国会議員たちのゴールデンウィーク中の海外視察。岸田総理は5月1日から6日間で、フランス、ブラジル、パラグアイを訪問。他にも多くの国会議員が海外視察を実施しました。ただ、これらの議員たちは「どこへ何のために行ったのか」非公開となっている部分が多く、実態が見えづらいのが現状です。5月9日のMBS『よんチャンTV』では、弁護士で元大阪府知事・元大阪市長の橋下徹さんに国会議員の海外視察や政策活動費について話を聞きました。
視察費用に「政策活動費」が使われていたとしても“チェックできない”現状
―――国会議員は、会期中は国内にいる必要があります。ただ、ゴールデンウィーク期間中は審議が行われていないので、政治活動のため、届け出て海外渡航した国会議員が衆議院で34人いたということです。ただ、どこでどんな活動をしてその費用はどれだけかかったのか、報告義務がないというのが現状です。視察費用に政策活動費が使われていたとしてもチェックできない。橋下さんはこうした点について、どんなご意見をお持ちですか?
「ちょっと上品な言葉を使わせていただくと、『国会議員ふざけるな!』と。ほんとは『国会議員なめとんのかい』っていうふうに言いたかった。だからちょっと上品にしたんです。海外視察の必要性は認めます。というのは、僕も税金を使って海外に行きました。知事時代にね、いろいろ行きました。やっぱりそれは現地の人と政治的な話をしなきゃいけない、行政的な話をしなきゃいけない、現場を見なきゃいけない、ということがあったので、税金を使って行きました。重要なのは、どういうことをやったのかっていうことを全部報告書でフルオープンにすると。去年、エッフェル塔に行ったメンバーの松川るいさん、確か報告書がきちっと出てないんじゃないの?」
―――報告書という形では出ていないかもしれませんが、SNS上で自分がどういう目的で行ったか、どういうことをしたかというのは、だいぶ遅くなりましたけどということで書いてはいらっしゃいましたね。
「そうですか。じゃあ、そういうものと同時に、どれだけの費用がかかったかということもしっかり出さなきゃいけないです。だから僕が知事のときに行ったときは当然、費用というものは全部フルオープン。これ高いじゃないか、とかいうことも当然、批判を受ける対象になります」
政治献金、政策活動費、立法事務費…政治家と「お金」
―――それはそれぞれの自治体の知事の判断ですか?橋下さんだからそうしたということですか?
「フルオープンはたぶん予算だから、予算のフルオープンの中に入ってるかもわかんないんだけど、項目を全部ごちゃまぜにしてくる場合もあるし、僕の場合には全部それは細目として明確化したんだけど、どういう形でフルオープンにするかは、ちょっとそれぞれ自治体によって違うかもわかりません。この国会議員たちの言い分はね、いわゆる国税が入ってないと。この人たち何のお金でやっているかというと、例えば政策活動費。入ってるかどうかわかんないんだけど、これ政党交付金だから、彼らからすると、税金っていう意識がちょっと足りないのと、もう一つは、政治献金で行ってるんだっていう主張がみんなあるんですよ。政治献金っていうのは、自分たちが集めたお金だから、これ税金じゃないから『自由にさせてよ』と。これが政治家の言い分なんです。政治献金というのは、確かにこれは我々の国民から集めた税金ではないですけども、政治献金って非課税なんですよ。普通、民間の皆さんがお金を集めれば、皆さん税金を払うんだけども、国会議員は政治献金で集めても一銭も税金納めない。これ税金を納めないという意味で、補助金をもらってるのと等しいというのが理論的な考え方なんです。この人たち国会議員はね、政治献金であろうが何であろうが、とにかく非課税のお金を扱ってるっていうことであれば、全部費用をやっぱりオープンにすべきですよね。あと、どこからお金が出てるか。政策活動費は、これもう全く領収書も出ない、細目もわからない。と同時に、実は立法事務費っていうのがある、これメディアであんまり取り上げてないんだけど。政策活動費とそれから旧文通費ってのはよく話題になります。立法事務費っていうのは、議員1人あたり月額65万円を会派に。会派っていうのは政党と同類ぐらいなんだけども、要は政治グループのほうに1人あたり月額65万円。これ領収書も出さなくていい、報告書も出さなくていい、何に使ったか全くわからないお金が月額65万円出ていて、旧文通費は月額100万円でうわーって騒いでますけども、この月額65万円のお金については野党もみんなだんまり決め込む」
