“人生100年時代”と言われる今、『老老介護』が増えています。そして同時に“介護疲れ”が引き起こした悲しい事件も生まれています。介護疲れを避ける考え方は?積極的に活用すべき公的機関は?福祉コンサルタントの藤井円さんへの取材などをもとに情報をまとめました。

“人生100年時代”で増える『老老介護』 40年間介護した妻を海に…悲劇の背景には「人を頼るのは恥」という考え方?

 『老老介護』とは一般的に、65歳以上の人が65歳以上の人を介護することを指します。また、75歳以上の人が75歳以上の人を介護することを『超老老介護』と言います。老老介護は年々増加傾向にあり、2022年には6割以上となっています。若い世代もいつかは直面する病気や介護の問題。老老介護の末に起こった事件もあります。

 2022年、神奈川県大磯町で81歳の夫が79歳の妻を殺害した事件。脳梗塞で車いす生活となった妻を40年間介護をしていた夫が、港に妻を連れて行き、「いやだ」と大きな声を出す妻を車いすのまま海に突き落としました。夫は殺人の罪で逮捕・起訴されて懲役3年。夫は「体力の続く限り、私一人で介護をする」と言っていたということですが、事件の何週間も前から2人で心中しようと考えていたと、事件後に話しました。

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 2021年、広島市では、脳梗塞で体が不自由になった80歳の妻を介護していた72歳の夫が殺害する事件が発生。事件当日の朝、夫が妻に「きょう死ぬかい?」と聞くと、夫曰く、妻が「いいよ」と答え、夫はマフラーで妻の首を絞めました。2人は50年以上連れ添った夫婦で、夫自身もがんなどの闘病を続けていたということです。

 そのほか、2023年に神戸市では、介護に疲れた69歳の息子が91歳の母親を殺害する事件が起きています。

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 こうした事件には、どのような背景があるのでしょうか。福祉コンサルタントの藤井円さんによりますと、高齢の方は「人に迷惑をかけるな」という教育を受けてきた時代があり、「人に頼るのは恥だ」という考え方を持っていることがあるとして、外部サービスや家族以外の人に頼りたくないと思う人が多いのではないかということです。

「介護はプロに、気持ちは家族に」積極活用すべき公的機関はコレ!

 では、『介護疲れ』を避けるには、どうすればいいのでしょうか。藤井さんによりますと、「介護はプロに、気持ちは家族に」という姿勢が大切だということです。精神的な支えとして家族に勝るものはありませんが、本来プロに任せた方がいい部分も全て家族が担ってしまうと、知らず知らずのうちに計り知れないストレスが溜まってしまうということです。そのため、介護は様々な公的サービスを利用して、躊躇せずプロに頼ってほしいとしています。

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 例えば、専門の相談員が介護・健康・生活の悩みを聞いて支援をしてくれる『地域包括支援センター』という公的機関があります。自分はどういったサービスを受けられるのか、そもそもどういったサービスが世の中に存在するのか、そういった話をしたうえで、必要な行政サービスや介護サービスにつなぐお手伝いをしてくれます。基本的に無料で利用可能です。この地域包括支援センターは全国に7397か所(※去年4月末時点)設置され、藤井さんによりますと、中学校の校区と同じぐらいの範囲に1か所ありますが、あまり知られていません。

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 直接訪問して相談できるほか、電話をすると職員が自宅に訪問してくれます。離れた場所に住む家族からの電話相談にも対応しています。また、近所の人など家族でない人も相談ができるということです。地域包括支援センターは「本当に知られていないので、気軽に相談してほしい、知ってほしい」としています。老老介護をされている方だけではなく、1人暮らしの方など誰でも相談可能ですので、ぜひ活用してみてください。