日本維新の会が掲げる教育の無償化や社会保険料の負担軽減をめぐって、自民・公明・維新が合意。一方、兵庫維新の会所属の議員らが他の党の党首に“情報を提供”するなど、維新の「内部統制」に関して問題が浮き彫りになっています。

 3党の合意の裏では何が?合意をめぐり維新の国会議員の間でゴタゴタも?2月27日、MBSの番組に出演した日本維新の会・吉村洋文代表に詳しく聞きました。

3党合意への受け止めは?次の参院選への影響は?

 2月25日の3党合意では、2026年度から私立高校の就学支援金を全国平均の45万7000円に引き上げるほか、社会保障改革については国民の負担軽減に向けて3党の協議体を設置するとしています。

 “少数与党”の懸案だった新年度予算案は、維新が合意を受けて賛成に回ることになり、修正・成立する見通しです。

 与党との合意を「成果」とすれば“維新が勝った・国民民主が負けた”という見方もある中、吉村代表は「勝ち負けではなく、政治家としていかに社会を変えていくのか、実行していくのかが重要」だと話します。

 (日本維新の会 吉村洋文代表)「政党は公約を実現するために存在していると思っています。我々は評論家じゃありませんから、有権者との約束を守って、社会のおかしなところを少しでも変えていく。特に教育の部分は、子育てにお金がかかるし、投資していこうと。おかしなところにお金を流すんじゃなくて、教育や子どもたちに使っていこうというのが僕の考え方です」

 「これは知事としてもやっていますが、大阪の子どもだけの話じゃなくて全国一緒。15歳の子どもの99%が高校に進学しますから、『この学校で学びたい』と思ったらその道が開けている社会を作りたい。それは本人だけじゃなく社会に返ってくると思っているんです。全国の小学校の給食無償化も令和8年度(2026年度)からやるとまとまりました。国民民主党の政策もぜひ自民党にはやってほしい、2つに1つじゃなくて」

―――自民・公明と近づいたことが、次の参議院選挙に影響するのではないかという見方もありますが?

 「公約を実現するために本気でやって、それで有権者の皆さんに『お前たちダメだよ』と言われたら、それは仕方がないことだと、諦めるべきだと思います。選挙のためではなく社会を変えるために政治をやっていますから。有権者の皆さんとの約束を守る、掲げた公約を実行する、僕はここが筋だと思って一生懸命やってるんですけどね。参院選に不利に働くかはわからないです。政治家って手段じゃないですか。政治家になることが目的になる政治家は退場してもらった方がいいんじゃないですか。これはどの政党でも。そう思いますけどね」

合意書は「いつまでに何をやるのか明記しよう、と」

―――今回の3党合意を吉村代表自身はどう評価しますか?

 「僕がとにかくこだわったのは、僕は弁護士でもありますから、合意書の文章の非常に細かいところまで見ました。というのも政治家の文章は『○○を目指す』『将来的に』『検討』といった文言がいっぱい入ってくるんです。最初の合意書も実はそういうのがたくさんあった。だから僕は、やるかやらないかはっきりしようと。いつまでに何をやるのか、やらないことはやらないと明記したらいいと。でもやることは時期も含めてちゃんとやろうよと」

―――社会保険料の負担軽減策について、曖昧さは?

 「社会保険料については壁がものすごく厚いので、今回、できないところまでは書いていません。できないのに『将来的に何万円を目指す』と書くとやっぱり解釈が出てきますから。社会保険料は負担が大きいです。社会保険料の負担率が30%ということを考えると、まず現役世代の負担を下げていくような社会保険改革が必要だと。それから、例えば薬局で買えるような薬まで保険適用にするとおかしいんじゃないかと、その負担のあり方も考えましょうと、そういった項目は書いています。確かに金額までは書けていません。ただ、社会保険料改革も、その岩盤に穴を開けたのは非常に意味があると思っています。穴は開いた」

『103万円の壁』めぐり国民民主に「一緒にやりますか?」と打診も断られる

 一方、年収「103万円の壁」をめぐり、自民・公明と国民民主党の協議は“打ち切られ”ましたが、与党側は年収の壁を160万円まで引き上げた上で、段階的に年収850万円以下を減税対象とする案をいまの国会に提出する方針を示しています。

 この案は25日に維新と交わされた合意文書の中に明示されていませんでしたが、自民・公明は維新に賛成するよう求めています。これについて維新議員からは「だまし打ちみたいなものだ」と否定的な意見も聞かれます。

―――こうした“寝耳に水”の状況について、与党への怒りはありますか?

