自民党・安倍派を揺るがすキックバック・裏金疑惑で捜査のメスはどこまで入るのでしょうか。かつて「疑惑の代名詞」とも言われ、東京地検特捜部から捜査を受けた鈴木宗男議員に話を聞きました。鈴木議員は、2002年に政治資金規正法違反など4つの罪で東京地検特捜部に逮捕・起訴され、懲役2年の実刑が確定して収監されましたが、2019年の参院選で国政復帰を果たしました。古巣・自民党の今回の疑惑に鈴木議員は「政治資金は税金のかからないお金で、パーティー資金はある種の不労所得ですから、情報開示と透明性が必要。それなのに『答弁は差し控えさせていただきます』なんていうのはもってのほか。政治家なにやってんだと国民の反発が強くなる」と話しています。また今回、東京地検特捜部で捜査をしていた経験のある元検事で弁護士の郷原信郎さんにも話を聞いています。
(2023年12月18日放送 MBSテレビ「よんチャンTV」より)

◎鈴木宗男:参議院議員 元自民党小渕派(現茂木派) 2019年の参院選で9年ぶりに国政に復帰 過去に東京地検特捜部の捜査を受ける

◎郷原信郎:弁護士 東京地検特捜部の元検事で捜査を経験 政治資金規正法違反事件を数多く手がけてきた

パーティ収入1億円超を計上

――鈴木宗男参院議員は、政治資金パーティーを東京と北海道で開催して、去年は1億円を超える収入を計上しています。どうやってこれほど売り上げることができるんですか。

(鈴木宗男氏)昔からの人間関係です。中川一郎先生の秘書時代から積み上げた、人との出会いを大事にしてきましたんで、地元北海道はもちろん、全国からご協力をいただいています。私の場合、逮捕されて、収監まで経験してますから、離れた後援者もいるんですけれど、40年前から私を応援している人は、今でも鈴木宗男です。

――政治はお金がかかる、実際何にお金がかかるんですか。

(鈴木氏)活動費です。人より動くとすれば、飛行機代だけでも大変な金額です。私の他に秘書も動くわけです。それと事務所を私なんかは7か所構えてますから、人件費が半分以上かかります。

――不記載問題について鈴木さんはどのよう見ていますか。

(鈴木宗男氏)一番悪いのは、議員個人です。国会答弁でも閣僚が、「答弁は差し控えていたさせていただきます」なんていうのは、もってのほかです。政治資金は、税金のかからんお金です。例えばパーティー資金なんてのは、ある種不労所得なんですから、一番大事なのは、誰からいくらいただきました。使い道はこうですという、情報開示と透明性です。それが最初に、「答弁は、差し控えさせていただきます」なんて言うもんですから「政治家は何やってんだ」という国民の反発が強かったと思います。

「捜査中」答えてはいけないんですか?

――元東京地検特捜部の郷原信郎さん、「捜査中なのでお答えできません」みたいな答弁。あれは捜査中だと答えてはいけないんですか。

(郷原氏)被疑者という立場であれば、『黙秘権』がありますから、言いたくないということであれば、黙秘権だとはっきり言えばいいわけです。私は「疑われてますから」と。そうではなく、何か捜査に影響があるから、っていうようなことと一緒にして、何となく言わなくていいような形で収めていること自体は、あまり正しい対応とは思えないと私は思います。

――鈴木宗男さんは、自民党時代に平成研究会(現在の茂木派)に所属されていましたが、当時から「ノルマやキックバック」はあったんでしょうか?

(鈴木氏)組織を運営する以上は経費がかかりますから、派閥も当初は幹部がそれぞれ、資金を拠出して運営してきました。ただ、政治資金規正法が改正されて企業献金でも政党支部には50万円とか上限が決まってくると、幅広く政治活動する場合、資金が足りなくなって、パーティーという手法が用いられたんですね。

――鈴木さんは派閥からパーティー券収入のキックバックを受けていた経験はありますか。

(鈴木氏)派閥からは、何枚という割り当てが来ます。その割り当ての何倍もの額を私は売り上げています。ただ私は、1円もそういった還流資金は、いただいておりません。

――それは全部派閥に入れていたってことですか。

(鈴木氏)そうです。当時の野中広務先生や、青木幹雄先生は、普段から政策集団に協力をしている政治家と、何もしない政治家、そういった政治家に対する評価がしっかりしておりましたから、私なんかは、人よりも汗をかくのは当然のことだと思って、活動してきました。

「裏金」だけに、法律的には厄介な状況

――元東京地検特捜部の郷原信郎さん、自民党安倍派の宮沢前防衛副大臣なんかは「派閥の指示があった」とも話していますけども、その辺りをどうご覧になってますか。

(郷原信郎氏)派閥から指示があったということは、要は、「これは裏金だよ」と言って渡されたということ、表に出さないお金として、議員個人の判断で表に出せなかったのではなく、派閥全体で裏金として渡してるんだということがはっきりしているということだと思うんです。

それは派閥のやり方として、国民の目からすると許しがたいことだと思うんですが、その裏金は『どこで処理すべきなのか』ということをほとんど認識しないっていう、法律的には厄介な状況になってしまって、逆に処罰しにくさに繋がってしまうという一つのパラドックスになってしまいます。

国会議員を立件するのは相当ハードルが高いと思います。その割には、あまりに捜査の前段階で大きな騒ぎになりすぎている。特に議員個人は、一体どこの政党支部、政治団体、資金管理団体で処理することが前提だったかっていえば、「裏金ですから、何にも考えてないはず」です。ということは、どこで記載すべきだったかってことが特定できないで、結局、政治資金規正法違反が立件できないっていう可能性も十分あるわけです。

検察の抱えるダンボールには、「例えばノート1冊」

――鈴木さんは、過去に特捜部の捜査を受けました、どういう捜査だったんでしょう。ダンボールに入れて持っていかれるような状況でしたか。

(鈴木氏)東京地検特捜部の担当副部長は、極めて紳士的に対応してくれました。ダンボールはたくさん抱えていきますね、あのダンボールには、例えばノート1冊だとか、紙切れ1枚だとか、のこともあるんです。これもパフォーマンスで、私は良いことじゃないと思っています。あのダンボールに全部書類を入れてるとすれば、1人じゃ持てませんよ。これもですね、私は検察のやり方で、「はい、ガサ入れしました、ダンボール何十箱です」、なんて持ってくるけど、全く意味のない話です。

国民の怒り、利用している面

――郷原さんにお聞きしたい、戦後政治で一貫して立件されたことがない清和会にメスが入ったのは、どういうことだとお考えですか。

(郷原信郎氏)これまで安倍元総理と、その派閥が強大な政治権力を持っていた。それに対する、いろんな反発が生じていたものが、ここにきて裏金疑惑っていう言葉で、国民の怒りが全て安倍派っていう存在に向かっていったことを、検察が利用している面もあると思うんです。

――逮捕者が全く出ないこともありえますか。

(郷原氏)可能性としてはあると思います。基本的に収支報告書の記載義務は会計責任者ですから、国会議員の責任を取るためには相当、意思決定に深く関わったということが立証できないといけない。ハードルは低くない。その割にはちょっと期待が高まりすぎてるなという感じです。