『相互関税』を発動することを表明したアメリカのトランプ大統領。日本に対しては24%の関税を課すとしています。さらに、日本時間の4月3日、輸入車に対し25%の追加関税を発動しました。

 日本の景気、私たちの日々の暮らしにどのような影響が出るのか。そもそも相互関税とは?りそな総合研究所・荒木秀之主席研究員や、第一生命経済研究所・永濱利廣首席エコノミストら専門家の見解を交えて解説します。

「想定以上に厳しい」専門家も驚き…24%の関税

 相互関税とは、貿易相手国と“同じ水準”を課税することです。トランプ大統領は「日本はアメリカの輸出品に46%相当の関税をかけている」と主張していて、4月9日から日本にも24%の関税を課すと表明しました。

 この発表に、りそな総合研究所・荒木秀之主席研究員は「予想外で驚いた」、第一生命経済研究所・永濱利廣首席エコノミストは「想定以上に厳しい。株価が急落」と、後ろ向きな反応を示しています。

 日本に対して主張する「46%相当の関税」がどのように算出されたかは不明ですが、複合的に判断してアメリカがその程度“損している”とトランプ大統領は主張しています。

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 この相互関税、アメリカは日本だけでなく世界中に発動を表明しています。

 【各国の相互関税】
 日本    24%
 中国    34%
 EU    20%
 スイス   31%
 インド   26%
 韓国    25%
 カンボジア 49%
 ベトナム  46%

 各国の相互関税を見ると、カンボジアとベトナムへの税率が他よりも一段と高いことがわかります。トランプ政権高官によりますと、中国企業が関税を回避するために中国の商品をカンボジアとベトナムを経由してアメリカに輸出していて、それを止めるためだということです。

「日本の景気回復に影響」輸入車に25%の関税上乗せ…トラックは50%に

 トランプ大統領は相互関税のほかにも、輸入車に対する25%の追加関税を4月3日に発動しました。アメリカに輸入される乗用車はこれまで2.5%の関税がかけられていましたが、これに25%が上乗せされて27.5%に。さらに、トラックはこれまで25%の関税がかけられていましたが、上乗せにより50%の関税がかけられることになります。

 日本はアメリカに年間約138万台の自動車を輸出していて、輸出額は6兆264億円(2024年・財務省より)。この金額は、アメリカへの全輸出額の3分の1にあたります。

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 さらに自動車産業は、自動車メーカーだけではなく、部品メーカー・半導体・素材などが関わっていて、日本での就業者は約550万人と言われています(日本自動車工業会HPより)。

 そのため、「裾野の広い自動車産業の輸出が低迷すれば日本の景気回復にも影響が出る」と永濱首席エコノミストは指摘しています。また、野村総合研究所・木内登英エグゼクティブ・エコノミストの試算では、「相互関税や自動車関税の影響が日本のGDPを0.7%・約4兆円押し下げる」ということです。

トランプ大統領の狙いは?交渉の余地は?

 なぜこんなにも高い関税をかけるのか。トランプ大統領が主張する狙いには、次のようなものがあるとみられます。

 ■国内産業を復活させ、アメリカにおける雇用を増やす
 ■歳入(入ってくるお金)を増やす
 ■貿易赤字を減らす

 アメリカの商務省は、2024年のアメリカの貿易赤字は185兆円と過去最大を更新し、日本との貿易赤字は約10兆円だと主張しています。

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 一方、過去にはこんなことも。2019年、当時の安倍政権が日米貿易協定に合意しました。日本は、アメリカが求めていた牛肉・豚肉の関税を引き下げ、ワインの関税を最終的にゼロとするなど大幅に譲歩しました。これに対しアメリカは、日本が求めていた自動車と自動車部品の関税撤廃を「ノー」と言わず先送りにしました。

 このときの対応を見ると、今回の相互関税も交渉の余地があるのか?という見方もありますが、荒木主席研究員は「そもそも、日本の相互関税『24%』がどのように叩き出された数字なのか不透明」だといいます。その上で、「今後、輸入制限の緩和や、日本側は譲歩などして交渉する余地はある。しかし、交渉のスタートラインに立てるかどうかも…?」と首をかしげています。

“トランプ関税”で想定されることは?

 では、私たちの暮らしにはどのような影響があるのでしょうか。

 関税引き上げにより、アメリカは物価高になる可能性が非常に高いです。するとアメリカ株が下がり、世界株も下がる可能性があります。

 また、アメリカ国内の景気が一時的に悪くなった場合、円高傾向になるという見方も(4月3日午後4時:1ドル146円)。円高になれば、関西のインバウンドが減ってしまうおそれがあります。一方で、アメリカへ旅行しやすくなるかもしれません。

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 値上がりしそうな商品として、医薬品や、アメリカ企業のスーパー「コストコ」などの商品が挙げられます。一方で円高が進めば、逆に安くなる可能性もあり、為替がどう動くかによって影響は変わりそうです。

 また、関税が高くなることで諸外国がアメリカの輸出を減らすと、アメリカ以外への国への輸出が増え、日本への輸出も増えるかもしれません。そうすれば、輸入に頼っている小麦などの食料品や、石油・ガスなどのエネルギー関連が下がる可能性も。ただ、このあたりもどうなるかは不透明のため、今後の動きに注目が必要です。