―――そこにメスを入れると野党としても…
「野党もオープンにしなきゃいけないから。だから与野党の国会議員なめてるのかと。そのお金がある意味、会派、政党に近いグループに出てるんだけど、そのお金をほぼ使ってます」
「議員側が領収書を出し、その領収書を第三者がチェック」というルールを
―――政策活動費の部分を見ていきます。自民党の裏金問題を受けて、法改正に向けて協議が進められていますが、ルール作りをめぐって自公で溝埋まらずということです。政策活動費の使い道に関して公明党は、公開していこうよということを言っています。自民党は「党勢拡大」「政策立案」など項目ごとに公開。だから橋下さん、自民党としても、この政策活動費の使い道を全部公開しましょうということは現在の協議の段階でも言っていないということですよね?
「ここ、超重要ポイントなんだけど、自民党が仮に公開するとするでしょ。僕が仮に自民党というふうにして、議員の方にいくらいくら渡しましたっていう公開をすると。自民党はこういう案なんだけど、これで騙されたらいけないの。本当は誰が公開しなきゃいけないのかというと、このお金を受け取った側、議員側の方が実際に受け取ったお金を何に使ったかっていうことを領収書を出さなきゃいけないはずなのに、自民党は国民を本当になめとんのかいってことなんだけど、自民党はいかにも、自分たちはお金を出した、その項目は出しますよというふうに言っているが、例えば何か政策の勉強会費として議員に1000万円渡したと仮にするとするでしょ、その1000万円を本当に政策の勉強会で使ったかどうかなんてどうやってチェックするんですか?」
―――わからないですね。議員が勝手に車を買って、その領収書を出さなくてよかったら、自分の車庫に入れたらおしまいという。
「僕ら民間人は全部税務署に目を光らされていて、確定申告するときには領収書を全部出さなきゃいけないじゃないすか。もしね、領収書を一切出さなくてもいいですよって僕らそうなったどう思います?ある意味むっちゃラッキーじゃないですか。何に使ったっていいわけでしょ、税金を納めなくてもいい、ラッキーじゃないですか。国会議員はその特権を手放したくないんですよ。国会議員たちは適切に使ってますってみんな言うんですよ。民間人はそれが通りますか?税務署に対して『領収書出しません。でも適切に経費使ってます』なんて言っても通らないじゃないですか。国会議員の最大の特権で、(政策活動費は)二階元幹事長の場合、5年間で50億円ですよ。自民党の茂木幹事長は1年間で9億円ぐらいでしょ?うん、確か9億円ぐらい、1年間ですよ。領収書も出さなくていいって、こんな金をそんなの認めるべきじゃないってことを一生懸命僕も言ってたんだけど、なかなか力及ばずで変わらなかった」
―――そこで橋下さんが考える解決策は何ですか?
「『第三者の目とデジタル化』。一つは、受け取った国会議員側がちゃんと領収書を出すこと。その領収書を第三者がきっちりチェックすること。税務署と同じような機関がちゃんとチェックすること。それからやっぱり一番、デジタル化ですよ。もうデジタル化してしまったら全部オープンになるじゃないですか。アメリカも全部デジタル化。もう本当にね、1週間以内ぐらいに使ったお金がどんどんネットに出てくるんですよ。もう1週間ぐらいです。2000円以上か何かぐらいからどんどん出てくる。今、政府は国民にインボイスを求めたりとか、領収書を求めたりとか、もう細かい事務負担を国民には求めるんですよ。本人らは何もやんないじゃないですか。だからこれ、デジタル化にすれば全部フルオープンになるから」
立岩氏「例外規定を我々が知らない間に作ってしまう」 橋下氏「メディア含めて国民が怒り倒さないと」
―――お金の流れを明確にしようという実にシンプルなことですが、なかなか日本では進まないですね。立岩さんはどうお考えですか?
