民間軍事会社の創設者・プリゴジン氏の名前が搭乗者名簿に載ったプライベートジェット機が、ロシアで墜落しました。ワグネルに近いとされるSNSのチャンネルは、プリゴジン氏が死亡したとしています。ロシアに詳しい大和大学の佐々木正明教授は今から2か月前、6月26日の放送で「今後、ほとぼりが冷めたあたりに、プリゴジン氏の命が危うくなるかもしれない」と話していました。

――佐々木先生の予想が、今のところ的中した形になっています。

はい、非常に驚いています。私が言った言葉ですけれども、こんなにも早くプリゴジン氏の死亡が伝えられるというのは、今朝起きて驚きました。最新の情報ですが、この機体のすぐそばにプリゴジン氏とみられる遺体があって、すぐそばにプリゴジン氏の携帯電話があったということが伝えられています。そして、今プリゴジン氏の遺体は安置所にあり、今、検死している状況です。この後、おそらくロシア当局が、何らかの発表を行いますのでそれに注目しています。

――ロシアのメディアはどういうふうに伝えてるんですか。

はい。「プリゴジンの乱」のときは、秘密にオブラートにつつむ言い方で、プリゴジンの乱が進行していった具合を発表していたんですが、今回は、あからさまに伝えています。例えば航空当局が、死亡リスト、搭乗者名簿10人だってこともスムーズに発表しましたし、緊急事態省が、火災をおさえていますとか、捜査に着手しましたということも着々と伝えてますので、プリゴジン氏が死亡したとされるこのケースは、クレムリンのお墨付きを受けて、発表しているという状況がうかがえます。

――プリゴジン氏をめぐる流れです。6月23日「プリゴジンの乱」が勃発しました。これに対しプーチン大統領は「反乱を起こした者は、ロシアを裏切った、その責任を負うことになる」と批判したんですね。その翌日24日、ワグネルを率いて、モスクワへと進軍します。ただ、モスクワまで200キロというところで引き返して、乱は収束したわけなんです。ベラルーシのルカシェンコ大統領が仲介したのではという話も出ています。これに対し、プーチン大統領は「正しい判断をしたワグネルに感謝」と発言しています。その後27日プリゴジン氏は、ロシアの同盟関係にある隣国ベラルーシに行き、その後、ロシアと行き来していたとみられているんですね。ただ、今月21日、プリゴジン氏はアフリカにいるとしてビデオメッセージを投稿。そこでは「ロシアを偉大にする」とも発言しました。そして23日、プライベートジェット機が墜落です。

「プーチンが背後にいない案件などロシアではあまりない」

――アメリカのバイデン大統領は、プーチンが背後にいるか、という質問に対し、「プーチンが背後にいない案件などロシアではあまりない。ただ答えはまだわからない」と話しています。ウクライナのポドリャク大統領府長官顧問は、自身のSNSで「プリゴジンは、自分の死刑執行令状に署名したのは明らかだ。これはプーチンからの用心せよ、裏切りは死に等しいというメッセージだろう」ともしています。

はい。バイデン大統領、ポドリャク大統領顧問の言葉はその通りだと思うんですが、この2か月の状況で、このような派手な形でプリゴジン氏を死に至らしめるということは、必ずしもメリットではないと私は考えております。

プリゴジン氏の言葉が、側近の言葉が今ロシアのメディアで今出ているんですけども、プリゴジン氏はこのように言っていたそうです。「プーチンは私のことを全て許してくれた。だから私は怖いものがないと。」今後、プリゴジン氏が残したものが明らかになるだろう。それに注目すべきだという声が出ており、もしプリゴジン氏が暗殺されたのであれば、今プーチン大統領がプリゴジン氏を許したということも踏まえてなんですけども。

アフリカにある利権、もしくは今、前線で兵士に与えている食料。ロシア国内にある宿舎の食料。これはプリゴジンのグループが行っているんですね。プリゴジン氏が死亡になりますと、こうしたサービスに関するデメリットも出てきますので、果たしてプーチン大統領が指示を出して、暗殺せよと言ったのは疑わしい状況にもあります。

――本当にプーチン大統領の指示だったら恐ろしいことだと感じてしまうんですけども、振り返りますと、プーチン大統領の側近だったわけですよね。

プリゴジン氏はですね、ショイグ国防相、ゲラシモフ参謀総長このウクライナの特別軍事作戦の失敗は、国防省の作戦のミスにあるということを言っていた。プーチン氏を批判することはなかったんですね。そして6月24日のときも、思い出していただきたいんですけれども、確かに「反乱を起こした裏切り」ということは言ったんですが、プリゴジン氏を名指しで批判することはなかった。

そしてルカシェンコ大統領との仲でとりあえず手を打つという形で、生かすというようなこともありましたので、ここはやはり特別な関係があるなという見方もできるんです。そしてこのような派手な暗殺の方法というのは、私は「ほとぼりが冷めるあたり」にと言いましたが、まだ2か月の段階でウクライナ特別軍事作戦をやっている段階で、このように暗殺するというのは、やはり国内外に動揺を引き起こします。国防省の中にも、ワグネル派がいますので、これはやはりちょっとデメリットが大きいな、誰がやったのかというところで、ここもミステリーになる。そして今後の捜査の結果が明らかになるんではないかなというふうに思います。

「コンコルドグループの解体もあり得る」

――今後の可能性ですけれども、プリゴジン氏亡き後ワグネルはどうなるのかについて、佐々木先生は「ワグネルを含むコンコルドグループ全体の解体もあり得るのでは」と。コンコルドグループというのは、ワグネル、そして学校給食、不動産、メディアなどいろんな事業をしているということです。

はい。このコンコルドグループはプーチン政権下で非常に大きな企業になりました。
国家からも様々な事業を請け負っていた。さらにこのプライベートジェット機には
プリゴジン氏の側近が乗っていたようだ。つまりコンコルドグループの幹部が一斉に亡くなってしまった。これはどういう意図で、どのような形で亡くなったかは置いといて、おそらくコンコルドグループが解体・消滅に向かうスピードは加速度的に早まると思います。(2023年8月24日放送 MBSテレビ「よんチャンTV」より)