2月23日に会見を開いた維新の岸口実県議、増山誠県議、白井孝明県議の3人。N党・立花孝志氏への情報提供に関わったとして党の調査を受けています。岸口県議は立花氏と面会し、竹内元県議を「印象操作の黒幕」などと名指しした文書を提供、増山県議は非公開で行われた片山安孝元副知事への証人尋問を録音し、知事選の告示直前に立花氏に提供したと認めました。
兵庫維新の会は24日、党紀委員会を開き、岸口県議・増山県議に改めて聞き取り。2人の処分は早ければ25日にも決まる見通しです。混迷を極める兵庫県政について、維新の会を立ち上げた弁護士・橋下徹氏の意見を聞きました。
橋下氏の見解「維新の方針に不満持ったまま水面下で応援」
―――維新の県議3人は不信任案には賛成したのに、情報拡散力がある立花孝志氏に情報提供したのは斎藤元彦知事を応援していたと思ってよいのか?
橋下徹氏「そうですよ。兵庫県議会の維新は斎藤さん応援なんです。もうずっと斎藤さん応援。今回の一連の騒動は、事実として、斎藤さんと職員側で揉めたことは間違いないです。よくあることなんです。僕も知事・市長のときには本当に揉めてました。橋下府政・市政を倒そうと、職員がそういうふうに思って、動いていたこともあるんですよ」
「この対立状況はもう間違いないんですね。そのときは維新は斎藤さん側にたったんです。ところが鶴の一声で吉村(洋文)さんが昨年の衆議院総選挙の前、メディアが全部斎藤さん批判になっていた頃に、このまんまじゃ衆議院選挙がもたんと。だから『斎藤さん不信任でいく』っていう鶴の一声を吉村さんがグーンとやったんですよ。国会議員の当時の馬場代表も斎藤さんの応援だったんです。(維新は当初)事実が明らかになるまで不信任なんて早いって言ってました。だけど吉村さんはここで不信任でいけっていう号令をかけたので、このメンバーを中心に、みんな不満をものすごい持ち、全然納得せずに不信任に賛成した」
「でもそれだったら吉村さんと直接議論して戦うのか、維新を飛び出すのか、政治家なんだから、自分の思いと違うってたまにはあるけど、不満を持ったまま不信任やったのに、水面下で斎藤さんを応援していたってことなんですよ。そこがまずわかりにくい」
―――このときの兵庫県知事選には、維新にいた清水貴之氏が出ましたよね?
「清水さんは無所属になったので、どこかの党というわけではないんですけども、でも維新は、基本的には清水さんを応援しに行くのかどうなのかも曖昧だったんだけども、このメンバーを中心に斎藤さんを応援したいというような思いがある中で、吉村さんに言われてしまったから不信任賛成などとやって、こういうところが複雑になった」
―――本来政治家であれば、そこまでの思いがあるなら、(不信任案に)賛成すべきではなかったということですよね。
「吉村さんとガチンコで議論したらよかったんじゃないですか。それで最後に政治家ってのは、決まったら従うと。多数決でも何でも、決定には従うってのは政治家のもう大原則だから。もし決まったんだったらやっぱり従わなきゃいけないよね」
「秘密を公に暴露したからダメ、とは言えない」
―――立花氏に情報を渡して発信をお願いしていますが、維新の議員が自党の発信力を使うのではなく、違う政治団体に情報を渡したこと自体、橋下氏はどうみていますか?
橋下徹氏「法的な因果関係はわかりませんが、竹内元県議は、誹謗中傷を受けたあとに亡くなられたんです。真偽不明の怪文書を出して立花さんに渡して立花さんがSNS等で拡散して、竹内さんの方に誹謗中傷が向いて竹内さんが耐えられなくなったと。法的な因果関係は別としても社会的な因果関係っていうのは、これは完全に否定はできないと思う。この怪文書を拡散させたというのは、かなり悪質極まりない。重いです。そこにもうひとつ加えて、やるんだったら岸口さん自分の名前で堂々とやらないと。自分の名前でYouTubeに出して言わなきゃいけないのに、本人は名前隠して、立花さんの名前で拡散してもらったっていうのは、それはちょっと議員というか、人としてどうなんだって僕は思いますけどね」
―――文書には“黒幕”の名前としてその竹内県議や元県民局長のプライバシーに関わるような情報も書かれています。また、増山県議が立花氏に渡した録音データ内で触れられている元県民局長の私的情報については確たる証拠はないが、可能性はある、という言い方をしているものを渡している。“真偽不明の情報”を渡すことはどう思いますか?
