがいいのか?犯罪ジャーナリストの小川泰平氏は「絶対に相手を刺激しないこと」としたうえ「静かに車両を移動する」などと話します。(2023年7月24日放送 MBSテレビ「よんチャンTV」より)

――犯罪ジャーナリストの小川泰平さんの解説です。大阪府泉佐野市を走行中の列車内で3人が切り付けられました。殺人未遂の疑いで逮捕・送検されたのは、住所・職業不詳の37歳の男です。

小川泰平氏: それほど大きなナイフでないことは間違いない。ただ3本持っているっていうのが、通常では考えられない。10センチのナイフでも持っていいものではないんですけども、それを数本持っていて、ちょっと不自然だなというのと、容疑者は23歳の男性とトラブルになったと言っていますけども、被害者の方は「トラブルなんかはない」ということを言っている様子です。それからすると、何か明確な動機というより、無差別的な犯行ではないかなというようなことが、状況からわかります。

「まだ行動はないが、不審な人物がいる」どうすれば?

――鉄道で、危険を感じたときにどうしたらいいのか。状況別に小川さんに伺いました。一つ目、「まだ具体的な行動はないが、不審な人物がいる場合」は、「相手を刺激しないようにそっと離れるのが重要」だそうです。

小川泰平氏: 間違っても「あなた何やっているんですか」とか、そういった声をかけることは絶対にやらないようにしてもらいたい。できれば後ずさりしながら別の車両に移る。自分が本当にこれおかしいなと思ったら、もう次の駅で、1本別の列車に乗るぐらいのつもりで駅で降りていただきたいというふうに思います。

――被害に遭われた方のコメントですが、男は結構うろちょろしたりして、別の人にちょっかいを出したり、顔を近づけたりしていたということです。

小川泰平氏: 明らかに不審な動きをしているので、目を合わせたりしないよう、おかしいなと思ったら、すぐ別の車両に移ることが大事。

――車両は空間が閉鎖されていますから、どんな人が乗っているのか、ちょっと目を向けることが大切なのかもしれません。

小川泰平氏: じろじろ見る必要はないんですが、近くにどういった人がいるかというのは座りながらとか、立っていても外を見るような雰囲気で一応見る。「どういった動きをしたらいいんですか」ってよく聞かれるんですが、逆に言うと、絶対に自分のスマホで映像を撮らないことです。自分がスマートフォンでその者を撮る、ちょっと胸の方に置いて撮る。そういう行為でも非常に敏感に見ている者がいますから、絶対に避けてください。

「実際に車内で暴れ始めた場合は、逃げることを優先」

――「実際に車内で暴れ始めた場合は、まず逃げることを優先」する。スマホでの動画撮影に夢中にならず、非常通報用ボタンが車内にあるのでそれを押しましょうということですか。

小川泰平氏: 自分がいつも乗っている電車のどこにあるかっていうのを1回確認しておいた方がいいと思います。例えば痴漢が捕まったとか、急病人が出たとか、そういったときも使えますので。逆に慌てて探すのではなく、いつも使っている電車ならここに非常用ボタンがあるんだなというようなところを事前に知っておくのも一つの安心感としていいのかなと思います。

――逃げ場のない鉄道での事件は、東京の小田急線で起きた無差別殺傷事件で被告に懲役19年の判決が出ました。京王線での刺傷事件は男が人気映画の悪役に仮装していたことから、「ジョーカー事件」とも言われています。国土交通省では今年9月にも利用者が多い在来線、新幹線に新しく導入する車両に防犯カメラの設置を義務付ける方針です。

小川泰平氏 : すでに防犯カメラが設置されている列車もあれば、新幹線もあるんです。ただどうしてもプライバシーの問題等があって、鉄道会社も、この防犯カメラを設置してますよというのを、これまであんまり公表とかしてこなかったこともあります。ただ防犯カメラがあるっていうこと自体で、犯罪の抑止力、抑止効果もある。新幹線等も防犯カメラと一見してわかりにくいように設置されていますが、もっと防犯カメラありますよと。わかるようなものでも私はいいのかなと思っています。

――一連の事件後、警察の警備が強化されたというところはどうでしょうか?

小川泰平氏: 新幹線等は鉄道警察隊が「警乗」といって、全てではないんですけれども乗るようしています。JR東日本、西日本、東海も、警備員が東京~名古屋で2回ぐらい、東京~新大阪だと3回か4回ぐらいは列車内を巡回しています。以前に比べると警備の回数というか、人数等は増えているということは言えると思います。