阪神タイガースの新監督に藤川球児氏が就任。10月21日、MBSの番組に出演した掛布雅之氏は藤川氏の就任について語るとともに、新体制のポイントも解説しました。
「岡田監督がもう1年やると思っていたのでびっくり」
―――岡田彰布監督から藤川球児新監督に。掛布さんは「びっくりした」ということのようですね?
「(岡田監督が)もう1年やって、藤川球児をスタッフに入れて現場を経験させて、監督交代劇があるのではと、それが一番スムーズなやり方じゃないかなと思っていました。もう1年、岡田監督がやると思っていましたので、本当にびっくりしました」
―――掛布さんは今年7月に行われた巨人対阪神のOB戦で、バッティングについて藤川さんから聞かれたそうですね?
「私、江川(卓さん)からセンター前のヒットを打って、ベンチ裏に下がったときに、ちょうど藤川球児が寄ってきまして、『昔の方たちのバッティングは技術を持っていますね』と。『バットのヘッドが下がらない、たれませんね』みたいな話をちょっとしました。バッターについても詳しく勉強しているんだなっていうのは、そのときすごく感じました」
―――このあたりから、監督っていうところは何かあったのでしょうか?
「(いずれ監督にという)ラインに乗っているのも前から聞いておりましたので、今言ったようにちょっと早いかなという感じだけなんですよ。コーチとしてユニフォームを着た経験もありませんので、その部分がちょっと心配かなというだけです。たぶん藤川監督ご本人は心配されていないと思います」
藤川監督が豊富な投手陣をどう整備していくかに注目
―――藤川監督が率いる阪神はどんなチームになりそうか。掛布さんは『投手を中心としたしっかり守る野球』になるとお考えのようですね?
「甲子園球場を本拠地に戦わなければいけないチームですから、しかも阪神の今のチームバランスを考えれば、守る野球で戦っていくしか戦う方法はないんですよ。岡田監督の言った“相手を2点に抑えて、阪神は3点を取って勝つんだ”というこの野球は変わらないと思います。連覇するために投手陣を結構“酷使”してきましたので、その投手陣を、投手として実績がある藤川監督がどう整備していくかに注目したいですよね」
―――藤川監督が豊富な投手陣をどう整備し、まとめるのかが、掛布さんの楽しみなところでもあると。
「桐敷(拓馬投手)は今シーズン70試合に登板しているんですよ。藤川監督も現役時代にこれぐらいの試合数の登板がありますので、そのオフのケアの仕方だとか、来年に向けての準備だとか、いろいろなことを桐敷に教えていくと思うんですね。そして、優勝を逃した原因の1つとしては、村上(頌樹投手)が勝てなかったこと。だから、この村上が復活するかですよね。さらに、最多勝に届くのではないかと大車輪の活躍をした才木(浩人投手)が2年続けて良い成績を残すためのオフの過ごし方など。たぶんこれから秋季キャンプに入ったときにいろいろ話し合うと思いますが、この2か月間のオフの過ごし方ってすごく大切なんですよ」
―――桐敷投手は70試合登板しましたが、来シーズンもこれぐらい投げられるのでしょうか?
「それだけのスタミナはあると思いますよ。それと、2年連続最多勝の経験がある青柳(晃洋投手)は今シーズン2勝。『力のないベテランは必要ない』というような(藤川監督の)コメントがありましたが、まだまだ僕は青柳の力が必要だと思いますので、このあたりの再生というものも藤川監督には期待したいですよね」
―――今シーズン、抑え投手は2枚看板でいきました。これが来シーズンどうなるのか?
「藤川監督はいろいろな形の組み合わせを考えて、また違う“JFK”、勝利の方程式を作ってくれるかもしれませんね。これも楽しみですよね」
「選手に対して怒るということを藤本コーチができるかどうか」
―――藤川監督にコーチ経験がない点はいかがですか?
「ここがやはり、少し心配しているところです。21日、コーチングスタッフが発表されたんですけど、監督やコーチは、選手に気持ちよく戦ってもらえる、そういう雰囲気作りが今一番大切なんですよ。我々の時代と違って、やらされる時代から、選手がやる野球に変わってきているんで、監督とコーチでその環境作りをすごく大切にしてもらいたいんですけど、“怒る”というコーチも1人いないと。チームが緩むので。この顔ぶれの中で、一番怒れるポジションを任される人が、ちょっと見当たらないんですよ。そうなると総合コーチの藤本(敦士)コーチがその役割に回らなければいけないと思うんですが、藤本コーチは岡田監督時の2年間、サードのベースコーチをしていますよね。選手とすごく近い距離で2年間、一緒に野球やっていますので、選手に対して怒るということを藤本コーチができるかできないかっていうのは、来年の阪神が戦う上ですごく大きなポイントになる。藤本コーチが変わるかどうかだと思いますね」
―――来シーズンはヘッドコーチは置かず、総合コーチということですね。
「この総合コーチがヘッドコーチのポジションだと僕は思っています。星野(仙一)さんと島野(育夫)さんというすごくいい関係の監督とヘッドコーチがいました。星野さんはすごく厳しく、そのフォローは島野さんがちゃんとしていた。その関係を藤川監督と藤本コーチの中でできるかどうか。来年、戦う以上に僕は心配な部分です。チーム力はありますから、Aクラスには入ると思いますよ。優勝するために必要なのは、チームを緩めない、怒れるコーチ」
―――藤川監督は就任会見で、理想とするリーダー像について「岡田監督です」と述べました。また、「岡田監督が指揮をとった2年間は非常に強く、チームも成熟してきた」というような話もありました。掛布さんは岡田監督の2年間をどう見ますか?
「まだまだ伸びしろのあるチームというのは間違いないと思います。この2年間、すばらしい戦い方を岡田監督はしたと思うんですけども、クライマックスシリーズは、『岡田監督退任』の報道後ということで選手がもっと激しい戦い方をすると僕は予想していましたし、見たかったんですが、少し淡白な形で2つ負けて終わってしまった。その裏には何かいろいろあったのかなと。これは僕の宿題として調べてきます。(岡田監督が残したもの・功績を)藤川監督は引き継いでいくと思いますし、良い形、バトンを藤川監督が受け取って、藤川監督も次の世代にバトンを渡していって、強い阪神、常勝阪神というチームを作ってもらいたいですね」