岸田前総理襲撃事件の裁判。2月10日の裁判で、男は「多くの皆さんにご迷惑をおかけして大変申し訳なく思います」と謝罪しました。検察は懲役15年を求刑、弁護側は「殺意は認められない」などとして懲役3年を求めました。
▼岸田前総理に爆発物…投げた男が逮捕・起訴
起訴状によりますと、兵庫県川西市の無職・木村隆二被告(25)は、2023年4月、選挙の応援のため和歌山市の雑賀崎漁港を訪れた、岸田文雄前総理に向かって手製の爆発物を投げたとされる殺人未遂の罪などに問われています。岸田前総理は逃げて無事でしたが、警察官と聴衆の男性の2人が軽いけがをしました。
▼裁判の争点は「殺意の有無」…検察側「爆発物に殺傷能力」 弁護側「注目を集めたかった」
裁判は2月4日から始まりました。主な争点は、木村被告に「殺意があったかどうか」。ここまでの検察側、木村被告側の主張を改めて整理します。
○木村被告側
4日の初公判で、木村被告は「殺意はありません」と起訴内容を一部否認。6日の被告人質問では、爆発物を投げた動機が明らかになりました。
木村被告は、政治家を目指そうとするも、年齢制限によって選挙に立候補できなかったことを受け、民事裁判を起こしていました。この裁判で敗訴したことが、”爆発物を投げたことにつながった”と話しました。
(木村被告:6日の被告人質問)
「総理大臣のような有名人の近くで大きな音を出すと、私に注目が集まり、裁判のことも知られるだろうと思った」
これに対し、検察側は…
(検察官)
「音がするだけなら爆竹で良かったのでは?」
(木村被告)
「爆竹だと音が小さい」
(検察官)
「大きな音を出すために、爆発物を作ったのですか?」
(木村被告)
「大きな音を出すために、爆発物を作りました」
○検察側
一方、検察側は、木村被告が製造した爆発物に「殺傷能力」があったことを主張。
2月5日には、警察庁の技官で「爆発」の専門家は、実験の結果、木村被告が製造した爆発物は、「銃の弾丸」の威力を上回り「殺傷能力がある」と説明。
さらに、6日の被告人質問では、木村被告に対し、爆発物の危険性について問い詰める場面も。木村被告は、事件の約1か月前、自宅近くで爆発実験をしていたことが裁判で明らかになりました。木村被告の話では、使用した爆発物は「マンションの2階ほどの高さまで飛び、姿が見えなくなった」といいます。
▼「岸田さんは遊説で和歌山に来たんだと思った」公選法違反に関し認めに転じる
10日に行われた裁判、冒頭、木村被告への被告人質問から始まりました。公職選挙法違反の罪について、木村被告は「そういえば(インターネットで)検索した中で「和歌山1区」など選挙に関連した言葉があった。岸田さんは遊説で和歌山に来たんだと思った」などと話し、認めに転じました。
▼検察は「懲役15年」を求刑
その後行われた検察により行われた論告・求刑。検察は「人の命を奪う可能性がある爆発物を大勢の人がいる中で投げて爆発させたことに殺意や加害目的があったのは明らか」「犯行の連鎖や危険を防ぐ必要がある厳しく処罰されることを社会に知らしめて警鐘とすべき事案」などとして、懲役15年を求刑しました。
一方で、弁護側は「人に危害を与える目的なら、導火線を短くすればよいし、爆発物を相応の大きさにすることは可能だったはずである。爆発物の構造からは、殺意があった認識はできず、殺意は認められない」などとして懲役3年を求めました。
木村被告は最終陳述で「多くの皆さんにご迷惑をおかけして大変申し訳なく思います」などと謝罪の弁を述べました。
判決は2月19日に言い渡されます。