 「ここは国民民主党の意見も聞いて、ちゃんとまとめてよって思います。自民・公明・国民民主でやっているんだから。よく“国民民主か維新か”と、天秤にかけられるイラストが(ニュースで)出てきますよね。維新が予算案に賛成したら国民民主がダメになるじゃないかとか、そういう天秤にかけられるイラストが出てくるが、僕はそれがすごく嫌。実は、去年の12月ぐらいから国民民主に、本気で一緒にやるなら僕も減税賛成なので同じ天秤に乗りますか?と、同じ側に立ちませんか?ということを言ったんですよ。中途半端は嫌ですが、本気で腹くくってやるなら、一緒にやりますか?と。ただ、それに対して榛葉(賀津也)幹事長や玉木(雄一郎)さんからは『維新は維新でやったらいい』ということを言われまして、断られたんですよ」

―――国民民主にとってもいい提案のように思いますが、なぜのらなかったのでしょうか?

 「それは本当にわかりません。よく『前原(誠司)さん(※共同代表)が国民民主から出たから』と言われるんですけど、僕は本音ではそこじゃないんじゃないかなと。というのは、僕がもし逆の立場なら維新と組みますよ。だってその方が公約実現できる確率が高くなるじゃないですか。103万円の壁を突破するには7兆円とか8兆円とか財源が必要で非常に難しいと言われている中で、維新から一緒にやりますって言われたら、僕なら絶対飲み込みます」

 「ただ今回、そこは別々でと言われたので、この間、協議を積み上げて、我々の公約を実現するための合意をしました。ここで、維新が合意したから国民民主の政策が実現できなくなったでしょというのは、フェアじゃないと僕は思うんですよ」

維新議員の間でゴタゴタ?

―――今回の3党合意の文書案をめぐって、維新内では、党所属の全ての国会議員を対象にした会合で、執行部への批判が噴出し、一部の議員が「予定調和ではないのか」と反発するなどしたということです。維新議員の間で足並みがそろっていないのではないかと指摘されていますが、吉村代表はどう見ていますか?

 「ある意味、いろんな意見が出るのは健全なんじゃないかなと思います。ただ、方針が決まれば一致団結してやるべきだと、それが政党だと思います。今回の合意でも、もっと社会保障に力を入れるべきじゃないか、これは不十分じゃないか、などいろんな意見を戦わせるのは、あるべき姿だと思います。ただ、方針が決まったら、同じ政党なので、みんな同じ方向で進んでいきましょうと。それが政党だと僕は思います」
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 政治ジャーナリストの武田一顕氏は「今回の3党合意は前原共同代表がまとめ切った」と指摘。前原共同代表は非自民を貫いてきましたが、石破茂総理とは比較的良好な関係だといわれています。そうした中で、「今後については“外様”の前原共同代表を吉村代表がどれだけ信頼しきれるかだ」という見解を武田氏は示しています。

 そんな前原共同代表との関係について、吉村代表は次のように話します。

 「共同代表をお願いするときに言ったのは、もちろん前原共同代表は国会においてもすごく経験豊富ですが、選挙で選ばれた代表は僕なので、『最後は僕の決定に従ってくれますか』と。前原さんは『わかりました』とおっしゃった。僕は経験不足の部分もあるし、国会にいない。前原さんを共同代表において、その下に幹事長や政調会長を40代ぐらいの若手で揃えて。若手は不十分なところがあるので、そういった部分を支えてくれる共同代表になってくれたらということで、お願いしました。もともと人間関係が濃かったわけじゃないですが、今はしょっちゅう電話しています」

斎藤知事“不信任”は「吉村代表の鶴の一声」と橋下氏は指摘するが…

 兵庫県議会をめぐっては、斎藤元彦知事の不信任案に賛成した維新の県議が、“斎藤氏の応援目的で出馬”していた他党の党首に“情報提供”していたことが判明しました。維新の議員が当時『不信任案に賛成』したことについて、橋下徹氏はMBSの番組に出演した際(2月24日)、以下のようにコメントしていました。

 (橋下徹氏)「メディアが全部斎藤さん批判になっていた頃、このまんまじゃ衆院選がもたんと。だから『斎藤さん不信任でいく』という鶴の一声を吉村さんがグーンとやったんですよ」

 この橋下氏の発言について吉村代表に問うと…

 「鶴の一声ではなかなか決まらないですよ、それは。役員会があって、そこでかなり斎藤さんに関する意見は出ました。このままじゃ一緒にできないという。国会議員中心にすごく出ました。最後、僕は不信任に了解しました。でも『鶴の一声でグーンとやった』はちょっと…。みんなで決めたことです」