きのこが美味しい季節になりました。栄養豊富でありながら、他の野菜に比べて大きく値上がりせず、「新・物価の優等生」とも言えるきのこ。しかし安さの秘密を調べていくと、この安さはそう長くはないかもしれません。そんなきのこに関する“アレコレ”をまとめました。

◆食卓彩る「お安い」きのこ 安定生産ゆえ…悩み

ホクト株式会社のHPなどによりますと、きのこの栄養面の特徴①「カロリーが低い」。食パン248キロカロリー、ご飯156キロカロリーに比べて、エリンギ・ブナシメジで18キロカロリー、マイタケで14キロカロリーです。特徴②「食物繊維が豊富」。生どんこなら4.7グラム、マイタケで3.3グラム、ブナシメジ2.9グラムとなっています(いずれも生100グラムあたり)。

国内きのこ生産は、ブナシメジ・エリンギ・マイタケは9割以上が工場生産で、エノキ・シイタケは個人農家などが主に室内で栽培しています。つまり、天候に左右されずに生産量が安定している、というのがきのこ類。そういう意味では野菜でありながら、飲料や菓子類のような生産のされ方です。

値段は「基本的にずっとお安め」です。野菜の値段は、作り手が決められず市場で決まりますね。だから野菜の生産量が少なければ高く、多ければ安くなるんですが、きのこは先ほどの説明通り、安定的にたくさん作れてしまうがゆえ「お安め」だそうです。

◆のしかかる原油高

しかし今、原油高の影響で生産コストが上がっています。生産業者はきのこの値段を上げたいと思っても、市場の判断として高くはならない。大手の「ホクト株式会社」は国内で33工場が稼働して、年間約3000トン生産しています。2022年は電気代だけで年60億円かかって赤字になったそうです。

この10月には飲料や菓子など2911品目をメーカーが値上げしましたが、きのこは同じようにはできないそうです。スーパーの人に話を聞くと「100円超えると急に売れなくなる」と話していました。ホクトの場合、昨年は泣く泣く、「5%減産」して、市場に少し減ったことで、ちょっと値上がりしたということです。

◆きのこ100%利用法 鍋に入れるのはいつ?

きのこの上手な食べ方について。きのこは水洗いNGです、水溶性の栄養が流出してしまうため、工場生産のものは石づきを切るだけでOKです。包丁を使うより手で割いた方が断面の表面積が大きくなり、うまみが出たり味が染みたりします。

さて、お鍋にきのこを入れるベストなタイミングはいつでしょうか。ホクトに聞くと、水の段階から入れるのがオススメです。きのこのうま味が最も外に出るのは水温60~70℃だそうで、沸騰した鍋に入れるより、はじめから入れた方がよいということです。

さらに、きのこのうま味をアップさせるひと手間が事前の「冷凍」です。細胞壁が壊れて、分解酵素の反応が起き、それによってうま味成分が増える、ということが起きているそうです。

◆マツタケ生産は戦後時期の1/4000

マツタケの生産。京都・丹波では戦前に1200トンあったのが、最近は0.3トン。松が燃料として利用されなくなり林が放置されたり、松くい虫の被害も原因だそうで、仲卸の「京栄ランド株式会社」によりますと、担い手の減少と、世の中のマツタケ離れも大きな要因です。マツタケの生えている場所を秘密にしていた中、高齢で亡くなり、わからなくなってしまったケースもあるそうです。

そんなマツタケは、工場で人工的に作れないのでしょうか。きのこ類は、原木など生きていない木につく「腐生菌」と、生きている木につく「菌根菌」があり、マツタケやトリュフは後者です。生きている木と、菌との関係、さらに土壌の菌の関係などの解明は、研究していても難しいそうです。

◆注目はブータン産のマツタケ

そんな中で海外で注目されている国もあります。日本で食べられるマツタケ、原産国の割合は中国59%、アメリカとカナダが12%、日本国内8%、トルコ7%等となっていますが、近年の注目がブータンです。「ブータン松茸SHOP」によりますと、クリアで癖のない味で、価格は国産の1/3~1/10くらいだそうです。京都の仲卸業者さんは「今後、輸入マツタケを入門編にして、日本のマツタケ食文化の復活につながればいい」と話していました。

(2024年10月2日放送 MBSテレビ「よんチャンTV」より)