立憲民主党の泉健太代表が12月21日のMBS「よんチャンTV」に出演。自民党派閥の裏金疑惑について、泉代表は「まずは実態解明。自民党は法を破った側で、法改正を自民党から持ち出すのは盗人猛々しい」と批判。一方で政権交代の実現について問われると「政権を取るには副大臣・政務官・大臣で80人くらい必要で議席が少なすぎるのが根本的な問題」とした上で、「でも次の総選挙で野党が力を合わせればボリュームは作れる。ミッション型の内閣であれば多くの野党に賛同していただけると思う」と野党共闘への意欲を語りました。(2023年12月21日放送 MBSテレビ「よんチャンTV」より)

◎泉健太:立憲民主党代表 北海道出身 立命館大学法学部卒 29歳で初当選 衆議院京都3区選出で当選8回 2021年から立憲民主党代表を務める

――裏金疑惑、これまで自民党関係者や、元検事を中心に話を聞いてきましたが、今回は立憲民主党の泉健太代表に、野党の立場から聞いていきます。

(泉健太氏)根本的には、やっぱり違法だということです。東京地検が捜査に入ったように、適法であれば捜査に入らない。私がよく言うのは「スポーツで言えばドーピングをしてるのと一緒だ」と。ドーピングしている選手と戦っていたら勝負にならないわけで、この場合競技会から追放ですから。額が多い少ないの問題ではなく、裏金を作る行為そのものが許されていないので、法律改正の話に行きがちなんですけれども、いやいやまずは実態を解明しなきゃいけない、ということです。あと自民党さんは破った側ですから、法律を改正しようという話を自民党の側から持ち出してくるのは、「盗人猛々しい」ということになるんじゃないか、そんな思いを持っています。

「まず派閥というものが、ほとんど立憲民主党にはない」

――パーティー券のノルマやキックバックは、立憲民主党にはあるんでしょうか。

(泉健太氏)まず派閥というものが、ほとんど立憲民主党にはないです。パーティーをやるケースはあるんですが、一番大きいのは不記載かどうか、収支報告書に載せているかどうかです。例えばノルマ以上にチケットを売った場合に、その人にインセンティブとしてお金を戻すことはあって、そのものは問題ないんですけども、それが記載されてるかどうか、政治資金収支報告書は、記載することによって国民の皆さんに、どんな政治活動をして、誰からお金をもらっているのか明らかにしましょうというものなので、そこを隠されてしまうと活動もわからない、もしかしたら賄賂になっているかもしれない、ということが見えないので、やはり立憲民主党の場合は、記載をちゃんとしています。

――裏金っていうのはなんですか、やっぱり政治家は金が欲しいものですか。

(泉健太氏)いや我々にはそんな文化ないんです。ただ、見聞きしたり、感じることで言うと、自民党の議員で既に辞職して、裏金を個人的に集めてやってた人の場合は、「銀座で豪遊してた」という話ですよね。ですから我々に比べると飲食費、遊興費、様々な金の使い方は、文化が全然違う感じは受けます。

 何に使ったかわかりません。蓄財なのか、自治体議員に配っているのか、飲み食いに使っているのか、我々からすると遠過ぎてわからないです。広島の自民党の事件で、河井夫妻の選挙違反ということで、党本部から1億5000万円が広島に流れていたといいますが、じゃあ立憲民主党で1億円を流せるかって言ったらそんな訳もない。その巨額なお金が地方にばらまかれるっていうのは、誰がいつどう集めたものなんだと、その解明をしている過程で、こういうことが次々わかってきているっていうところがありますね。

――自民党の元議員に聞くと、「とにかく政治はお金がかかる。だからパーティーで収入を得ないとやっていけない」という話ですが、野党も同じでしょうか。

(泉健太氏)そうですね。お金がかかるっていうのは、私設秘書を雇う、事務所をいくつか設ける、その維持費にお金がかかるので、個人でパーティーを開いて、それを全部記載して、ちゃんと政治資金として使う、こういうことは野党でもあります。

「政治とカネ」どうやったら変わっていけるのか

――お金のかからない政治、っていうのは難しいんでしょうか。

(泉健太氏)僕はそう思わないです。京都3区で活動していく中でも、マイク1本で訴えることには、基本お金はかかりませんし、お金をかけて活動するか、かけず活動できるのかっていうところで、作っていく政治文化の違いかなと思うんです。自治体議員の数は、確かに自民党さんはとても多くて、そこが選挙のときにどういう形でやってくれるのかというのは、自民党の文化があると思うんですけども、お金をかけなくてもできる時代に僕はなっていると思います。むしろ政治家はそうすべきだと思います。

