高揚感・解放感・幻覚などを起こすグミを食べて体調不良を訴える人が出ている問題。東京都内の店から押収したグミからは大麻由来の成分に似せた合成化合「HHCH」が検出されていて、厚生労働省はこれを指定薬物として12月2日にも所持・使用・販売を禁止する方針です。その危険性や規制の難しさについて法科学研究センター所長の雨宮正欣さんに聞きました。雨宮さんによりますと、似た構造のものの中にも必要・有用な化合物がある場合があり、規制には多くの議論が必要だといいます。しかしこうしたものを摂取することについては「麻薬以上に危険なものもある」「自ら人体実験に参加する危険性を知っておいてほしい」と注意を呼び掛けています。
(2023年11月20日放送 MBSテレビ「よんチャンTV」より)

◎雨宮正欣:法科学研究センター所長 元埼玉県警科学捜査研究所・乱用薬物科長 鑑定経験は23年間5000件以上

――化学構造で見ていきますと、規制対象になっているのは代表的な大麻の成分THCと呼ばれるもので、この規制に引っかからないものを人工的に作ったのがHHCと呼ばれるものです。化学構造はわずかな違いで、線が1本あるかないかの違いで、こちらも去年規制されました。さらに人工的にできたのがTHCHと呼ばれるもので、こちらも今年の8月に規制されています。これを受けて新たなものが使われています、それが今回問題となっているHHCHと呼ばれるもので、本当にわずかな違いです。

――法科学研究センターの雨宮正欣所長は、「専門的知識と設備があればできるんですが、いち業者が作れるほど簡単ではない」という見解ですが。

(法科学研究センターの雨宮正欣所長)例えば、線が1本あるとかないとか、場所とかそういうのによって、合成する難易度って違うんです。一概に簡単にできるものではないんですけども、科学的な知識があれば一部の構造を変えるということ自体は不可能ではないということです。

イタチごっこ「構造式が全く同じでないものは、違ったものとして扱う」

――危険性はどんどん高くなっていると言えるわけですか。

(法科学研究センターの雨宮正欣所長)そうです。より効くもの、という形で出てくることが多いです。THCってのは大麻に含まれる成分で、これは麻薬になっています。ところがTHCH、HHCは指定薬物で、名前だけ聞くと麻薬の方がなんか怖そうな気がしますが、危険性は後から出た物の方が危険だということ、これは知っておいて欲しいです。似た物質の危険性は未知数です。

――構造をすこし変化させて、規制対象にならないものがどんどん生まれる可能性はあるわけですか。

(法科学研究センターの雨宮正欣所長)そうですね。構造式が全く同じでないものは、違ったものとして扱うので、規制の対象外になってしまう。今までイタチごっこ、が起きていたのです。

『自ら人体実験に参加する』という危険性

――武見厚生労働大臣は、「包括的な指定についても検討を進めたい」と発言しています。雨宮さんは、「包括指定は最終手段で多くの議論が必要だ」ということです。

(法科学研究センターの雨宮正欣所長)単に似た構造のものを全て指定するといっても、実は科学的に言うと非常に難しい話です。実際、他の物質を作るときの中間生成の原料のようなものになったり、有用、必要なものも出てくるんです。ですから、似た構造を指定しても、こういうのがついたものは除外するとか、慎重な議論が必要になってくるんです。

――「規制されてない=安全」ではないということを、我々が認識する必要があるということですね。

(法科学研究センターの雨宮正欣所長)まず、合法ではなくて、ただ単に目が届いていなかっただけで、別に法で認めたわけではない、ということが一つ。それから医薬品と違って、安全性の検査とかをしていないので、極めて危険な場合もある。『自ら人体実験に参加する』という危険性があること、これは知っておいてほしいですね。