2022年に大阪府堺市のマンションで、隣人男性(当時63)に暴行を加え死亡させたなどの罪に問われ、1審で懲役12年を言い渡された元ボクシング練習生の男(35)。判決を不服として控訴していましたが、その後控訴を取り下げ、判決が確定していたことが分かりました。
▼折れた肋骨が肺に刺さり…隣人の63歳男性が死亡
判決によりますと、男(35)は2022年11月、堺市中区の自宅マンションで、隣の部屋に住む男性(当時63)に暴行を加え、肋骨多発骨折による両側気胸で死亡させました。
法廷での医師の証言によれば、遺体は肋骨が20か所以上で完全に折れていて、折れた骨が刺さり、肺に穴が開いたとみられています。
加えて男は、死亡に至った暴行の約1か月前から、拳で腹部を殴るなどの暴力を複数回、被害男性に振るっていました。
ボクシング練習生だった男「6割程度の力で殴った。まさかお亡くなりになるとは…」
堺拘置支所
男は去年5月の初公判で、常習的な暴行は認めたものの、「人が死ぬような力を加えて殴ったことはない」と、傷害致死罪の成立を争う姿勢を見せました。
しかしその後の公判では、最終陳述で「自分は男性を亡くならせてしまったことを頭に入れて、一生背負っていかなければと思っています」と述べるなど、暴行と死亡の因果関係を認めるような供述を展開しました。
公判での男の供述によれば、男は週3、4回の頻度でボクシングジムに通い、プロテストを受ける予定もあったといいます。
判決前の記者との面会では、男は「亡くならせるつもりで殴ったつもりはないですし、6割程度の力で殴った。まさか亡くなるとは思っていなかった。自分がやってしまったことで亡くなったのかなと、今となっては思う」と述べていました。
▼男と被害男性は生活保護費を受給 区役所職員らは暴行を目撃も通報せず… 金銭搾取も“黙認”
事件をめぐっては、男と被害男性がいずれも生活保護を受けていた中で、男が男性を金づるのように扱っていたことも判明。
さらに、堺市中区役所の生活保護担当職員らが、暴行や金銭搾取を“黙認”していたことも問題となりました。
堺市の検証委員会の報告書や、公判での証人尋問によれば、当時の係長やケースワーカーと被害男性との面談に、男が同席することが常態化。マンションや区役所などでの男の暴行を、係長やケースワーカーも目撃していたにもかかわらず、注意するだけにとどまり、警察へ通報しませんでした。
さらに職員らは、男の被害男性への金銭の要求を制止することもありませんでした。係長とケースワーカーが、ファミリーレストランで生活保護費を被害男性に手渡し、男性がその半分以上を、同席していた男にその場で手渡したケースもあったといいます。
▼「交通事故や高所からの転落に比肩するような強い暴行を多数回加えた」1審は懲役12年判決 男本人が控訴
大阪地裁堺支部(藤原美弥子裁判長)は去年6月の判決で、暴行罪や傷害致死罪の成立を認定したうえで、「ボクシングの練習生でありながら、根拠のとぼしい理由で金銭を請求する中で、落ち度のない男性のささいな言動にイライラするなどといった理由で常習的に暴行を加えており、身勝手かつ理不尽」と指弾。
「傷害致死に至っては、交通事故や高所からの転落に比肩するような強い暴行を多数回加えており、極めて悪質な犯行」として、男に懲役12年を言い渡しました。
男は、判決前の記者との面会では「よほどのことがない限り控訴するつもりはない」と語っていたものの、判決を不服として、自ら大阪高裁に控訴していました。
▼控訴から約4か月後に「控訴取り下げ」で判決確定
関係者によりますと、男がその後、去年10月1日に控訴を取り下げ、懲役12年の1審判決が確定したということです。
(松本陸)