保育施設で生後5か月の女の子が窒息死した事故。田辺市の職員が、遺族と面会しました。
2月22日、2歳を迎えるはずだった柴尾心都ちゃん。3人の兄たちが仏壇を囲み、誕生日を祝います。そこに妹の姿はありません。
(心都ちゃんの母親・心さん)「(Qお供えのお菓子がお姉さん用になりましたね?)仏壇に置く分は年齢に合わせて買ってます。自分たちの中では生きていると思っているので」
おととし7月、生後5か月だった心都ちゃんは、田辺市の認可外保育施設「託児所めぐみ」で、ベビーベッドの上でうつぶせになりぐったりした状態で見つかり、亡くなりました。
この日、施設には心都ちゃんを含む0歳から6歳の子ども4人が預けられていましたが、施設の代表を務める女性保育士は国の基準に反して、1人で見ていたのです。
事故後、母親が施設を訪れた際には…
(母親)「本当は(保育従事者が)2人いないといけないけど、1人で見ていることがあった?」
(代表の女性保育士)「うん、うん、はい。そういう(1人で見る)ことは正直ありました」
女性保育士は県の聞き取りなどに対し、「長年の経験もあり1人で預かれると思っていた」と話していたということで、2月に業務上過失致死の疑いで書類送検されました。
ただ、問題は行政側にもありました。事故検証委員会によりますと、2013年から3年連続で保育従事者の数が基準を満たしていないとして、市は「託児所めぐみ」に基準を守るよう指導していましたが、保育体制が改善されたかどうか、施設に出向いて確認していない可能性が高いというのです。
また、これ以降の調査でも、出勤状況は口頭で聞き取るのみでシフト表などは確認しておらず、代表の保育士しかいない状態が常態化していることに、市は気付いていませんでした。
3月9日、検証委員会の結果を受けて、田辺市の職員が遺族の自宅を訪ねてきました。
(田辺市保健福祉部・馬場崎栄部長)「報告書の中にもありました、問題点や課題、提言につきましては市において大変厳しい内容であったことを真摯に受け止めています」
職員は認可外保育施設の指導・監督方法を見直し、再発防止を徹底すると説明しました。しかし、遺族は納得でききません。
(心都ちゃんの父親・隆幸さん)「(田辺市側の)処分とかは別にないわけですか、保育士は書類送検されていて罪には問われるわけで」
(田辺市子育て推進課・吹揚恒夫課長)「そういった処分につきましては、庁内で協議ということになりますので」
職員の訪問を受けて遺族は…
(心都ちゃんの母親・心さん)「目の前に仏壇があるのに見ていないかのような雰囲気で通りすぎていたので、手を合わせろとかはないんですけど、ひとつでも触れてくれたらよかったのになと」
(心都ちゃんの父親・隆幸さん)「亡くなったから変えていこうじゃやっぱり遅いと思うんですよ」
ずさんな保育を見過ごした市の職員たち。心都ちゃんが家族のもとに戻ってくることはありません。