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築47年の聖地に2度目の危機?『パラリンピアン多数輩出』『障がい者スポーツの礎を築いた』大阪施設で建て替えか廃止か議論

特盛!憤マン

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東京パラリンピックが開催されていますが、大阪に『障がい者スポーツの礎を築いた』ともいわれる施設があります。この施設は大阪府民で障がいのある方は誰でも無料で利用できます。しかし、施設の壁にはヒビが入るなど老朽化が進んでいて、施設を管理する大阪市は「建て替える」方針ですが、「廃止」することも含めて検討されています。利用者からは不安の声が上がっています。

パラリンピアンの“聖地”といわれる施設

8月15日、東京パラリンピックの聖火の種火となる採火式が「大阪市長居障がい者スポーツセンター」で行われました。ここは、1974年に開館した日本初の障がい者専用のスポーツ施設で、多くのパラリンピアンを輩出してきた聖地としても知られています。

8月24日から開幕した東京パラリンピックでも、陸上5000mで銅メダルを獲得した和田伸也選手や、車いすバスケでキャプテンを務める網本麻里選手らが練習などで利用しています。
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長居障がい者スポーツセンターでは、利用しやすいように設計された体育室やプール、ボウリング室なども備えていて、大阪府内に住む障がい者は誰でも無料で利用できます。
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(ビームライフルの利用者)
「見学に来たら、みんな楽しそうにやっていたので、それから少し元気が出て、私にとってはかけがえのない場所です」
(ボッチャの利用者)
「いろんな障がい者の方とか、スポーツ以外のところでも日常生活の先輩もいるので、情報交換の場にもなっている」

雨漏りなど施設の老朽化が深刻…「廃止」の議論も

毎年30万人以上(コロナ以前)が利用している施設ですが、今、深刻な問題を抱えています。

(長居障がい者スポーツセンター 中島進館長)
「天井を見ていただきたいのですが、白くなっているところがありますけれども、雨の水が天井ボードに溜まって、これが落下した」
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施設は築47年。大雨による天井の落下や、体育室も雨漏りのためにブルーシートなどが張られています。

(長居障がい者スポーツセンター 中島進館長)
「大阪市と相談して、壁とかきれいに改修して、できるだけご不便かけないようにしているけれども、約50年前の施設なのであちらこちら老朽化というか不具合は生じています」
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建て替えのために見込まれる費用は約44億円。大阪市は「施設の建て替え」を基本方針として新たなコンセプトを策定するため今年度1500万円の予算を計上しています。しかし、今年3月の大阪市議会では…。

(藤岡寛和市議 今年3月の大阪市議会)
「現在の在り方が最適なのかも含めて検討が必要と考えます。本当に2館体制が必要なのかをしっかり見極める必要がある」

大阪市が管理する障がい者スポーツ施設は、長居障がい者スポーツセンターと舞洲障がい者スポーツセンターの2か所があり、老朽化が進む長居の施設について「建て替え」以外の「廃止」という選択肢も含めて議論すべきだ、という意見が出されました。

長居の施設を巡っては、9年前の2012年にも当時の橋下徹大阪市長の大号令の下で事業の見直しが進められた際に、一時存続が危ぶまれました。しかし、当時は担当部局や利用者からの反発を受けて、結論は先送りとなりました。

「元気になれた」「友達ができた」存続を望む利用者

そして今回、再び持ち上がった「存続」か「廃止」かの議論。長居障がい者スポーツセンターでは、今年6月から大阪市が利用実態についてのアンケート調査を行っていますが、利用者からは不安の声が上がっています。大阪市内に住む田邉倶子さん(82)は長居のスポーツセンターに40年近く通っています。

(利用者 田邉倶子さん)
「えらいことですもん、なくなったら。ここほどいいところないですよ。楽しいから。病気もっていても来られるんですよ。(Q舞洲には行かないのですか?)行きますよ、電車で。でも片道で1時間40分かかるから。新型コロナウイルスで余計に行きにくいですね」

田邉さんは11歳の時に骨の中に細菌が感染して起こる骨髄炎を発症したのがきっかけで左足の成長が止まってしまいました。左足は右足より12cm短いといい、左足の靴にはインソールが入っています。田邉さんはリハビリも兼ねて通い始め、今でも週4日、自宅から15分かけて専用の三輪車で通っています。
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施設は同じ障がい者たちとの交流の場にもなっています。

(視覚障がい者 北川文枝さん)
「ここへ来たらいろんな人とお友だちになれる。助けてもらってね」
(田邉倶子さん)
「みんな障がいがあるから優しいですよ。ここに来たおかげで元気やもんな」

長居障がい者スポーツセンターでは、各競技の専門の指導員の下で競技者として技術を高める人もいれば、健康の維持や自立、社会への参加を目指す人もいます。

田邊さんはここで20年近くビームライフル競技に打ち込んでいます。

(田邉倶子さん)
「全部センターで揃えてくださったんですもん。私が健康になったのはここのおかげ。お友だちもたくさんできたし。存続で置いていてほしいですね」

松井市長は“存続意向”示すが具体的な方針は未定

長居の施設について、大阪市ではどのような議論が行われているのでしょうか、大阪市の担当者に聞きました。

(大阪市福祉局障がい者施策部 大谷省吾課長)
「例えばほかのところに移転したりもしくは統合したり、というようなことも選択肢としてはあるのかなと思います。(長居と舞洲の)片一方だけとかは、なかなかみなさんのニーズに応えきれないんじゃないかというふうには思っています。大阪市としての意思決定をするとなると当然市長になってくると思います」

大阪市の松井一郎市長にも聞きました。

(大阪市 松井一郎市長 今年7月7日)
「改修レベルでは維持できませんから。しっかり建て替えたいと思っています。ただ、建て替えるにあたって、できるだけ経費がかからないかたちを作っていきたいというのが、我々も僕も同じ思いです」

松井市長は存続させる意向を示していますが具体的な方針などは決まっていません。日本のパラスポーツの礎を築いたともいえる施設。利用者たちは施設の規模を維持した上での存続を願っています。

(8月30日放送 MBSテレビ「よんチャンTV」内『憤マン』より)

2021年08月31日(火)現在の情報です

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