毎年メンバーが入れ替わる中、各大学が様々な強化の跡を見せる大学ラグビーの春シーズン。そんな春のシーズンを締めくくる関西大学ラグビー春季トーナメントの決勝戦が7月2日、奈良県天理市の親里ラグビー場で行われました。今シーズン、タイトルがかかったこの舞台に駒を進めてきたのは、京都産業大学と同志社大学。天理大学とともに関西の大学ラグビー界をリードしてきた両雄が激突しました。

前半は、昨シーズンの大学選手権準決勝でわずか1点差で敗れた悔しさをばねに更なる強化に挑んできたという京都産業大学が先にペースをつかみます。5分にPG(ペナルティーゴール)で3点を先制すると、直後の6分、相手のハイパントをキャッチしたNO.8のテビタ・ポレオ選手が、同志社ディフェンスのスキをついて一瞬のスピードでうまく裏に抜け出すと、フォローした右ウイングの松岡大河選手が20メートル以上を走り切ってトライ。さらに、PGで3点を返された後の22分、今度は味方のハイパントを得点に結びつけます。

自分たちのミスで相手の強みを…

同志社大学の山本敦輝主将が「自分たちのミスで相手の強みを出させてしまった」と振り返ったように、同志社が連携ミスでハイパントキックの処理をもたつく間に、しっかりとしたチェイスからこぼれ球にうまく反応したフルバックの辻野隼大選手がトライ。ゴールも決めて15対3とリードをひろげます。

それでも1月16日には新チームをスタート。山本主将が「学生主体に自分たちで考えたことを信じてやり続けるラグビーでここまで成長してきた」という同志社大学。準決勝で強豪の天理大学を下した確かな手ごたえとともに、反撃に転じます。25分、フランカーの奥平都太郎選手、NO.8の北堀誠博選手がうまくディフェンスのギャップをついて、京産大ゴールラインに迫ると、最後は、途中からスタンドオフの位置に入った嘉納一千選手の絶妙なキックパスを受けたフランカーの鈴木崇敏選手がトライ。まさに同志社らしい各選手の好判断の連続が生んだ得点で、15対8とワンチャンスの差に迫ります。

しかし、昨年の秋のシーズンから関西では頭一つ抜けた力を示してきた京都産業大学。ここから、鍛え上げてきたフィジカルの強さ、伝統のスクラムの強さを生かして、再び突き放します。FW陣がスクラムをコントロールしてマイボールを確保すると、BK陣もひとりひとりが縦への強さを見せて確実にゲインラインを突破していきます。31分には、ラックサイドを突いて、1年生のスクラムハーフ、高校日本代表でも活躍した高木城治選手(東福岡高校出身)がトライ。その後もスクラムで優位に立ちゲームの流れを引き寄せた京産大。確実に得点を加えて、前半だけで30対8と大きくリードして折り返します。

優勝以外は同じという気持ちで

それでも、山本主将が「優勝だけを目指していた。それ以外は同じという強い気持ちで臨んでいた」と語った同志社大学。後半に入るとスクラムを修正。京産大から連続してスクラムでの反則を誘って京産大陣内深くに入り込みます。そして後半の9分、ゴール前の混戦から、センターの岡野喬吾選手が判断よく飛び込んでトライ。コンバージョンキックも決めて、30対15と再び追い上げます。

しかし、スクラムに関しては絶対的な自信と練習量を誇る京産大。修正してきた同志社スクラムに落ち着いて対応、FW陣のプライドをかけた肉弾戦で、すぐさま主導権を取り返します。こうなると京産大の勢いを止めることはできません。後半途中から起用された高校日本代表の1年生トリオのうちの一人、ナブラギ・エロニ選手(大分東明高校出身)の柔らかさとパワフルさを兼ね備えた突破でチャンスをひろげると、21分、24分と立て続けにトライを奪って勝負を決定付けました。

もう一人の高校日本代表メンバーの1年生、石橋チューカ選手(報徳学園出身)も,スタメンで出場。終わってみれば、54対15、トライ数7本対2本の快勝に、京都産業大学の廣瀬佳司監督は「1年生トリオは(チームに)いい風を入れてくれた。(今日の試合は)80分間前に出るいいラグビーができた。今のうちのベストのゲームをやってくれた」と振り返りました。

一方、敗れた同志社大学の宮本啓希監督は「最後に大きな勉強をさせていただいた。今日、今後どう進んでいったらいいか、ポジティブな結果をいただいたので、夏以降チームとして前に進んでいける」と語りました。

新戦力も加わって圧倒的な力を見せて優勝した京都産業大学。敗れたものの名門復活に向けての課題を手にした同志社大学。決勝戦を戦った2校はもちろん、各大学が新たなメンバーで新たなチャレンジに取り組んだ関西の大学ラグビー春シーズン。夏以降の成長ぶりに期待を膨らまさずにはいられない内容で今年も幕を閉じました。


MBSスポーツ解説委員 宮前 徳弘