――国民は今回の事態に対して憤りを覚えているわけですが、どうやったら変えられるんですか。政治と金の話はどうやって変えていくとお考えですか。

(泉健太氏)例えば自民党さん、経団連から年間24億円もらっていたりするわけですよね。他の政党はそんなにもらってるものはないですから、もう資金力で格段の差がある。公平公正な環境で戦ってるのかということも含めて、シンプルに言えば、企業・団体からの献金は廃止。それ以外も含めてもらったお金は全部記載。もし違法なことをしてしまった場合に、責任取らされるのは会計責任者なんですよ。議員本人じゃないっていうところがちょっと問題で、やっぱり問題を起こした場合は、議員本人がアウトになるっていうことを基本にしないと、議員の側の意識も改まらないと思います。

『裏金確定 即、退場』ということで、確かに、ケアレスミスっていうのは絶対ないわけじゃないんです。でもこれが何年も続いていたら、それは裏金でしょう。100万円であろうが1000万円であろうが、即退場というシンプルなルールを作る。これは自民党から今後も出てこないんじゃないかと思うので、野党の側からは明確にそういうことを作って、これ以上裏金が生まれないような政界にしなきゃいけないと思ってます。

――それは、立憲民主党からできるんですか。

(泉健太氏)そうですね。我々はやれますし、やっても困りません。法律を作ったらその範囲で仕事をするのが、当たり前だと思ってますから。政治資金規正法を変える話が自民党から出てますけど、今回は裏金にされちゃってるんで、例えば公開する基準を20万円から仮に5万円にしても、(記載せず)裏金にされたらどうしようもないわけです。だから、法律論に切り替えていくってのはちょっとずるいところもあるんじゃないか。より厳罰化にして、政治家にそういうことをさせないという意味で、即退場。こういうことはやっていくべきじゃないか。

政権交代はやる気はあるんですか

(ジャーナリスト 立岩陽一郎氏)政治資金規正法が「ザル法だ」ってよく言うじゃないですか。そうではないです。ザルにしてるんですよ、手元に安倍派の収支報告書があります、3年分です。なんで3年分なのか、3年しか保管義務がないんです。規制法の改正は、いくつか論点あるんだけどまずデジタル化、3年なんていう期限は設ける必要はないんです。

 いま何をやってるか。3年経ったら、総務省と全国の都道府県の選挙管理委員会の人たちは、一生懸命、何千万枚もある紙を全部廃棄してるんです、職員総出で。そういう馬鹿なことをやって、秘密を維持してるわけ。もう一つは、私も政治資金の問題をずっと取材してて、総務省ですね元締め。総務省と話しても駄目なんです。総務省がね、自民党の言いなりなんですよ。だから私はアメリカがやってるような、連邦選挙委員会のような政治資金をしっかり管理して、適正に検査するような仕組みを日本は導入しないと、総務省の一部局がやるのは無理です。与党の顔色見ますから。だから私はそこも含めて、嘘を書かないような仕組みを、ぜひ提案していただきたい。

(泉健太氏)非常に良い論点だと思います。私達も政治家自身が作ってる法律には必ず抜け道があるっていうふうに、言われてきたし、総務省がもっと第三者機関的にならないと、みんなで隠蔽をしているような今の環境はよくないです。

(政治ジャーナリスト 武田一顕氏)「権力は必ず腐る」って言葉ありますよね。権力必腐。これは長く政権にいれば、どんな法律を作ってもおそらくある。そういう意味では、台湾で総統選挙やってますけど、台湾なんかは政権がどんどん交代していくわけですね。日本の民主主義が非常に残念なのは、政権交代は悪だというふうに、有権者の多くが刷り込まれてる部分がある。泉さんに聞きますけど、政権交代はやる気あるんですか?

(泉健太氏)ありますね。必ず果たしたいと思います。これはやらなきゃいけない。僕が言っているのは、外交安全保障から原子力から経済から全部政策を一つ残らず擦り合わせないと、次の自民党に代わる枠組みは打ち出すべきじゃない、と言われたら、いつになるかわからないわけです。ですからまず、短期でもいいから必ず政治改革をやりますと、政治資金規正法改正をやって、企業団体献金の廃止をやって、文通費も全面公開をします。それに加えて、野党だったら共通なのは「教育無償化」とか、「トリガーの凍結解除」とか、まず2~3年、短期間で必ずこの政策をやりますという、そういう政権を作ったらいいと思うんです。

 その後のことは、やっぱりもう一度、国民に信を問うて、引き続きその政権に任せたいかどうか、っていうことを、もう1回問い直せばいいと思うんです。じゃないといつまで経っても何もできない、という状況が続いてしまう。政権交代は必ずやります。

「ミッション型の内閣」なら野党賛同が得られるのではないか

――その中で、どうしても今、例えば泉総理、あるいは立憲民主党の政権っていう声は上がってこないです。これは何で?とご自身で分析されていますか?

