2024年07月24日(水)公開
変幻自在の食材『ニンジャペースト』コンニャク技術で高級食材「ウニ」誕生!?ベンチャー開発のきっかけは「糖尿病のおばあちゃんの食事制限」
編集部セレクト
日本の伝統食材、こんにゃくから高級食材の「ウニ」が誕生する!?兵庫のベンチャー企業が挑む“世界の食を変える取り組み”。変幻自在の『ニンジャペースト』の開発現場を取材しました。
兵庫のベンチャー企業が開発した『次世代食材』
6月、東京で開催された世界最大級の食の関連イベント「FOOMA JAPAN」。その一角にあるスタートアップのエリアで、健康志向を追い風にした次世代の食材が関心を集めていました。
(来場者)「おもしろくて、これイケると思いました」
(来場者)「すごく関心高くて、カロリーゼロや食物繊維ということで結構チャンスあるんじゃないかな」
それが『ニンジャペースト』。低糖質・低カロリーでいろんな食材の代用品になるといいます。
開発したのは兵庫県のベンチャー企業「シデカス」の寄玉昌宏さん(39)です。
(シデカス 寄玉昌宏さん)「カロリーとか糖質が全然ない、食品用の接着剤。例えばナッツバー。普通、ナッツを固めたお菓子は、水あめとか小麦とかチョコレートで固めるんですが、それらを使わずに食物繊維の力だけでナッツを固めている」
チョコレートなどの代わりに使うことで低カロリー。さらに夏場でも溶けずベタつきません。ほかにも唐揚げの衣やハンバーグのつなぎなど、さまざまな用途に活用できるといいます。
開発のきっかけは「糖尿病のおばあちゃん」
兵庫県宍粟市。山あいの食品工場でニンジャペーストは製造されています。その原料はコンニャクイモ。低糖質・低カロリーのワケは、ヘルシー食材として知られるコンニャクとほぼ同じ製法で作られているからです。
コンニャクと違うのは、例えば加熱して固める工程です。
(シデカス 寄玉昌宏さん)「めちゃくちゃ熱い温度で加熱すると普通にコンニャクができあがります。『おいしいのができました』という感じになる。(Qギリギリの温度で止めている?)そうそう、だから温度は(公開)ダメです」
お湯の温度を管理することで固まりきらないペースト状の特殊な性質を引き出します。“微妙な温度”は企業秘密です。
大企業を辞め30歳で会社を立ちあげた寄玉さん。ニンジャペーストを開発するきっかけになったのが…
(シデカス 寄玉昌宏さん)「おばあちゃんが糖尿病で血糖値が高くて、甘いものがすごく好きだったんですけどなかなか食べられない。好きなものを食べるのは、それ自体が生きる活力になるのかなと思うので、それがないと楽しくなさそうだなとおばあちゃんを見ていて感じましたね」
食事制限があっても好きなものが食べられる世の中にしたい。そう願って日々、いろいろな食材への活用方法を探ります。
商品価値が低くなった『ウニ』をコンニャクで再生!?
いま力を入れているのが、高級食材のウニ。
(シデカス 寄玉昌宏さん)「未来のウニです。ウニ3:コンニャク7くらいです。商品価値がなくなってしまったようなウニのペーストを、コンニャクの食物繊維の技術で再成型する。ウニって基本、火を通すとパサパサになっておいしくないんですけど、それをおいしくできる」
型崩れなどで商品価値が低いウニにニンジャペーストを混ぜて形を整えることで、新たな食べ方を提案しようというのです。ウニらしさは忠実に再現しつつ、より使いやすい食材になるよう工夫を凝らします。
(シデカス・開発責任者 松本裕文さん)「のりの微粉末を加える。これで磯感を演出する。本当に実験です。食品の開発も普通の実験と同じで仮説の検証だと思っているので」
3Dプリンターで作った実際のウニの型を使い、見た目も追求します。
冷凍庫で凍らせて形を安定させれば完成です。なかなかリアルな出来栄え。『みらいウニ』と名づけました。
食感が「高野豆腐みたい」という意見が
今年5月、一般の人を招いての試食会が行われました。率直な意見を聞くことで商品化に向けた課題を洗い出します。
(参加者)「ウニの味が残る感じがあるんですよね。本物の味みたいな」
(参加者)「海外向けにはいいと思います。でも日本人には…私はないかなって」
味の評価は人それぞれ。でも気になったのが…
(参加者)「もうちょっと食感をなめらかにした方がウニっぽくなると思うんですよね」
(参加者)「高野豆腐のイメージやね」
(参加者)「あ、そんな感じ」
高野豆腐?食感がウニとは異なったようです。
(シデカス 寄玉昌宏さん)「ウニのテクスチャー(質感)って難しくて、食物繊維感を残すかトロっとさせるかのさじ加減が難しいんですけど大丈夫です。全然いけます」
商品化には避けて通れない食感の改善。ペーストの量などを調整して試作を繰り返します。
(シデカス 寄玉昌宏さん)「スポンジ感ゼロです。滑らかになりました」
外食企業との商談 課題だった「食感」は?
そして7月17日、ある外食企業の担当者らが寄玉さんのもとを訪れていました。みらいウニを取り扱えないか検討しているといいます。シビアなビジネスの現場。今回は特別に、会社や個人がわからないようにするという条件で取材が許可されました。
(外食企業の担当者)「(見た目)ウニですね」
(寄玉昌宏さん)「持ったときの感触、ウニを目指していて。力を入れると崩れてしまうくらい」
さっそく、試食してもらいます。
(外食企業の担当者)「すごくいいんですけどね、未来的で。食感は…結構近いっちゃ近い感じがしますよね」
課題だった食感はクリアしました。しかし寄玉さんの表情が冴えません。
(外食企業の担当者)「味のところが、まだ期待値に届いていないなというところで。食べた瞬間に『おいしい!え、これコンニャクなの?』というリアクションを欲している」
厳しい外食の世界。さらなるレベルアップを求められました。それでも寄玉さんは一歩前進と捉えています。
(シデカス 寄玉昌宏さん)「良かったんじゃないかなと思って。食感がいいとおっしゃってくれたので。正直、味は調整がきくけど、食感がいいと言われたところで、割といけるんじゃないかなと。コンニャクの技術は日本特有、独自に進化してきた技術なので、日本代表の気持ちで世界に対して、僕らの技術も出していきたいと思っています」
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