2023年07月28日(金)公開
幼少期に性被害「ずっと自分を殺したかった」加害繰り返した男性「反抗しない子どもに...」当事者たちの証言【MBSドキュメンタリー映像'23】 国内
編集部セレクト
子どもの性被害は、その後の人生に大きな影響を与える。12歳以下の子どもへの性犯罪の認知件数は年間約1000件。被害者と加害者の証言から小児性犯罪を無くす手立てはないのか考える。幼少期に友人の父親から性被害にあった女性、そして何人もの子どもに性加害をした男性がMBSドキュメンタリー映像‘23「小児性犯罪~当事者たちの証言~」の取材に実名で語った。
友人の父親から性被害にあった女性「ずっと自分を殺したいと思ってきた」
「私はずっと自分を殺したいと思ってきました」
そう話すのは大阪府に住む柳谷和美さん(55)。
和美さんが性被害にあったのは5歳のとき。加害者は隣の家に住む友人の父親だった。家に遊びに行くと友人は外出していて、「お医者さんごっこをしよう」と声をかけられた。
(柳谷和美さん)
「本当に遊びと思っているから、『全部脱いで』って言われて全部脱いで。自分で二段ベッドに上がっていって寝て、『じゃあ今から診察しますね』と目隠しをされて、そこから体の感覚だけですよね」
「心から信頼できる人はいなかった」
受けた行為の意味を理解したのは中学生のとき。自分の体を汚いと思い、自傷行為がやめられなくなった。普段から子どもに暴力を振るう父親や、世間体を気にする母親には一度も相談できなかった。
(柳谷和美さん)
「心から信頼できる人は誰もいなかったし、孤独でしたね。自分の体は汚れてしまって、もう取り返しがつかないと思っていました。お風呂に入るときに服を脱いだら気持ち悪くなって吐いていました。周りに知られたら『気持ち悪い』と言われると思って、誰にも相談できませんでした」
「自分みたいな思いをする子どもを無くしたい」
誰にも言えなかった自分の過去を話せるようになるまで30年以上かかったという。これまで警察や学校など200回以上の講演会に呼ばれてきた。思い出したくない過去を話すことで、今でも高熱が出て体調を崩す時もある。それでも経験を語る理由は…。
(柳谷和美さん)
「私が受けた被害のように子どもの性被害は可愛がりとか遊びの延長にあり、子どもは被害という認識がない。子どもをだまして加害をする卑怯な犯行です。助けてと言えなくて、被害にあっている子どもはたくさんいると思います。自分みたいな思いをする子どもを無くしたい。そして、子どもの性被害がその後の人生にどれほど影響を与えるかを知ってほしいです」
子どもへの性暴力を繰り返すのはどのような人物なのか。過去に性加害を行った男性が取材に応じた。
性加害を繰り返した男性「加害をしても反抗しない相手に…」
東京都に住む加藤孝さん(60)は、これまで10人以上の子どもに性加害をした過去がある。加藤さんは子どもを性の対象とする精神疾患「ペドフィリア」(小児性愛障害)と診断されている。家庭教師をしていた加藤さんは、強い立場の大人が子どもに性加害を行うのは容易いと話す。今、問題になっているジャニーズ事務所の創業者による性加害の構図も同じだと指摘する。
(加藤孝さん)
「地位を利用した非常に卑劣なものだと思います。僕自身も同じような立場で子どもに性加害をしてしまったことがあります。僕が加害を考える相手は加害をしてしまっても反抗しないだろうと考える相手でした。僕の加害のパターンは2つあります。ひとつは、相手も気持ちいいだろうし、別にいいじゃないかと。もうひとつは、自分が自暴自棄になって結果がどうなってもいいから加害したいと」
「被害者の人生をひどいかたちで破壊した」
加藤さんは38歳のときに小学生の児童に対する強制わいせつ未遂の罪で起訴された。「このままでは子どもの命を奪いかねない」と感じ交番に自首したのがきっかけだった。その後、懲役2年、保護観察付きの執行猶予4年の有罪判決を受けた。
(加藤孝さん)
「被害者の人生をひどいかたちで破壊してしまったと思います。本当に取り返しがつかない傷、長く長く続いてしまう傷を与えてしまって本当に心から申し訳ないことをしたと思っています」
ペドフィリアの治療に取り組み「変われることを自分の姿通して伝えたい」
逮捕されたあと、弁護士を通じてペドフィリアの治療のことを知ったという。今は週1回、精神科に通院。ほかにも性依存症の自助グループのミーティングに参加したり、心理カウンセリングを受けたりして、治療に取り組んでいる。これまで23年間、加害行為はしていない。実名で取材を受ける理由をこう語った。
(加藤孝さん)
「治療によって加害への衝動は抑えられます。子どもに性加害をしている人やしてしまいそうな人に対して、加害をしないよう変われることを自分の姿を通して伝えたいです。病気だから仕方がないということは絶対にない。それが病気であっても、加害を繰り返さず、変わっていく責任が私にはあります」
(映像‘23「小児性犯罪~当事者たちの証言~」ディレクター 吉川元基)
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