聴覚障害があった女児が重機にはねられ死亡した交通事故の賠償をめぐる裁判の控訴審の判決で、大阪高裁は「事故にあわなければ将来得られた収入=逸失利益は健常者と同じ」と判断する画期的な判決を言い渡しました。判決を受けて女児の母親は「涙が止まらなかった」などと話しました。
7年前(2018年2月)、大阪市生野区の歩道に重機が突っ込み聴覚支援学校から下校中だった井出安優香さん(当時11)がはねられ死亡しました。
遺族は運転手と勤務先に6100万円あまりの賠償を求め提訴。最大の争点となったのは、逸失利益=安優香さんが将来得られた収入額です。
1審の大阪地裁は「安優香さんの学力や意欲に照らせば様々な技術や手段を用い、コミュニケーションへの影響を小さくできた」としつつも「労働能力が制限されうる程度の障害があったことは否めない」として、安優香さんが得られた収入は全労働者平均の85%と判断し、運転手と勤務先に3700万円あまりの賠償命じました。
遺族はこれを不服として控訴していました。
(安優香さんの父・井出努さん 判決前の取材)「裁判所が差別を認めたっていう悔しい判断をされた。娘には何の落ち度もなかった。娘の将来を奪ったのは相手側なので、当然減額される理由は全くない」
遺族が一貫して健常者と同等の逸失利益を求めたなか迎えた、20日の2審判決。
大阪高裁は「安優香さんは学年相応の言語力・学力を身につけ、高いコミュニケーション能力を有していた」と改めて認定。「テクノロジーや社会意識の進歩も踏まえれば、安優香さんが、ささやかな合理的配慮のもとで健聴者と同じ条件で働けたと予測でき、基礎収入を減らすべき理由はない」と判断。
100%の逸失利益を認め、賠償額を増額し、運転手・勤務先に4300万円あまりの賠償命じました。
(安優香さんの母 井出さつ美さん)「安優香の11年の努力、11年が認められたんだという気持ちになり、そこから涙が止まりませんでした」