自民党の派閥の裏金事件をめぐる予算委員会の集中審議。野党側は裏金をもらった議員一覧を公表するよう要求しましたが、岸田総理は明言を避けました。また岸田総理は「裏金の定義を確認しなければならない…」などと発言していて、政治ジャーナリストの武田一顕さんは「裏金が何かわからない、わたった人数もわからない、何に使ったかについてまだ調査をしていないと、開いた口が塞がらない答弁の連発だった」と怒りを露わにします。このほか、岸田総理は、違法な会計処理があった場合に政治家も責任を負う連座制について前向きな姿勢を示しましたが、これについても武田さんは「前向きな発言をしただけであって、導入する方向でいきますとまでは言っていない。連座制に前向きな発言でニュースにネタを提供したからあとは答弁しないけど乗り切れると踏んだとみています」と厳しく指摘しています。
(2024年1月29日放送 MBSテレビ「よんチャンTV」より)
◎武田一顕:ジャーナリスト 元TBS記者 元JNN北京特派員 中国情勢に精通 小渕内閣以降の歴代政権を取材 愛称は「国会王子」
『聞いていて怒りしかわかない答弁』
――29日の予算委員会で「自民党派閥と裏金」に絡んで集中審議が行われました。岸田文雄総理は、『自民党で裏金を受け取っていたのは何人?』との質問に対し、「そもそも裏金の定義を確認しないといけないが」と前置きして、「収支報告書の訂正をした人数は安倍派で30人以上。二階派で7人」と答えました。そして「党として関係者の聞き取りを行うべく、現在準備中である」ということ、また「外部の有識者に関わってもらうことも当然考えていかなければならない」と答えました。
――これについて、政治ジャーナリストの武田一顕さんは、『聞いていて怒りしかわかない答弁、今まで何やってたん?』という見解です。
(武田一顕氏)この先、確定申告が始まりますから、それに頭が痛い人たちにとっては憤懣、怒り心頭の話で、2か月も経ってるのに、裏金の定義もしていないのか、とか、政治刷新本部で離党させるかどうか、って話をしてるにも関わらず、渡った人数もわからないとか、極めつけが何に使ったかについてまだ調査をしていないっていうのが岸田総理の答弁でしたから、全く「開いた口がふさがらない」ような答弁の連発でした。
施政方針演説の前に予算委員会をやるのは異例です。衆議院の事務局に聞いたら、「自分の知ってる限りでは初めてのことだ」と言いました。それぐらい珍しいことをやってるにもかかわらず、それに対してきちんと答弁の準備をしてこなかったってことですから、これで乗り切れると思ってるんでしょう。
「法律に従って厳正に対応させます」とは言いました
――岸田総理は、『裏金を受け取った議員は修正申告をして納税義務を果たすよう命じるべき』という問いに対しては、「法律に従って厳正に対応させます」と答えています。また、「派閥を解散したら、派閥の繰越金(岸田派は約7800万円)をどうするのか」という質問に対しては、「まだ何も決まっていない。適切に処理したい」と答えています。
(武田一顕氏)納税については野党の立憲民主党とか、参議院では維新も追及してましたよ。数百万円でも1000万円でも、裏金だとすれば申告しなければいけないお金、納税申告をしなきゃいけないお金なんだから、何でそれをしなかったんだというのは相当追及ありましたけども、「法律に従って厳正に対応させる」と。全部一緒なんですよ。一覧表についてはこれから調査するとか、さすがに今日は『検討する』とはあまり言わなかったけれども、肝になることは何も答えないで、これからやります、待っててくださいと言って乗り切ろうとしています。
(神戸学院大 中野雅至教授)僕も施政方針演説の前に予算委員会が開かれたのは、役人時代も含めて記憶になくて、それに応じたってことは「何らかのタマ」を持ってるから応じたと思うんですけど、たぶんそのタマが連座制以外にはなかったのかなというのが驚きです。一番疑問なのは、政党交付金が入ってるわけですから、そもそも政治にお金がかかるというが、一体いくらかかるのか実態調査をしてほしいんです。予算委員会で質問が出ていたけれど、地方議員に対して金を配ってたとか、票の買収に使われたんじゃないか、っていう疑念が出てるわけで、我々が一番知りたいことについて岸田さんはゼロ回答です。
岸田総理「連座制も含めて、党として考え方をまとめ」
――岸田総理は連座制の導入については前向きな発言をしました。連座制とは、会計責任者や秘書などが有罪になった場合、議員も何らかの処分を受ける仕組みのことで、総理は「連座制も含めて、党として考え方をまとめ、各党とも議論を行っていきたい」と答えています。
(武田一顕氏)岸田さんは前向きな発言をしただけであって、連座制を導入する方向でいきますとまでは言ってないんです、議論をするって言っただけです。なんて言うのかな、要は国会答弁で言うと岸田さんは、「今日は連座制に前向きな発言をする」と。それでニュースのネタを提供したんだから、後のところは答弁をしないけども何とか乗り切れるんだと、そういう考え方をして、今日の国会を乗り切れると踏んだ、というふうに見てますね私は。支持率は大体各社とも底を打って、20%台に回復してきてますから、岸田さんとしては、今のところはこれで乗り切ろうという判断なんでしょうか。
――今後の国会、注目ポイントはどこでしょうか?
(武田一顕氏)来週から120兆円の予算を決める予算委員会が始まりますけども、その中で政治とカネの問題が引き続き追及されます。岸田さんが決めれば、与党で過半数持ってるわけで何でも法律作れるわけですから、どこまで踏み切れるかが注目です。逆に言うと、そこまで世論の反発・批判が強くなるかっていうところが一番の注目ポイントでしょう。来週は2月頭なので、各社が世論調査をしますから、そこで内閣の支持率がどうなるのか、自民党への支持率がどうなるのかっていうのを、与党側の議員は固唾をのんで見守っているところです。