橋下徹氏「秘密にしてるものを公に暴露したからダメ、とは言えないです。報道というものは秘密になってるものも報じています。典型例は捜査情報。捜査で『関係者によると』と容疑者の取り調べ状況とかが出てきますけど、普通は出てこない話を一生懸命報道機関が取材をして、報じているので、秘密だから報じたらだめ、となったら成り立たない。」
「だから秘密だからどうの、じゃなくて、それ以上に影響がある誹謗中傷に直結する、公共性・公益性じゃなくて、『公にするようなことじゃないプライバシーに関わるようなことでは?』というところが問題。確たる証拠はない秘密だからだめというよりも、裏取りが不十分だったということ。ここは地上波の役割で、ここをやっぱ確認するわけでしょ。ただ今回、県議たちは選挙を有利にしようと思って出したからそれは報道機関と違うわけです。公共性・公益性を見て、広くみんなの利益になるために、ということで秘密も明らかにしていくけど、今回、自分たちの利益のために(情報を)出したってのは、これもだめですよね」
「あとやっぱりこの確たる証拠がないという裏取りの部分。やっぱここ(確たる証拠はない)を地上波は控えてたっていうところあるんだけど、ただ控えすぎだったんだよね。僕、兵庫県知事選で本当に痛感したのは、隠してるっていうことに関しては、もう国民の皆さんものすごい敏感。あのときは立花さんがどう信用されてるかということよりも、地上波も含めて隠してるじゃないかと。隠してることを暴いてくれた、というところに一気にみんながそこを信用した。これは地上波側の方の責任もあると思います」
音声データではなぜ片山元副知事の発言を止めている?
―――漏えいした音声データでは、百条委員会の非公開証人尋問で、片山元副知事が元県民局長の私的情報を話そうとしたところ百条委員長が遮るシーンがありました。この話を遮ったシーンで、何か隠したいことあるのではと思った人がいたことは確かだと思います。
橋下徹氏「立花さんの影響もあるのかもわからないけど、やっぱり一番は、大手メディアが隠してたと。それを『実は隠してたものはこうです』というところ。これ非公開の証人尋問だから、奥谷委員長も止める必要ないんですよ。非公開だからしゃべらせないとしゃべらせたうえで、片山さんが、倫理上問題のあるっていうことを決めつけてきましたけども、これを疑わせるようなファイルは存在してるんです、書面はあるんです、でも、書面に書かれてることが本当か事実かどうかは、そこまでは裏取りもできないわけです。亡くなられてるから。だからひとつは非公開であったわけだから、こういう問題があったときに止めにいったのも僕はひとつ問題。これはきちんと喋らせる。もし片山さんが倫理上問題あると言って、いかにも事実としてそういうことを告発者がやったようなことを言ったら、『いやそれ、裏取りないですよね』と。で、あるのは何かといったら、ファイルは存在している。だから地上波ではだいぶ手前で止まったとは思うんだけども、まず服務規律違反、告発者には服務規律違反はありました」
―――元県民局長が、兵庫県のパソコンを使って兵庫県に勤める勤務時間中に、自分の違うことをしていたということはわかったわけですね。
「そこはしっかり言ったうえで、告発者に対して県民局長に対しての処分がどうなるかという議論をしなきゃいけなかったんだけど。ここ地上波で僕が出てる番組でもこの議論が抜けて、何となく告発したから処分されたみたいな感じでワーッと報道なったと思う。でも告発者には処分理由はあったはあるので。処分していいかどうかは別の話だけど。と同時に、ファイルの存在。報道機関としては悩むところだけど、僕の結論としてはファイルの存在までは報じるべきだったかなと思います。ただそれは、事実かどうか裏取りできてませんよということをしっかり言ったうえで。そういうことをやっぱりこれ全部隠しちゃったから。それを言い始めた立花さんの言ってることが真実かというふうになったんだと」
告発者の人間性と告発文書の信憑性は別
―――元県民局長の「人間性」と告発文書の「信憑性」がリンクされ、立花氏からもそういった批判が多かったように思います。悪いことをしている人が作った文書だ、という印象。こちらに関して橋下氏はどういう意見でしょうか。
