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男性介護者たちの苦悩「家族に頼りたいが...」 介護疲れで「自分も死んで妻も...」危険な考えに至るケースも 孤独な介護生活を救ったのは当事者同士の『集いの場』

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 家族の介護について誰にも相談できず1人で抱えこんでしまう男性介護者は多いといいます。こうした男性介護者の落とし穴は「危険な思い込み」。そんな中、孤独な介護生活を送っていた男性は、“苦悩”を打ち明けることができる「集いの場」に救われたということです。介護の悩みを取り除くヒントとは…。

妻が認知症に…在宅介護する夫の悩みは『相談できる人がいない』

 滋賀県湖南市に住む木田博隆さん(80)。週3回、自宅で介護する妻の千代子さん(82)は、アルツハイマー型認知症です。

 (木田博隆さん)「次、なに食べる?これ回してあげるわ、ターンテーブルや」

 千代子さんは自分で食事ができますが、むせやすいため博隆さんがつきっきり。約1時間かけて食事補助をしたあとに、ようやく自分のご飯です。
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 京都で出会った2人は20代で結婚し、二人三脚で繊維関係の会社を営んできました。そんなある日…

 (木田博隆さん)「(千代子さんが)物忘れが進んできたような気がするので病院に連れていってくれないかと」

 2014年、千代子さんはアルツハイマー型認知症と診断されたのです。
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 徐々に症状が悪化する妻への想いを、博隆さんは当時の日記にこう記しています。

 (当時の日記より)「自分の名前が書けなくなった。物を元の所に返さない。これからどうなるかわからない」
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 特に博隆さんが困ったのが「相談できる人がいない」ということでした。

 (木田博隆さん)「家族に頼りたいんですけれども、(孫は)学生の身でもあるしね、(娘は)旦那の会社が忙しいからね、なかなか」

 その結果、高齢の博隆さんが1人で千代子さんの介護を続けてきました。
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 博隆さんのように家で家族を介護する「男性介護者」は、今や在宅介護者の3割を超えています。一方で、介護の果てに虐待したり夫が妻を殺害したりするという悲惨な事件が後を絶ちません。事件の背景には、誰にも相談できず1人で抱えこんでしまう男性介護者が多い現状があるのです。

男性介護者の集い「中北の家」 近況報告や介護の情報交換

 孤独な介護生活だった博隆さんを救ったものがあります。男性介護者の集い「中北の家」。近況報告や介護の情報交換、男性ならではの悩みを打ち明ける場で、博隆さんも知人に誘われて参加するようになりました。
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 (参加者)「私と(妻と)2人暮らしなのに『子どもどこいった?』と。『2階にいてるんとちゃう?まだ寝ていたら起こしてきいや』と」
 (参加者)「アルツハイマー病の典型的な例やね」
 (参加者)「勉強不足やね」

 参加者は自分の介護経験を生かしながら、アドバイスをしたり共感しあったりします。
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 (木田博隆さん)「男は男なりにざっくばらんにしゃべれる、それがいいかなと思います。いろんな先輩の話を聞くと、みんなそれぞれ同じような介護を経験してきているから、こういう時はこうすればいいとみんな言ってはったなあと。中北の家に行ってからだいぶん人生が変わりましたね」

『わしも死んで妻も殺してしまおうと…』介護疲れの末の「危険な思い込み」

 「中北の家」に救われたと話す男性はほかにもいます。滋賀県大津市内に住む梅本高男さん(81)。
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 (梅本高男さん)「これは鳥取の砂丘で撮った写真ですね。(Q退職後の2人の思い出旅行?)そうそう。それまでは家内と旅行したことはなかったんとちゃうかな。四国に行った時に行方不明になって、次の年に認知症と診断されたんです」

 会社員時代、家のことは任せっきりだったという負い目から、妻・安子さんの面倒は「死ぬまで自分がみる」と決意して介護生活が始まりました。しかし、苦労の連続だったといいます。

 (梅本高男さん)「(Q男性故に大変だったことは?)食事をつくること。つくったことがなかった。飯、お茶、新聞~という感じだったからね」
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 日常作業に加えて、安子さんの徘徊や失禁の世話で毎晩寝不足状態に。それでも、介護がどんなに辛くても周りには頼れませんでした。

 (梅本高男さん)「最初は隠しに隠しましたもん、うちの家内がこんなことになったというのは。(Qなぜ隠す?)プライドかな。病気を他人に言えるかって」
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 介護生活が5年目になろうとした時、精神的にも肉体的にも限界に。そんなある日…

 (梅本高男さん)「『あんた誰や、なんでここにいてるんや、ここは私の家や、すぐ出ていけ!』と言われたんです。そのとき、僕は介護疲れで頭がはじけそうに爆発しそうになっていましたからね、『なに言ってるんや!この家はわしが汗水たらして働いた金で建てた家や』と。このやり取りが2日くらい続いたかな。その時に、こんなしんどい思いをするんだったらわしも死んで妻を殺してしまおうと思ったんや、一瞬ね。そうした時に気が付いてよかったんよ」
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 ようやく、外に助けを求めた梅本さん。ケアマネジャーの紹介で男性介護者の集いの存在を知りました。

 (梅本高男さん)「行ってよかったなあと思ってね。そこで助かりましたね。話を聞いてもらうだけでもずいぶん違う」

 その後、介護を1人で抱え込むのではなく安子さんを施設に預ける決断をしました。今は面会に行きながら日々を過ごしています。

“1人で抱え込まず家族に頼ることの大事さ” 木田さんの娘や孫も介護の手伝いに

 週に3度の在宅介護を続ける木田博隆さん。しかし、千代子さんとずっと2人っきりという訳ではありません。土曜日になると娘の伊久美さん(54)や、孫の智佳恵シェリルさん(21)と和紗クリスティンさん(24)が交代で介護の手伝いに来ているのです。
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 (娘・伊久美さん)「おはよ~!起きた?」
 (孫・和紗クリスティンさん)「おばあちゃん、歯を磨くよ」
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 口をゆすげない千代子さんのために歯を1本ずつシートで拭い、おむつ交換や食事の補助も行います。家族総動員で介護するようになったのは、去年、博隆さんが「介護を手伝ってほしい」と打ち明けたからです。

 (娘・伊久美さん)「『自分だけでは無理かな』と、やっとちらっと言ってくれた。父1人の責任にしていた介護に目を向けないといけないなという覚悟ができました」
 (孫・智佳恵シェリルさん)「私はここに来たら大好きなおばちゃんに会えるから来ているみたいな感じです」

 「中北の家」の存在は博隆さんに「1人で抱え込まず家族に頼ることの大事さ」を教えてくれました。

 (木田博隆さん)「誰にも頼らずにやっていたら、私自身はなんぼのんき者ですけど、それでも多少、体は崩していると思います。だから、そういうことに関してはよかったなあと思うけどね」

 介護人口が増えるなか、必要性が増す「介護する側への支援」。介護者たちが相談しやすい環境づくりが求められています。

2023年09月11日(月)現在の情報です

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