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琵琶湖の離島で"16歳以上の全島民対象"1回目のワクチン接種が完了 『島民6割以上が65歳以上の高齢者』"離島リスク"に備えて

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現在、国内では医療従事者と65歳以上の高齢者に対して、ワクチン接種が始まっています。ところが、滋賀県にある琵琶湖の離島・沖島では16歳以上の住民全員を対象にした1回目の接種をこの週末に終えました。なぜこの島の住民だけが優先されたのでしょうか。それには離島特有のワケがありました。

医師がいない離島でワクチン接種の準備 

琵琶湖の沖合、1.5kmに浮かぶ滋賀県近江八幡市の沖島。淡水湖では日本で唯一、人が住む離島です。人口は258人(今年3月時点)、アユ漁などが盛んで、のどかな風景が広がっています。
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4月23日、島に1そうの船が到着しました。やってきたのは近江八幡市の職員たちです。重そうな荷物を次々と運び込んでいきます。4月24日から島民に新型コロナウイルスのワクチンを接種するため、その準備でやってきたのです。指揮をとるのは近江八幡市新型コロナウイルスワクチン接種対策室の澤井保室長(53)です。

(近江八幡市新型コロナウイルスワクチン接種対策室 澤井保室長)
「(Q全部持ってきたのですか?)はい。(対岸にある)市内の接種会場は業者にお願いして準備をしてもらったんですけれども、こっちはまったくの自前なので」

政府は人口1000人未満の離島などであれば、高齢者と同時に16歳以上にもワクチンの接種を認めています。沖島は住民の6割以上が65歳以上で重症化のリスクが高いため、市は優先的に島にワクチンを配分、16歳以上の全島民が接種できることになったのです。若い世代は対岸にある市の中心部の職場や学校に通っていますが、市内では3月下旬から毎日のように感染者が確認されています。
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(沖島町自治会 森田正行会長)
「若い子はどうしても(島外へ)出て接触が多いので、新型コロナウイルスを持って帰る可能性もあるから。いったんここへ新型コロナウイルスを入れると大変なことになる」
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というのも、島内には常駐の医師がおらず島の外から訪問をしますが、それも週に1回。これまで島で感染者は確認されていませんが、感染者が出た場合、島内で十分な治療を受けることはできません。

“感染防止のため”市の職員が会場の設営も運営も担う

接種会場となる小学校。その体育館で島民のうち16歳以上である248人を対象に接種を行います。今回、会場の設営や当日の運営まで全て市の職員だけで担います。

(近江八幡市新型コロナウイルスワクチン接種対策室 澤井保室長)
「島全体が1つの大きな施設みたいなもんですから、クラスターなり新型コロナウイルスの感染を防ぎたいので、不特定多数の者が入るとそれはそれで困るので、できるだけ職員のほうが安全かなと」
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ワクチンの接種ブースは災害時に避難所で使うダンボール製のパーティションで急ごしらえです。
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椅子を並べる澤井室長ですが慣れない作業に…

(職員)「椅子が小さい」
(澤井室長)「サイズがあかんの?ちゃうの?小学生用か。なんやそれ!」

また一から並べ直しです。翌日の本番に向けて、夕方まで準備に追われました。

ワクチン接種当日

そして4月24日、接種の日。接種が始まる約2時間前に、待望のワクチンが届きました。続いて医師らも到着。

(近江八幡市新型コロナウイルスワクチン接種対策室 澤井保室長)
「皆さん長い間待っていただいて、少しでも安心していただけると」
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体調不良に備え、そばには消防の救急艇も待機しています。島民も接種会場に次々と集まり、午後2時、ワクチン接種が始まりました。
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(ワクチン接種の様子)
「ちょっとちくっとしますね。手の先しびれませんか?はい。もうこれでおしまいです」

澤井室長も接種がスムーズに進むように誘導します。

【島民を誘導する澤井室長】
(澤井室長)「つえで行けますか?ほんなら荷物、こちらに置いておきます。帰る時忘れんといてや。靴そのままで」
(島民)「履いていていいの」
(澤井室長)「いいのいいの。ちょっとここで待っててもらえる?」

(近江八幡市新型コロナウイルスワクチン接種対策室 澤井保室長)
「(Q順調ですか)そうですね 順調にきていると。(Q特にトラブルはなく?)はい、いまのところ」

開始から2時間半後、この日、110人が接種を終えました。

(20代島民)「(島外との)行き来が激しいので、島の中に(新型コロナウイルスを)持ち込んだらすごくまずいと思っていて、島の人もすごく心配されていたので、先に対策とっていただいて本当によかったと思います」
(40代島民)「私らが先に、若いのに打ってもいいのか、そういう思いもありましたが、いざ打てて一安心しています」
(40代島民)「変異株も入ってきているので、感染対策はみんなと同じようにしていこうと思います」

問題なくワクチン接種完了

4月25日も接種を行い、希望者全員が問題なく打ち終えました。

(近江八幡市新型コロナウイルスワクチン接種対策室 澤井保室長)
「無事終わってよかったです。3週間後にも(2回目の接種が)控えていますので、十分に準備をしていきいたいなと思っています」

島民の命を守るワクチン。接種の完了まであと少しです。

(4月27日放送 MBSテレビ「よんチャンTV」より)

2021年04月28日(水)現在の情報です

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