自民党・安倍派の政治資金パーティーをめぐるキックバック・裏金疑惑を受けて、安倍派の4人の閣僚らが辞表を提出。岸田総理は新しい閣僚を任命しました。そんな中で安倍派の宮沢博行議員は、収支報告書への不記載は「派閥からの指示」だったと語り、裏金疑惑の発覚後に「かん口令」が敷かれたことも暴露しました。この状況について政治ジャーナリストの武田一顕さんは、自身の取材による情報として「安倍派5人衆が党役職と閣僚を独占して、彼は当選4回ですけれども当選6回以下の議員に不満が溜まっている。その不満を代弁して爆弾発言したという側面があるそうだ」と裏事情を明かしました。(2023年12月14日放送 MBSテレビ「よんチャンTV」より)

◎武田一顕:ジャーナリスト 元TBS記者 元JNN北京特派員 中国情勢に精通 小渕内閣以降の歴代政権を取材 愛称は「国会王子」

(武田氏)新しい人は出戻り人事です。林芳正氏(岸田派)は元外務や防衛大臣を、斎藤健氏(無派閥)も元閣僚で、松本剛明氏(麻生派)は総務大臣をやっていました。坂本哲志氏(森山派)も元閣僚だから、ある程度安定したものを作って、安倍派は一斉に外したということです。

――最大派閥の安倍派を一掃して、政権運営に問題はないんですか。

(武田氏)問題はこれから必ず出てきます。民主主義は派閥政治だから、最大派閥を追放して他の連中だけでやろうとしてもいろんな軋轢が出てきます。ただ安倍派については、やはり自分たちの「身から出た」ということで、すぐには出ないと思います。

宮沢博行議員の発言の背景を探る

―そんな中、いわゆる「暴露発言」なんじゃないか、とされた宮沢博行議員の発言、こちらはどうなんでしょうか。

(武田氏)一つはよく言ってくれたってことです。中身の話を議員が顔出しで言ったのは、彼が初めてだから、私は勇気ある行動だと思います。他方で、この人は非常に面白い人で、2012年に初当選したいわゆる「安倍チルドレン」で、当選してすぐに、「日本を明るくする会」を作ったんですね。どういう会かっていうと、髪型に注目してほしいんだけど、髪の薄い議員ばかりの初当選組で作ったというんです。

そういうバイタリティのある人で、何を言いたいかと言うと、いろいろ取材すると安倍派の中に、彼は当選4回ですけれど、当選6回以下の議員にすごく不満がたまってんですよ。いわゆる「安倍派5人衆」って言われてる人たちが、自分たちで党の役職と、閣僚を独占してて、それ以下の人に回ってこない、ってすごい不満がたまってて、宮沢さんはある意味そういう人たちの不満を代弁して、「爆弾発言」をしたっていう側面はあるそうです。

清和会は「一致団結、箱弁当」ではないものの…

――その宮沢議員に対して安倍派の他の人たちは、よく言ってくれた、となるのか、この人だけ裏切り者扱いして終わってしまうのか。

(武田氏)これは難しいです。派閥って非常に強固な、体育会的な組織だから、こういうことを言った人を外すという論理が働く。でも清和政策研究会は、そういう点でいくと、ちょっと甘くて、昔の経世会とか、田中派みたいな「一致団結、箱弁当」な組織じゃないから、もしかすると(宮沢議員のような)人が出るかもしれない。

(武田氏)この先、安倍派の中の不満がどういうふうに出てくるかです。今は「1回休みだからしょうがない」っていう聞き分けのいい人もいますが、派閥は体育会で戦闘集団という側面がありますから、「岸田許すまじ」っていうのが必ず出てくるわけです。それが、どういう形で出るかによって岸田さんの命運が決まると。最大派閥ですから一番議員の数を持ってる派閥が強いってことになります。

――でも、先ほどのように、「安倍派の幹部許すまじ」っていう人もいるのだとすると、例えば派閥の分裂とかは。

(武田氏)今我々が見てるのは、20年や30年に一度の政局、って言う政治のドラマを見ています。リクルート事件とか、自民党が分裂した1993年とか、それ以来の話。最大派閥にこれだけ激震が走るっていう状態を見てるわけだから、今後どうなるかっていうのが、わからない。岸田総理自身もわからないし、みんなわからないと思います。