橋下徹氏「証言する人が本当に怪しい人だったら、信じませんよね?これ普通です。裁判でも証人が出てきたら徹底的にこいつは悪い奴だ、ってことを尋問でやって、こいつの言うことを信じるなと。しかし告発のときには、それはやっちゃいけませんよ、っていうのが原理原則です。悪人であったとしても、悪人は悪人でちゃんと処罰すればいいわけで、その告発は1回ちゃんと調べましょうっていうのが、内部告発の原理原則なんです」
「というのは、内部告発をする人もルール違反を犯してる場合も多いです。現場にいるから見えるわけだから、外部の人間はわからない。当事者だからこそ不祥事を見られるわけです。そのルール違反に染まってる人が改心して内部告発したときに『こいつはルール違反してるんだ』って言って、悪性立証って言うんだけど、それやってしまったら内部告発が成立しないわけ。だから内部告発に関しては告発者の人間性とか信用性は置いて、告発内容をしっかり調べていきましょう、というのが内部告発の原理原則。こういう原理原則を、増山さんや立花さん、片山さんとか斎藤さんも含めて、ここの理解が足りなかったと僕は思います」
「ただ、話が違うかもわかんないけど、これは地上波の方で斎藤さんの悪人立証みたいな事を地上波やりすぎたとかあったと思うよ。パワハラ・おねだりのところとかね。やっぱりあそこも冷静にアンケート単なる職員アンケートだけを持ってウワーってやったのは、斎藤さんの悪性立証もやりすぎなところもあった」
「今度は内部告発者の方の悪性立証もやっちゃいけないところをやりすぎた。もちろん告発者が殺人を犯したとか、刑事罰を犯したってことだったら、内部告発とは別に処罰していかなきゃいけないけど、今回は刑事罰ではなく、県庁の中のルール違反という服務規律違反で処分したわけでしょ。これは本来やっちゃいけないと思う。少々ルール違反をやった人の内部告発であったとしても、しっかり告発内容を調査していきましょうというのが内部告発ですよ」
「服務規律違反がありましたが、内部告発者でもあるんで、内部告発がちゃんと決着がつくまでは、処分は保留しておきましょう、っていうのが今の流れだと思う。それを斎藤さんがいきなり処分していったわけ。政治的に対立した人を処分しにいったっていうのは、僕はこれ権力者としてはやっちゃいけないと思うね」
増山氏、岸口氏「ルール違反」で重いのは…
―――増山県議について、今回のルール違反をどれくらい重いものと、橋下氏は考えていますか。
「増山さんの件、冷静に見なきゃいけないのは、ルール違反はありましたが、公開された音源に誰かのプライバシーが全て暴露されたわけではないんですよ。明らかになったのは、非公開の場で、委員長が片山さんの発言を遮ったっていうそういう事実が、ある意味、表に出てきたわけでしょ。増山さんが週刊誌やテレビやいろんなところにこの情報を持っていって、これが『関係者によると』ということで報じられれば、普通の報道ですよ。非公開というところで何が行われていたのか、何で委員長が止めたんだと。僕あれを見たら止めるべきじゃないと思います。片山さんが発言しようとしても、全部ふさぐんじゃなくて言ってきたら言い返すと。それが僕は健全な百条委員会だと思う」
「『倫理上問題ある』と言ったら『裏は何なんだ』と、『ファイルです』って言って出してきたら『ファイルはあるかもしれないけど裏は取ったのか』っていうところがちゃんと残ってれば、どっちに利があるかってわかったのに。そこを奥谷委員長が止めてしまったっていうのは、僕はこれは議事進行としては失敗だと思う。だから、誰も報じないんだったら、増山さんが情報提供して、これが公になったってことはルール違反だけど、これは公共性公益性あるのかなって僕は思ってしまうね」
「岸口さんの話はもう全然次元が違う。岸口さんはもう完全な誹謗中傷の全く裏づけがない怪文書を拡散させたきっかけになったということで、僕は重大だと思う。増山さんも、ルール違反だから百条委員会で決められたルールを破ってしまったことは負わなきゃいけないけど、ちょっと質の違う問題だってことも冷静に考えなきゃいけない」
―――岸口県議は文書の件に関して、民間人が同席をしていて民間人がいるから話せませんということをずっと貫いてると思うんですが、そこはやはり守るべきなんですか?
