2022年に大阪府富田林市で、同居していた女の孫を“改造ベビーサークル”の中に監禁・放置し熱中症で死亡させたとして、保護責任者遺棄致死などの罪に問われている被告の男の裁判。被告側は1審の懲役6年判決を不服として控訴していましたが、大阪高裁は9月10日、控訴を棄却しました。

1審判決によりますと、桃田貴徳被告(53)は2022年6月、同居関係にあった小野真由美受刑者(48)=1審の懲役9年判決が確定し服役中=の自宅(大阪府富田林市)で、真由美受刑者の孫の小野優陽ちゃん(当時2歳11か月)を、四方の側面を板張りにするなどした“改造ベビーサークル”の中に監禁・放置し、熱中症で死亡させました。


▼被害女児は四方板張りのベビーサークルに監禁され…USJ訪問中は両腕両足を粘着テープで緊縛

ベビーサークルはベビーベッドの中板を取り外して四方にベニヤ板を貼り、二つ折りの開閉式のフタまで付いていました。

優陽ちゃんは同年6月24日夜~27日正午ごろまでの間、計約57時間にわたって断続的にベビーサークル内に監禁され、さらに27日夜~29日までは粘着テープで両腕両足を縛られたうえで監禁されました。

桃田被告と真由美受刑者は、2人の実子(当時5)を連れて24日~27日まで外泊を繰り返し、さらに27日夜~29日まではユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)に出かけていました。


▼事件前から常習的に監禁 ネグレクト状態だった…

この事件をめぐっては、▽事件前からも常習的にベビーサークルへの監禁が行われていたこと ▽そのきっかけには、優陽ちゃんがオムツを脱いで汚物をまき散らしたり、下半身を床にこすり付けたりするなどの“問題行動”があったこと ▽一方で優陽ちゃんは保育園を退園させられ、日頃から十分な食事を与えられず栄養不良状態にあったなど、育児放棄(ネグレクト)とも言える状態にあったこと が明らかになっています。


▼主導者は祖母と認めるも…1審は桃田被告にも保護責任者遺棄致死罪と逮捕監禁罪が成立すると判断
1審で桃田被告側は、事件直前に真由美受刑者と口論になり、同居関係を解消していたため、事件時には優陽ちゃんに対する保護責任者性は消滅していたなどとして、無罪を主張。

しかし去年12月の判決で大阪地裁堺支部は、事件時も連日、外泊の合間に真由美受刑者の自宅に立ち寄っていた点や、衣服などの荷物も置いたままだった点などから、「事件当時、真由美受刑者の自宅を生活の拠点とする家族としての実態は失われていなかった」と判断。桃田被告は優陽ちゃんの保護責任者だったと認定しました。

また地裁堺支部は、USJへ出かけた際に優陽ちゃんの両腕両足を縛ったのが真由美受刑者だった点も含め、事件やそれ以前の常習的監禁を主導したのが真由美受刑者である点は認めた上で、桃田被告も「優陽ちゃんを閉じ込めるための改造ベビーサークルを一緒に作成して、劣悪な環境を構築し、真由美受刑者の監禁行為を認識・黙認していた」と指摘。

桃田被告にも逮捕監禁罪と保護責任者遺棄致死罪が成立すると結論づけたうえで、「優陽ちゃんに煩わされることなく、テーマパークなどで遊興する時間を楽しみたいという身勝手な目的で犯行に及んでいて、動機や経緯に酌むべき事情は乏しい」などとして、懲役6年の実刑を言い渡しました。


▼控訴審でも改めて無罪を主張
桃田被告側はこの判決を不服として、大阪高裁に控訴。控訴審でも改めて無罪を主張し、“無罪にならないとしても量刑が重すぎる”と訴えていました。


▼大阪高裁は控訴を棄却「保護責任者だったと認めた1審判決は相当」
大阪高裁(石川恭司裁判長)は9月10日の判決で、「桃田被告が被害女児の保護責任者だったと認めた1審判決の判断は相当」と指摘。量刑不当の訴えについても「真由美受刑者と犯情に差があることは考慮したうえで、犯情全体の重みに鑑み、被告の刑事責任も軽いものではないと判断した1審判決に不合理な点はない」として、桃田被告側の控訴を棄却しました。

(MBS大阪司法担当 松本陸)