(立岩陽一郎氏)「橋下さんが今おっしゃられたその通りなんだけど、論点がもう本当に多岐にわたるんですよ。例えば、政策活動費がなぜ表に出ないか。それは法律で、政治家個人は報告書を出す必要がないとなっているんですよ。政治家個人はお金を受け取っちゃいけないっていう法律にはなってるんです。ところが、そこに例外規定が入るんです。政党からはもらっていいという。こういう例外規定を我々が知らない間に作っちゃうんですよ。だから政策活動費は消えない。それで言うと、デジタル化もそうなんですよ。アメリカも圧倒的。私が留学した2010年はまだデジタル化されてなかったけど、そのあとバーっとデジタル化するんですよ。日本もデジタル化したら、じゃあどうなるか。これわかんないのは、まさに、チェックする人がいないんですよ。皆さんご記憶にあると思うんすけど、ありましたね、キックバック。あれ、いい加減な修正をして出しましたよね。通っちゃうんです。あれ私は修正じゃないって言ってるけど、メディアだって修正だって書くじゃん。修正じゃないですよ、だってパーティーに何人出席したか不明って書いたりしてるわけです。こういうずさんさを残してるんですよね。今回の海外視察も、“会期中は行けないから”としているが、皆さんわかります?日本の国会は通年国会じゃないんですよ。6月末だったら国会なくなっていつだって行けるんですよ。だから、もう本当に言い訳で、その間何してるか。在外公館はこの人たちが海外に来るために一生懸命調整するわけですよ。つまり、議員たちが仮に税金を使ってなかったとしても、この人たちが海外へ行くために、税金使って、外務省の職員たちは一生懸命動いてるわけです。馬鹿馬鹿しい税金の使われ方の一つだっていうことは、皆さん理解しておいて。海外に行くのはいいんですよ」
(橋下徹氏)「ただね、島国の日本なんでね、やっぱり政治家が海外に行って、ちゃんとどういうことをやったのかっていうことをオープンにすることと、お金の使い道については透明化することで止まるんじゃなくて、第三者機関が必要なんです。今、立岩さんが言ったように。我々だったら税務署ですよ。これはアメリカでもイギリスでも、第三者機関の力がものすごく強くて、使い道がおかしかったら全部返還させるんです。ものすごく強力な機関、税務署と同じぐらいの機関、これを作らないと、いくら改革やったって、それ誰がチェックするのってなるんだけど、今、完全に自公議員らの議論で抜けてるのは、第三者機関を置くこと。それからこの領収書のいらないお金、政策活動費と立法事務費も含めて、領収書を出さなくていいお金を何とか死守しようとしているから、これはやっぱりメディア側が騒ぎ続けるしかない」
―――今、メディアでもこうやって取り上げますし、有権者も裏金問題では厳しい目で見ているはずですが、自民党が前向きになってないのはなぜでしょうか。逃げ切れると思っているのでしょうか。橋下さんはどうお考えですか?
「(逃げ切れると)思っているんです。旧文通費、月額100万円のお金についても、2年前ぐらいに大問題になってメディアが騒いだときには、変えるかなってなったんだけど、メディアが騒ぐのが収まったら、政治家は逃げ切れると思ったんです。それから今、自民党は前の衆議院の補欠選挙で3戦全敗って言われてるけど、世論調査を見ると、確かに政権交代の声とかが高まっているんだけど、野党の支持率が高まってないんですよね。だから、野党の候補者が小選挙区で乱立すれば、自民党はこんな状況でも勝てると思ってます。そう踏んでる。だから『なめとんのかい』と。本当にこれはメディア含めて国民が怒り倒さないと政治家は動かないですよ」