「そうですね。立花さんに情報提供を2人でしたんだから、これも岸口さんが民間人がいるいないに関係なく、全責任を負わなきゃいけないと思います。そんな真偽不明の文書を仮に渡してしまったら、これ何を渡したんだって確認をするのが議員としての務めだと思う」
――岸口県議は会見で、「文書自体どなたが作成したのか、私はその場で知り得ませんでした。その方がどういうつもりで書いたのかわかりません」「文書をどなたが作成したか聞くべきではないと感じた」と説明しています。
このあと、百条委員会の調査結果はどう見るべき?
―――百条委員会の調査結果が3月上旬にも公表されようとしています。
【百条委員会の報告書案より】
・「パワハラ」はおおむね事実 職員へ強い叱責は事実と評価
・告発者の特定はすべきでなく元県民局長の地位回復を
・「おねだり」は虚偽の内容とまでは言えない
・「投票依頼」を裏付ける証拠はない
――維新の会派は、「パワハラ認定困難」としていましたが、今回の情報漏えいがあった後は「他会派の意見に従う」としています。報告書の結果が出たら、橋下氏はどの点に注目しますか?
橋下徹氏「百条委員会で一番重要なことは、元県民局長の内部告発が全くの虚偽ではなかったということです。斎藤さんは『虚偽、不正目的、うそ八百』と言っていた最初は。でも第三者である百条委員会が判断をすると、全部事実ではないけれど、でも虚偽ではなかったということだから、斎藤さんはやっぱり今まで自分が言ってきたことを改めなきゃいけないですね。もし虚偽じゃない、完全な不正目的でないということになれば内部告発として成立です。そうすると内部告発として成立したんだったら処分はしちゃいけないってことなってるから。僕はずっとこの番組でも言ってたけど、斎藤さんが判断することじゃないですよと。自分の疑惑を告発された文書に対して、これは不正目的だと自分が言ったらだめだ。第三者にそれが不正目的なのか虚偽なのかを判断してもらわなきゃいけないってことをずっと言ってきました。第三者が虚偽ではないと言っても、全て事実ですとは言ってないけど、そうしたら内部告発は成立なんだから、斎藤さんは今までの言ってたことを正すんだったら正す、謝るんだったら謝るってことをやらないと、県政混乱は収拾つかないと思いますよ」
―――――今回、百条委員会の委員の3人にトラブルがありましたけれども、合議制ですし、百条委員会で出る結果自体は、そのまま素直に受け取ったらいいということですね。さらに第三者委員会も調査結果を公表へ、ということです。
「法律の専門家たちの意見書も出てくる。でも県政が混乱してるでしょ。こういう県政の混乱を収束させる方法が法律にあるんですよ。それは何かというと、議会が不信任を知事に突きつける、去年ありましたね。そしたら知事はそこで自分がもう1回出直し選挙やるんじゃなくて、議会を解散するんですよ。解散して県民に問うて、議会が過半数自分の味方になれば、これ知事と議会が一つになって県政を進めていく。斎藤さんは不信任を突きつけられたときに議会を解散しても、味方が過半数取れる自信がなかったもんだから、失職して出直し選挙っていう邪道を歩んだんですよ。それは混乱します」
「斎藤さんも知事・元総務官僚なんだから、こういう場合の混乱の収束の仕方としては、不信任決議で議会解散、そこで勝負かけるっていうのが法律の規定なんだから、もうそれやるべきだからもう議会もね、もう1回勝負したらいい、不信任突きつけて」
―――今回、情報提供した議員は3人とも維新の議員です。党としての責任はどう考えますか?
「大いにあると思いますね。これは吉村(代表)さんが最後に判断するんでしょうけど。僕は維新兵庫県議会は少なくとも解散に値するぐらいなことだと。文書をまいて、1人が亡くなったという因果関係は別としても、この結果は重すぎるから、もう僕は解散に値すると思います」
―――吉村洋文氏の代表としての責任はいかがですか?
「代表としては任命責任ということになるんだけど。これは地方分権とかいろいろ組織ガバナンスのところで吉村さんが全部任命したわけじゃないからそこの任命責任までは取りにくいのかなと思うけど、組織として解散ぐらいに値すると。僕はそれだけの重大なルール違反、責任があると思います」
(MBS「よんチャンTV」2月24日放送より)