「紀州のドン・ファン」こと和歌山県田辺市の資産家・野崎幸助さん(当時77)の13億円を超える遺産の遺言書を巡り、1審の和歌山地裁が「全財産を寄付する」と書かれた遺言書は有効とする判決が言い渡された裁判で、遺族側が2日に控訴しました。


【文書には「全財産を田辺市にキフする」】

野崎さんが死亡したのは2018年5月。その後に、見つかった野崎さんの知人が預かっていたという一枚の文書。

「いごん個人の全財産を田辺市にキフする野崎幸助」

紙には赤い字で手書きされた文字で書かれていたということで、2013年2月8日付で自身の名前も記載された、生前に書かれたとされる遺言があることがわかりました。

和歌山家裁田辺支部が、「遺言書は形式的要件を満たしている」と判断。田辺市はこの遺言書に基づき巨額の遺産を「市民の利益のため」に受け取る手続きをはじめていました。

一方で、野崎さんの兄ら4人は、「遺言書は、本人以外が作成した可能性が高い」と主張、この遺言書は『無効』だとして2020年4月、遺言執行者の弁護士を相手取り、提訴していました。


【和歌山地裁「遺言書の筆跡は野崎さんのものとみて相違ない」】

和歌山地裁は21日に行われた判決で「筆跡の鑑定書などから筆跡は体調、心理状態など事情で変化するが、野崎さん固有の筆跡、他の資料と比較しても、遺言書の文字には野崎さんの『固有の筆跡や筆癖が認められる』とし、野崎さんの筆跡とみて相違ない」などと指摘しました。

また、「野崎さんは長年、田辺市に対して1000万円を超える寄附を行い、それを継続する意向を示したり、発言などをしていた。一連の言動は十数億円の資産すべてを最も近しい寄付先等であり、地元であった田辺市に遺贈するという内容とは矛盾しない」などとして、原告の訴えを退け、遺言書は有効とする判決を言い渡しました。