猪野学さんインタビュー


パート1、2と禅寺修行に行かれ、すっかり雲水役が板についた猪野さん。今回の役作りで気を使ったのは精神面だとか。パート3についてお伺いしました。

―もうすっかり陽春さんですね。
「作法や所作はともかく、パート3では精神面を作るのに苦労しました。修行僧と人間・陽春をどう演じ分けるのか、修行中でありながら、恋してしまうのは何故か?答えを見つけるのに、禅の関係の本とかをずいぶん、読みましたね。禅の教えの中に無≠ニいう境地があります。何事にもとらわれてはいけないと。だから固執せずに演じてみようと思いました」

―その髪型(?)にも慣れられました?
「パート3では『またか』って感じでした。最初の時は『どんな顔になるのか』想像がつかなくて。ベロベロに酔って、剃ったらしくて、朝起きたら『自分で剃髪してた』って感じです。パート2の時は余裕が出てきて、みんなを集めて『剃髪式』。真ん中だけ剃ってみて『落武者〜』とか(笑)。パート3の時は一人で剃りました。

―今回はロケでも「陽春さんを一目見たい」という主婦の方がかなりいらっしゃいました。
普段、歩いていて声をかけられることは?

「ありますねー。普段もお坊さんを見る目で見られたりします。合コンの時なんか『お坊さん(=陽春さん)』だとバレると会話が弾まなくなったり。でも僕自身はそんな尊い存在じゃないんで…(笑)。ファンレターでも人生相談のようなものが多いですね。『陽春さんをみて励まされました』とか『がんばって生きていきます』とか。

―街で声をかけられたときはどのようにお返事なさるんですか?
「ニッコリ笑って、合掌。それだけです」

―小田さんとは2年あまり一緒なのにあまり会話がないとか。
「そうなんです。役作りのため、私語は慎むようにと監督から言われているので、あんまり話をすることもなくて…」

―最近ハマってしまったことは?
「この役をやっていて、絶対、家で座禅を組むのだけはやめようと思っていましたが、ちょっと仕事で悩んでいる時に、やっちゃいました。今の世の中、スピード速いじゃないですか。そのスピードで生きていても何にもないぞ、と。やってみると座禅って、すごく素敵な時間なんですよ。風を感じたり、虫の声が聞こえてきたり…秋って座禅にいい季節なんですよね〜」

―ほかには?
「週末にはジムに通っています。本格的なトレーナーの方についてもらって、肉体改造を図っています。筋肉って柔らかくないとだめなんですが、撮影でスタジオに入っているとどうしても筋肉が硬くなってしまって。それをほぐしています。脱いだらけっこう(筋肉が)あるんですよ(笑)」

―パート3のこれからの見どころを教えてください。
「陽春はどこか悲しい影を背負っている男だと思っていましたが、終盤に彼の過去が出てきます。初めてお坊さんじゃない陽春が見られるところが見どころじゃないでしょうか?」

―最後に「ピュア」なところを教えてください。
「ないなー(笑)。(横でプロデューサーも同意)実家(三重)から車で1時間半くらい行ったところに、みそぎの滝というのがあるんです。禅宗とは違って修験道の霊場で。そこに行ったら吐き気がするくらい浄化されますね。いつも実家に帰ると行くんです。近畿最古の川上八幡神社があるんですが、そこにお参りして、自分の持てる力が出せますように、欲を出しすぎず、力がだせますように、と。小さいころから自然の中で育ってきたので、自然に対してはピュアになれる気がします」

―季節では秋がお好きだとか。
「好きですね。鈴虫が鳴いて、金木犀が香ってきて。人間の身体にとっても一番調子がいいのは秋だというのを聞いたことがあります。今年も秋を迎えられて良かった〜また来年も秋を迎えるために節制するぞ〜って。思うだけですけど(笑)」

最初は陽春役の静かさ、動きのなさに戸惑い、ストレスがたまったという猪野さん。パート3ではもう本当に「そのもの」になられました。これからきっと「静と動」をあわせ持った役者さんとして飛躍されることでしょう。