2025年04月07日(月)公開
【万博】50年後はアンドロイドと共存!?1000年後の人間の姿は...ロボット工学の第一人者・石黒浩教授が手掛けたパビリオン『未来について考えるきっかけにしてほしい』
編集部セレクト
まもなく開幕する大阪・関西万博。ロボット工学の第一人者である大阪大学の石黒浩教授がプロデュースするのが、『いのちの未来』というパビリオンです。50年後は「アンドロイド」が人の暮らしを支えている、といった未来を描く石黒教授。その展示内容は…。1年以上にわたって取材したパビリオン完成までの舞台裏に迫ります。
石黒浩教授 アンドロイドが暮らしを支える未来を万博で描く
真っ黒な外装が存在感を放つ、パビリオン『いのちの未来』。壁には「いのちの起源」を表す水が流れています。大阪大学の石黒浩教授はロボット工学の第一人者で、このパビリオンのプロジェクトチームを率いてきました。
(大阪大学 石黒浩教授)「(水を)止めると水滴が網についてキラキラしてきれいです。きれいに流れていると思います。悪くない。建物自体は去年10月半ばに出来上がっているので見慣れた風景になっている」
MBSが取材を始めたのは約1年半前。おととし10月、京都府の山中でパビリオンの試作が行われていました。
(石黒浩教授)「(パビリオン制作を)引き受けるか考える時期がありましたが、考えている間にコロナが来て、コロナが来ても開催できるようなパビリオン、リアルもバーチャルもちゃんとやってそこにいろんな人が集まれるような仕組みを取り入れた万博ができればなと思った」
石黒教授は人間と関わる「アンドロイド」の研究が専門です。石黒教授とそっくりのアンドロイド「ジェミノイドHI-6」に記者が話しかけると…
(記者)「万博ではどんなことを伝えたいですか?」
(ジェミノイドHI-6)「万博では科学技術の進化により未来の人間の姿や社会の変化を具体的に体感してもらい、来場者に未来に向けた夢を持ってもらいたいです」
万博では様々な場面でアンドロイドが暮らしを支える50年後の社会や、1000年後の“いのち”について考えてもらえる展示をすることに決めました。
“1000年後のアンドロイドは柔らかい印象”に
去年2月、石黒教授は東京にいました。万博で使われるアンドロイドの仕上がりを確認するためです。石黒教授は眼球や舌が上下に動く様子をチェックします。
6か月間万博会場で動かすため、アンドロイドの耐久性を高めました。担当者は人間の表情や動きをどのアンドロイドでも同じように再現することに苦労したといいます。
(アンドロイドを製作した「エーラボ」 廣嶋まいさん)「3体を全く同じ動作にしなければいけないのが初めての取り組みで、例えば、口角の引き具合とかは同じ信号を送っても同じように動作するかはやってみないとわからないところがあり、3体を並べて調整したのが大変でした」
(石黒浩教授)「コンピューターのプログラムで動かせばめちゃめちゃなめらかに動きます。今度は万博のシナリオに合わせてみんなが感動できるような動きを作ることができたらと思います」
アンドロイドの動きとともに重要になってくるのが「未来の世界観」です。石黒浩教授は、プロジェクトに参加するファッションやロボットデザインの専門家らと、1000年後の人間とアンドロイドが融合した世界をパビリオンでどう表現するのか話し合います。
【話し合いの様子】
(石黒浩教授)「未来の人間って浮遊するというか重力から解放されてるっていう感じが出るので、『空の人魚』みたいな感じで思われる方がいいかなと」
(1000年後のアンドロイドの衣装担当・廣川玉枝さん)「やっぱり1000年先は柔らさの印象を与えるのが一番いいかなと。20世紀的なロボットとかアンドロイドは硬い外皮で包まれていて、柔らかい印象はまったくない」
廣川さんに今回のプロジェクトについて聞くと…
(廣川玉枝さん)「もちろんアンドロイドの服を作ったことがないので、そういった部分ではひとつの挑戦。やりがいもあるというか、今までになかったことなので自分も学びながら作っている」
パビリオンの全容が明らかに…石黒教授「未来は人間が責任を持って作っていかないと」
そして、ついにパビリオンの全容が明かされました。
(記者リポート)「パビリオンに入ってすぐのところにあるカウンターでデバイス(音声機器)を受け取って、未来の世界を体験します」
50年後、人とアンドロイドがともに暮らす社会。柔和な表情や自然なしぐさでアンドロイドが会話していて、生活に完全に溶け込んでいます。また、人間がアンドロイドになって寿命を超えて生きられるようになった世界で、アンドロイドになるかどうかを悩む姿も映像で描かれています。
そして、その先は1000年後の”いのち”を表現したエリアです。まるで浮遊するかのように上下に動くアンドロイド。足はなく、下半身は花のようなものに包まれています。これは、技術の進歩で自由に姿を選べるようになった人間をあらわしているといいます。
パビリオンを手がけた石黒教授は、ここでの体験を「未来について自分で考えるきっかけにしてほしい」と話します。
(石黒浩教授)「一つの可能性ですよね。これからの未来っていうのは人間が責任を持って作っていかないといけない。単に豊かになるとか、単に便利になるようなそんな未来ではなくて、さまざまなテクノロジーの力を手に入れた我々の責任。我々の展示をヒントにして、それぞれの来館者が未来を思い描いて作っていってもらえればと思います」
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