12月19日、東京地検特捜部が強制捜査に入った自民党・二階派をまとめる二階俊博元幹事長。当選13回、現職の国会議員では最高齢の84歳と、まさに政界の重鎮。なぜこれほどまでに支持されているのか?国会議員時代、二階派に所属していた佐藤ゆかりさんが、二階氏の人柄や、求心力について語りました。自民全体の裏金疑惑について、使い道として考えられるのは?との質問に対して佐藤さんは「例えば自民党総裁選ではお金が動く。私自身、ある特定の候補者から封筒を差し出されたことがあります」と明かしました。これについて政治ジャーナリストの武田一顕さんは「総裁選は党の中の選挙だから公職選挙法にかからない」と金が動きやすい背景があると話します。(2023年12月20日放送 MBSテレビ「よんチャンTV」より)

◎佐藤ゆかり:前衆院議員 衆院議員3期、参院議員を1期つとめる 関西学院大学フェロー 民間シンクタンク代表取締役
◎武田一顕:ジャーナリスト 元TBS記者 元JNN北京特派員 中国情勢に精通 小渕内閣以降の歴代政権を取材 愛称は「国会王子」

二階派トップ、二階俊博元幹事長の人物像

――二階派のトップ、二階俊博元幹事長とは、どのような方でしょうか。

(佐藤ゆかり氏)二階さんは、中国などに大軍団を連れて視察に行くのが【二階さんスタイル】と言われてるんですね。200人くらいの中小企業の社長らを連れて、中国やロシアを視察して、要人に会わせたりする。二階さんは「徹底的にやるときはやりきる」そういう強さもあると思うんです。

(政治ジャーナリスト 武田一顕氏)二階俊博さんは、1983年初当選で、良くも悪くも田中角栄時代の人です。人情味があって、でも一方で利益誘導。高速道路とか、和歌山が日本で一番パンダが多いとか、中国と折衝して、それはいいことかもしれないけれど、そういうのを持ってくる。また幹事長時代の5年間で、今問題になっている政策活動費が、二階さんのところに約50億円行っているとされていて、そういう点でやっぱり一定の批判があるのは間違いないです。

――二階派からは、「ノルマが大変」と言って桜田義孝元大臣が離脱。小泉龍司法務大臣も抜けて、志帥会は38人となっています。佐藤ゆかりさんは無派閥からスタートされていますが、何がきっかけで二階派に入ったんですか。

(佐藤氏)一時期、落選して民主党政権になり、そのとき自民党が下野をして、参議院議員もやっていました。実はそのとき小さな派閥に入っていたんですね。でもやはり予算委員会での質問とか、NHK中継が入るとか、花形議員としての出番がある、こういったときは「派閥の力学」で、大きな派閥から登板する議員が出てくるんですよね。力学で言うと、やはり一定の派閥に入らないとなかなか機会をもらえない、というのが国会議員の現状です。

ノルマ未達成は?豊田真由子氏「そんな前提はない。自分で埋める、が義務」

――ノルマは大変なんですか。

(佐藤氏)私どもはそれほどノルマは大きなものではないですが、大臣経験者になりますと、ノルマが大きくなっていく、また期数とともに大きくなります。ただ我々でもノルマをこなすのは大変で、二階派のパーティーだけではなく、都道府県連のパーティーもあれば、自分たちのパーティーもあります。年間5、6回とパーティーをやらなければいけない。

――佐藤さんは「ノルマ達成組」ですか?
どちらかというと、達成していました。

――達成できないとどうなっちゃうのでしょう。

(元二階派 佐藤ゆかり氏)各議員の事務所によって違うでしょうけれども、達成しない分は自腹で差額を出すとか。

(元衆議院議員で元安倍派 豊田真由子氏)達成しないっていう前提がないんですよ。達成しなかったら、それは自分で埋めて達成させることが義務だから。
スクショ)2023_12_22 18_29_03.jpg
――それはちょっとおかしいと思っちゃいますが?

(佐藤氏)やはり派閥の中で運命共同体として、トレーニングをいただきながら、教えていただきながら、役職・ポストにつけていただく、そういう流れの中で皆さん協力し合うという意識、義務感ですかね。秘書が血眼になって、お願いして売って歩く、靴底を減らして売り歩くっていうのが現状ですね。

(政治ジャーナリスト武田一顕氏)二階派ってすごく温かい派閥だって私は聞くんです、ある候補者が危ないとなると、10人も15人も、国会議員が選挙区に入って応援するっていうようなところもある反面、ノルマはきつい、っていう話もある。さっき豊田さんが言ったように、「ノルマがどうしても達成できませんでした」とはとても言えない雰囲気ってことでしょうか。

(佐藤ゆかり氏)そうですね、ノルマは達成して当然。所属議員であれば当然、ということだと思います。ただ「大軍団で行く」っていうのが二階スタイルなので、私も地元では、二階さんが5~6人引き連れて応援に来てくださったことありますし、そんなにトップダウンでもなく、みんなの意見を聞くっていう聞き上手の方でもあります。

――ノルマ達成の話を聞いていると、何かベクトルが違う方向に向かってやしないか。

(佐藤ゆかり氏)私も国会議員として、現職16年、自民党の中でかれこれ20年させていただいてまいりましたけど、やはり思うのは、政党交付金が少なすぎること。あまりにもパーティーに頼りすぎてるってことですね。我々も好きで積極的にパーティーをしようとは思っていません。政策に集中したいんです。ところがお金が足りないのでやらざるを得ないっていうジレンマ、これは多くの皆さんに理解していただきたいと思います。

「資金力ある方が有利、人海戦術」見直さないのか?