(泉健太氏)やっぱり政権を取るためには副大臣、政務官だけでも60人ぐらい必要なんです。大臣も入れたら、80人ぐらいになるわけです。そう考えると立憲民主党の国会議員の数があまりに少なすぎるので、政権を担えるというふうには、今の時点では思ってもらえてないというところが根本的な問題だと思います。

 でも議席が増えてきて、層が厚くなれば、当然政権担えるねっていう話になってくる。でも次の総選挙で野党が力を合わせれば、やっぱりボリュームは作れるし、ミッション型の内閣であれば、私はそれは多くの野党にも賛同していただけるんじゃないかと思うので、それを明確にして戦うっていうところで、各党にも要請をしていきたいなと思います。

(武田一顕氏)議席を増やさなきゃ政権は取れないです。議席を増やすためには、例えば維新とどうにかしなきゃいけない。私が聞いてるところでは、例えば小沢一郎さんは維新の幹部と、何回か食事して意気投合したりしていると聞きますが、泉さんはそういうことをやったり、例えば維新とは何か考えていますか。

(泉健太氏)実は、それくらいのことはやってますよ、小沢さんだけがやってるって話ではないし、真剣に今の執行部同士で様々なやりとりはしています。もちろん今の時点で全て合うわけではないですけれども、それぞれの政党が真摯に努力しているというのは、日頃からやっています。

――次の総選挙では、維新との関係もいいところまでいけそうですか。

(泉健太氏)これは、維新の側の考え方もあるでしょうから、そう簡単ではないところもあるんじゃないか。我々は万博のことについては指摘をしているところもあるので、そういうものをお互い持ちながら、でも大義である「政治改革」とか「教育の無償化」をまずやろうというところで、合意というのはできるんじゃないかと思っています。

「あまりに自民党との資金力の差が違う」

(立岩陽一郎氏)辻元清美さんが選挙で負けたとき、ラジオ番組でご一緒して、辻元さんに言ったのは、「自民党と立憲民主党の一番大きな違いは、実は党職員の優秀さなんです。自民党は、我々が見えない職員の官僚組織ってのがすごく、霞が関とやりとりもする。で、僕がそのとき言ったのは、政党交付金は何のためにあるのか、党の政策立案能力を高めるためなんです。

 だとしたらこれを使って人材を育ててほしい。例えばシンクタンクを野党で一緒につくったり、2000万円ぐらいのお金出して、大学の研究者とかを引っこ抜いてきて、政策を作って、発表していく部分を出してほしい。そうじゃないと、いつまでたっても次の選挙で頑張りますっていうだけで終わります。もっと長期的に二大政党の一翼を担うっていうふうにしてもらわないと、状況は変わらない。変わらないのは罪で、政治に対する信頼どころか、希望も夢もなくなったら、日本は終わります。

(泉健太氏)人材の強化も、今比べてみたら、あまりに自民党との資金力の差が違いすぎるのは大きくて、職員にも給料が当然ありますから、例えば政党交付金は我々の倍以上、自民党はもらってるわけです。それに加えて企業献金、さらに1人1人の議員のパーティー収入。そういう自民党と、ある意味パーティ券を売るにしても、そんなに多く売れない立憲民主党、財政規模が大きく違うので、職員の数もずいぶん離れてしまっている。

 僕らは何とかここを、国民の皆さんと一緒になって、コツコツ寄付を集めながら候補者も名乗りを上げていただく必要があって、残念ながら今、どの野党も単独過半数を狙えるだけの候補者を立てられていないんです。まだまだその怒りの声を形に変えられていないので、候補者を1人でも多く探して、一緒になって戦う、そういうところから議席を増やして次第に差を詰めて、そして最後は逆転をしていくとそういう取り組みにしていきたい。

――通常国会が1月に始まりますけれど、裏金の問題で、岸田総理の退陣とか衆議院の解散は求めていくんでしょうか。

(泉健太氏)そうですね、今すぐにでも退陣すべきです。やっぱり下駄を履いてるわけです、裏金という下駄を履いている政権ですから、今すぐに退陣しないと、憲政の常道にも反すると僕は思います。当然、通常国会でもそこはやっていきます。