認知症アルツハイマー病の新薬「レカネマブ」について、中医協は、患者一人当たり年間298万円とし、公的医療保険の対象とすることを13日に了承しました。厚労省は患者数のピークを2031年度の3万2000人と推計、市場規模は986億円と見込んでいます。期待のかかるレカネマブは、どういった薬なのか、どのような症状なら投与できるのか、専門医が解説しました。何より認知症には『科学的根拠のある予防法』もあるというのです。(2023年7月11日放送 MBSテレビ「よんチャンTV」より)

――認知症で行方不明になった人数は、2012年の9607人だったのが、2022は1万8709人となり10年で倍増(警察庁まとめ)。また都道府県別(2022年)では、最も行方不明者数が多かったのが兵庫県2115人で、2位が大阪府1996人となりました。専門医の花田一志先生(近畿大学病院 もの忘れ診断外来)は、どのように分析していますか。
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(花田一志医師) 特に関西が多いとか、関東が少ないということではなく、一般的には都心が多く、地方でしたらコミュニティがしっかりしていて、届け出なくても見つかるというケースが多いです。このデータは「いなくなった後の届け出」を見ているので、埼玉・神奈川・愛知含め都会の方が多い結果だと思います。

アルツハイマー病は、女性が多いというデータ

――年代別の認知症有病率データでは65~90歳まで多くの方が認知症となり、特に女性が多くなっています。

(花田一志医師) アルツハイマー病は、女性が多いというデータがありますし、寿命が長い分だけ、数が多くなるんだろうなとも思うんですけれども、有症率もちょっと多いです。やはりどこかに行ってしまい、いなくなったというケースは多く、見つかるケースも、ガソリンスタンド、コンビニ、24時間開いてるところが多いかなと思うので、そういうところと連携して、地域で見つけていく体制も必要だと思います。

もの忘れと認知症の違いは?例えば「お昼ご飯を食べて…」

――年齢とともに、もの忘れが増えることは実感としてありますが、それと、認知症は何が違うんでしょうか。

(花田一志医師) そうですね、やったこと自体を忘れるか、内容を忘れるかっていうところが大きい。例えば昼ご飯に何食べましたか?と聞かれて、「何を食べたっけな?」というのはもの忘れ。「食べたことか自体を忘れてしまう」とかいうのは認知症。あとは『時間と場所の感覚が少し悪くなる』という特徴もあって、昨日のことと一昨日のことがごっちゃになるとか、そういうこともあります。
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――そんな中、希望の光となるんでしょうか、エーザイなどが開発したアルツハイマー病の治療薬「レカネマブ」です。7月6日にアメリカのFDAで正式承認されました。

「レカネマブ」どんな薬なのか

――どんな薬なのか、アルツハイマー病の発症メカニズムから見ていきます。80歳で発症するとしても、実は50代ごろから繋がっているというのがポイントで、神経細胞の周辺に「アミロイドβ」という物質が蓄積していく。このアミロイドβが増えると、神経細胞の「タウタンパク」に異常が出て、発症に繋がるということです。新薬「レカネマブ」はアミロイドβを減らし、アルツハイマー病の進行を抑えるというものです。
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(花田一志医師)病気にアミロイドβが大きく関与しているのは間違いありませんから、そこを減らしてどうなるかっていうのを、これまで繰り返し試してきました。今回「レカネマブ」に一定の効果があるということで承認されたという経緯があります。

症状悪化を27%抑えた この数字どうみる?

――偽薬に比べて、症状悪化を27%抑えたというデータもあるんですがこの数字は。

(花田一志医師)正直もうちょっと抑えてほしいな、というのが専門家の間でもあります。でもアミロイドをなくすことによって進行を抑えられるという事実が、やはり大きいと思っています。これまでの薬は、アミロイドβの塊みたいなものを除去できるんですが、小さいのは除去できなかったんですね。今回は、ちいさいのも除去できるとなってまいりましたので、効果が高いんじゃないかとされています。

――では、いつから薬を採れるのか。アミロイドβがたまっていることが条件になりそうだけれども、その判断が大変で、確かめる方法として髄液検査、これは保険適用だけれども体への負担がある。あとPET検査、これは保険適用がなくて、20~30万円するんですね。

値段はどうなる?日米とも年間300万円くらいか?

(花田一志医師)今、保険適用は髄液検査だけになります。背中から針を刺して、中の液を抜いてアミロイドがどれくらい含まれているか計算するんですけれど、聞いての通り体に負担があるというのと、できる医者が限られてくる、やはりテクニックが要りますので難しい。また、PETはお金はかかるし、施設も少ない。
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――薬は2週間に1回の点滴投与ということになります。そして値段です。薬価が高いアメリカでは承認前で年間約350万円、日本でもそれなりの金額になるのではないかということですが・・。

(花田一志医師)まだ発表がないのでいかんとも言いがたいんですが、アメリカで年間350万円で、承認後は少し下がるというふうにされています。大体300万円ぐらいでしょうか、全くわかりませんが、大体日本も横並びになりますので、それぐらいかなというふうに思います。

まずは予防 エビデンスのある予防法がある!

――そういう薬を使う前に認知症の予防です。改めて先生に教えていただきます。『科学的根拠がある予防法』は、やっぱり運動なんですと。

(花田一志医師)水泳・散歩・社交ダンスでリスクが低下するというデータがあります。やはり体を動かすということは、誰かとコミュニケーションをとりながらっていうのが多いと思ったりします。そういうところも含めて運動がいいんだろうな、というふうにされています。

――ただし、こちらもポイントで、『嫌々やらされると、予防効果が半減する』というデータがあるんです。

(花田一志医師)続けられるということを大事にしてもらいたいです。正しくないと続けられませんので、楽しく長く続けられるような趣味とかを持つことが大事だと思います。