――お金が足りないといいますが、政党交付金もありますし、お金の使い方を見直すような動きはないんですか。

(佐藤ゆかり氏)収入が足りないということであれば、つまるところ支出を抑えるということをすることで、収入への懸念をなくしていく、ところが支出の方は、公職選挙法がいま「ザル法」で、ぜひ改正しなければいけないと思いますけども、例えば平時、秘書は何人雇っても青天井なんです。ですから資金力がある議員、パーティーやって資金集めができたら、何人でも雇って地元活動を人海戦術で有利に展開できる。そうすると青天井でキリがないですよね。総人件費に上限を設けるとか、支出を抑えることによって収入を抑えていくことが大事だと思います。

(豊田真由子氏)「何に使ってるの?」っていうと、イメージは中小企業の経営をしている感じです。事務所構えて人を雇って、公設秘書は3人までですが、3人ではとても回せないので、国会と地元両方の事務所でプラス5人雇ったら、数千万円かかりますよね。本当に最小限ではじめても、大阪大学の先生の統計だと、4600万円ぐらいかかる。で、入りは4000万円ぐらいなので、そもそも平均的に国会議員の平均は赤字。世襲とか大金持ちの人は、元々持っている資金も、集まる資金も大きいので、そうすると苦労する議員との格差がどんどん広がるっていう不公正が、やっぱり政治を歪めている。

派閥事務所は「毎週木曜、みんなでお弁当」の例会

――続いて派閥の事務所というものについてお聞きしたいです普段です。議員らは派閥事務所で何をしているんでしょうか?

(佐藤ゆかり氏)毎週木曜日の昼0時から、派閥の例会というのを各派閥でやっています。そこで一緒にお弁当を食べて、元会長を務める最高顧問という重鎮の議員さんが訓示を述べて、それをみんなで聞いて、国会の情勢に対する対応のあり方とかを若手議員も学んでいく場です。もう一つ大事なのは、幹部がそろいますから、日頃は忙しく散り散りばらばらの幹部が一堂に会するので、例会が終わった後に、ちょこちょこっと走っていって相談事をしたり、調整したり、そういう場としても欠かせない機会です。

――特捜部の任意の事情聴取に対して、二階派の元会計責任者は「パーティー収入の一部について、収支報告書に記載すべきものだとわかっていた」と、不記載を認めていることがわかりました。佐藤さん、二階派の会計責任者とは、どんな人なんでしょうか。

(佐藤氏)会計責任者は、事務局長を長く務められた方で、当然ながら志帥会を支えてこられた大変責任感のある、しかも温厚な人柄のご年配の方です。ですから、本当にこういうことが起きているというのは、自身がいた派閥でも非常に驚きを持って見ているという状況です。
スクショ)2023_12_22 18_26_36.jpgスクショ)2023_12_22 18_29_20.jpg
――二階さん自身はわかっているんでしょうか。

(佐藤氏)そこは今回の捜査のポイントだと思うんです。会計責任者が一義的には問題の責任者でありますけれども、そこに派閥の幹部とか、トップが共謀をしていたのかどうか、立証するのはなかなか容易ではないと思いますけれど、ここがポイントになってくると思います。

――肌感覚として、二階さんはお金の流れをわかってますでしょうか。

(佐藤氏)二階さんはご高齢ですし、ある意味ほとんど、派閥の「閥務」ってのはタッチされていないかったですね、正直なところ。随所、随所で言葉を発するというリーダーシップの発揮の仕方で、どこまで細かいところをご覧になっていたのかはちょっとわからないです。

お金が大きく動くときは、「例えば、自民党総裁選挙」

――いま問題になっている裏金疑惑について佐藤さんはご存知でしたか?

(佐藤氏)私は、二階派のみならず、安倍派についても、どの派閥についても、こんなことが起きているということは、全く知りませんでした。

――不記載の金額は年間で億単位に上ると見られていますが、そういったお金は、佐藤さんは何に使われた可能性があるとお考えですか。

(佐藤氏)裏金っていうと、非常に悪さをするお金っていう響きがありますので、「不記載のお金」ですお金が大きく動くときは、例えば、自民党総裁選挙を行うときはお金が動きますね。例えば、特定の候補者を応援してくれ、って議員を回って、お金が飛び交うっていうのは、あると思います。私自身も、ある特定の候補者から封筒を差し出されたことがありますけれど、ただ私はそのとき、他の候補者を応援していたので、「すいません受け取れません」って受け取らずに戻しました。

 他の候補者は、渡すタイプの候補者ではなかったですけど、そういった形で受け渡しが起きる可能性はあります。そういうのは、収支報告書に載せない人もいるでしょうし、載せる人もいるでしょうし、わからないです。

「総裁選は公職選挙法にかからない」

(武田氏)総裁選は公職選挙法にかからないわけですね、という中での選挙だから、昔は、田中角栄氏の時代とかは、金が億単位で飛んでた、って言われるけど、今でもそういうのは、封筒の範囲内でしょうけれど、やっている可能性はあるということですね。

(佐藤氏)総裁選のときは可能性ありますし、あと議員の応援に入るときに、陣中見舞いとか、見舞金とか、応援に入るときに持ってくるとして、受け手は政党支部なりで、収入として記載しなければいけませんけれども、その出所が、どういったところから出てるのか、っていうのはあると思います。