今回の衆院選で大きく議席を減らした自民・公明の与党。15年ぶりの”過半数割れ”となり、一夜にして政界の勢力図が大きく変わりました。今後、政権運営はどうなるのでしょうか?選挙前の4倍となる28議席を獲得し、与党と野党第一党の双方から連携を模索される立場となった国民民主党の玉木雄一郎代表に単独インタビューを行いました。
安定した政権維持には「過半数」が不可欠!
衆院議員の議席定数は465で過半数が233議席ですが、今回の衆院選では自民党が191議席、公明党が24議席で、合わせても215議席と過半数を割っています。自民党総裁の石破茂総理は『今の時点で連立は想定しない』と言及していますが、石破政権が何かをやっていくには仲間を増やさなくてはいけない状況です。一方、立憲民主党の野田佳彦代表は『政権交代を目指す』と表明しています。
「過半数」はなぜ大事なのか、改めておさらいしていきます。
▼総理大臣の選出に必要:過半数あれば党のトップを総理にすることが可能
▼法案可決に必要:衆院・参院の両院の賛成が必要
▼総理の座を守るために必要:過半数が野党の場合、いつでも不信任案が可決される可能性がある
自公にとっては「維新」「国民」との連立がカギ
与党・野党の両方が過半数を超えていないということで、政治ジャーナリスト武田一顕氏は3つのシナリオが考えられるといいます。
シナリオ1:自公が他の党との連立で過半数超え
シナリオ2:野党が大連立で過半数超え
シナリオ3:政策ごとに連立する『部分連合(パーシャル連合)』
そこでキーとなってくると言われているのが「日本維新の会」と「国民民主党」です。それぞれが与党と連立すれば過半数に達するためです。ただ、日本維新の会・馬場伸幸代表は「連立政権入りも野党連合も考えてない」、国民民主党・玉木雄一郎代表も「与党・野党ともに連立を組もうと思っていない」と表明しています。
シナリオ1 『自公との連立』
なぜ、両党とも連立を否定しているのか?自公と連立した場合のメリット・デメリットを見ていきます。
メリット:自公と連立し与党になった場合には政策が実現しやすくなる
デメリット:自公に反対して今回の衆院選の結果になったと考えると、投票してくれた人への裏切りになる
過去に与党が野党と連立した例があります。1994年に発足した「自社さ連立」の村山内閣です。自民党・社会党・新党さきがけの3党が連立を組み、村山富市社会党委員長が総理となりました。在職日数は561日でした。社会党はその後、支持者が減り、現在は名前が社民党に変わり、今回の衆院選では1議席しか獲得できていません。
さらにもう一つ、日本維新の会は自公と手を組みにくい理由があります。今回の選挙で、維新は大阪の4選挙区全てで公明に勝利しました。維新と公明の“仲の悪さ”を踏まえても自公の連立に入ることはないと言われています。
シナリオ2 『野党大連立』
では、野党(立憲・維新・国民・れ新・共産・参政・社民・保守)が大連立した場合はどうでしょうか。
メリット:自公に変わる新しい政権をアピールできる
デメリット:8党の意見が合う?
過去の例では、1993年に「8党連立」の細川内閣が発足しました。総選挙で自民が過半数割れして、非自民系の8党が手を組み過半数の議席をとり、日本新党の細川護煕氏が総理に就任しました。しかし、混乱が生じ政権維持が難しくなり、在職日数は263日でした。
シナリオ3 政策ごとに連立する『部分連合(パーシャル連合)』
現実的に可能性が高いと言われているのが、政権や法案ごとに政権与党に協力するやり方です。
メリット:支持層を離さずに政策を実現が可能
デメリット:毎回話し合う時間が必要で時間がかかる・国民に納得のいく説明ができるか
連立のキーマン 国民民主党・玉木代表へ単独取材「ほしいのはポストではない」
では、与野党の連立のキーマンの本音はどうなのか?国民民主党の玉木雄一郎代表に単独取材を行いました。
Qキャスティングボードを握る立場になったが?
(玉木代表)「あんまり高揚感はなくてむしろ責任を感じてます」
Q今のところ自公連立であったり、野党との大連立ということは考えていない?
「(連立は)なくてとにかく政策を実現したい。われわれがいま欲しいのはポストではなくて『103万円の壁』を上げたい。とにかく大学生とかパートのみなさんから山のように選挙期間中に聞かされたのは、せっかく最低賃金が上がっても103万円で抑えないといけないから10月で働けなくなって11月や12月はシフトに入れませんと。全然豊かになれないので、103万円の壁を上げてもっと働けるようにもっと稼げるようにしたいですね」
Q政策実現のために自公との交渉も?
「『103万円の壁』を引き上げるのはこれはもう国民が求めてるからね。国民民主党しか言ってないので、自民党も公明党も立憲も維新も言ってないから、どういう交渉になっていくのかはこれからですね」
Q自民党は信頼できる?
「そこがちょっとどうなの、と思うから恐る恐る近づいて、とるものをとって、しっかり政策実現ができるように気をつけてやります」
Q将来的に一緒に組んでいけそうな党は?
「政策次第ですね。政策さえ一致すればどこでもやれる」
Q現段階で政策が一致する可能性がある党は?
「これから話してみないとわかりません。コミュニケーションを各党と丁寧にやっていきたい」
Q具体的な名前を出すのは戦略上あまり得ではない?
「いまは具体的な名前は控えたいと思います」
Q戦略ですね?
「いや、そんなことはないです。真心です」
Qポストも最終的には目指している?
「内閣総理大臣ですよね。最後は国家運営をしたい。それはどの政党トップもみんな思っていると思います」
最後に大阪のことについても聞いてみました。
Q大阪で支持層を広げていきたい思いは?
「梅田のヨドバシカメラ前の演説ではかつてないほど人が集まりました。自民党はちょっとな、維新もどうかなっていうときに大阪・近畿の新たな選択肢、国民民主党っていうのが認識されてきた。候補者を出して選択肢をつくっていかないと、(大阪は)維新しかいないと言われるので、みなさんに認めていただけるように頑張りたいなと思っています」
そのほかにも「政治とカネ」について考えを聞いたところ、次のような回答でした。
▼政策活動費は廃止を目指す
▼旧文書交通費の使い道を示す・残れば国庫に返納
▼第三者組織を設置
自民党が変わるには政権交代が必要? 政権交代したからこその変化も
最後に、政権交代が起きればどんなことになるのか、過去の出来事を振り返りましょう。自民党から政権が変わったからこそできたこともあります。
例えば、「8党連立」の細川内閣では、政治資金規正法が成立しました。小選挙区比例代表並立制が成立したのも、実はこのときです。
「自社さ連立」の村山内閣のときには、戦争時のことについて日本の姿勢を公にした『村山談話』で日中関係が前進したという評価もありました。
そして、政権が変わると、自民党が反省をしたり改善したりする大きなきっかけとなります。そういう意味でも、今回の衆院選が今後どう影響するのか、国民は注目していく必要がありそうです。