2022年03月14日(月)公開
「自分の街が破壊される光景を脳裏に焼き付けて」ウクライナ避難民を支援する日本人がみた戦争の実相...家族引き離され避難する子どもたちも
編集部セレクト
ロシア軍の侵攻により、ウクライナから国外へと避難する人々の数は230万人を超えています。そんな中、隣国・ポーランドで避難民の支援を続けている1人の日本人・坂本龍太朗さん(36)がいます。坂本さんは、ポーランド・ワルシャワの南東45kmツェレスティヌフ郡に在住、アメリカ、ベラルーシ、ポーランドに留学の経験があります。ワルシャワで2011年に日本語学校を設立、日本語教師として働いています。その坂本さんが撮影した現地の映像と共に避難所や避難民の方の状況について、毎日放送の「よんチャンTV」でリモート中継を結び話を聞きました。
隣国「ポーランド」への避難民は230万人超
ウクライナの隣国・ポーランド。避難民が続々とやってきています。「国連難民高等弁務官事務所」によりますと、ウクライナから国外への避難民は230万人を超えています。
(坂本龍太朗さん)
「ちょうどいま、難民の皆さんがいらっしゃいました。バスで国境からここまで辿り着くということですね」
体育館のベッドで寝泊まり…子どもたちの姿も
そんな中、ポーランドでいま、1人の日本人が避難民の支援を行っています。日本語学校で教師をしている坂本龍太朗さん(36)です。
(坂本龍太朗さん)
「体育館が現在、難民の収容施設となっている場所です。ウクライナ語で『こちらは避難民受け入れのポイントです』という旗を掲げています」
体育館にはベッドが置かれ、ロシア軍の攻撃から逃れてきた避難民が寝泊まりできるようになっています。
(坂本龍太朗さん)
「いま、こちらにいる3人の子どもたちはウクライナのオデッサから来た子どもたちなんですけれども。彼らはとても日本好きの男の子です」
避難する人は高齢者や女性など様々…必要な支援物資は多岐にわたる
また、子どもたちのため壁にはウクライナの地図が貼られ、どこから、何歳の、誰が来たのかが分かるようにしてあります。
(坂本龍太朗さん)
「この中がシャワー室です。1つしかないので交代で使うという感じです。シャンプーや歯ブラシもあり、自由に取ることができます」
各地から届いた支援物資。避難民は高齢者や女性、そして子どもたちと年代も幅広いため、必要な物資は多岐にわたります。
(坂本龍太朗さん)
「子どもの服、靴下、女性用の下着などもあります。化粧品関係ですね。向こうにあるのはオムツです、昨日に比べて数は増えていますね。子どもが時間を過ごすスペースです。ノートやクレヨン、パズルなどもたくさんあります」
突然、故郷を追われた子どもたちは精神状態が不安定になりやすく、気配りが欠かせません。
マイナス11℃の中、駅構内で寝泊まりする避難民「本当にやるせない気持ち」
3月11日放送のよんチャンTVで坂本龍太朗さん(36)にリモートで中継を結び、ウクライナからの避難民の状況や避難所の現状について話を聞きました。
ーー避難所は現状どのような状況なのでしょうか?
(坂本龍太朗さん)
「きょう(3月11日)までですね、本当に女性、高齢の女性や子どもがほとんどですね。実際に私は今までに一度も60歳以上の方を含めて男性を見ていません。皆さんこちらへ夜に到着され、その後ワルシャワ近辺などでここを経由地として1泊2泊してまた次の場所へ行くという方が本当に多いです」
ーー坂本さんが送ってくださった動画の中で、シャワー、トイレ、子どもたちのクレヨン、オムツなどを目にしたんですが、色々な避難所があると思うんですが設備も含めた受け入れ状況はどういうものでしょうか?
(坂本龍太朗さん)
「設備は場所によって全く異なりまして、足りてない場所もあれば、私の所のようにまだ余裕がある場所もあるんですね。例えば国境付近ですと、本当に場所がなくて、小学校の体育館などを利用していますし、さらにシャワーがないような例えば倉庫のようなところも今開けてるんですね。そこにはトイレも1個しかないので、本当に長い列ができているという話も聞いています。またワルシャワを経由してベルリンや、また飛行機で第三国へ行く、そういった人たちはワルシャワの駅構内などで寝泊まりしているんですね。3月11日の朝の4時の時点で気温がマイナス11℃なんですよ。そんな中で本当に国境で今並んでいる、出国を待っている子どもたち、また駅の構内で、本当に寒い中、夜通し次の便を待っている人たち、それを思うと本当にやるせない気持ちになります」
ーー受け入れ先は体育館や倉庫の他にはどんな場所が用意されているのでしょうか?
(坂本龍太朗さん)
「地域によっては例えばホテルをそのまま開放したりとか、学生の寮というのも開放されています。この前南部の方に視察へ行ってきたんですけど、そこは一つの寮を全て孤児のため、ウクライナの孤児院がそのままそこに引っ越してきているといったケースが見られました。その他にも施設以外に、ポーランドの家庭に入っているウクライナ人の家族も、既にたくさんいらっしゃいます」
「戦争の光景を目にして頭によぎる…」精神的な問題を抱える避難民も
ーー子どもだけで国境を渡ってくるようなシーンも日本には伝わってきているのですが、実際にそのような状況はあるのでしょうか?
(坂本龍太朗さん)
「いやまさにその通りですね。私の周りで日々、ウクライナの方々と接していて、国境までお父さんやおじいさんと一緒に来たんだけど、その後、国境で家族が引き離されてしまった。お父さんは戦場でおじいさんは戦場へお兄さん弟の戦場へ、そして家族の中で女性あとはおばあさんと子どもたちだけで国境を越えてきたというケースもあります。お母さんが国境を越えることができなかったので、例えばおばあさんに預けてもらったりとか、国境でその場で会った人に子どもを預けてポーランド側の国境にいらっしゃる、そういったケースもあります。子どもだけで越えてくるケースはこちらでも報道されています」
ーー難民の皆さんの精神状態というのは今どういう状況ですか?
(坂本龍太朗さん)
「始めの4~5日はまだ問題ないという、問題ないと言うと言い過ぎですけどそこまで大変ではなかったんですね。ただ現在、精神的な問題を抱えているウクライナの方の割合が増えています。どういったことかといいますと、初めの数日はやはりウクライナの西部リビウの地域、あの辺から来る方がいらっしゃったんですけど、今現在はキエフ、オデッサ、ルガンスクなどウクライナ全土から来ています。彼らは既に戦争の光景を目にしてからポーランドにいらっしゃっています。その前に戦争の例えばミサイルや爆撃機そういったものを見る前に来た人と比べて、この戦争で自分たちの町の幼稚園が破壊される様子など、それが脳裏に焼き付いたまま、この安全・安心なポーランドに来てもなお、それが常に例えば目を閉じると頭の中によぎる。そういったところから精神的な問題を抱えている子どもや親が多いと思います」
『パスポートやビザなし』でも受け入れ…国境の街からは「特別列車」が運行
ーー過去には様々な国から難民がヨーロッパに押し寄せることがありました。一部の国は受け入れに決して友好的ではありませんでした。しかし、今回は多くの国が国境を開いて難民・避難民を受け入れている国があります。過去との違いはどのような点にありますでしょうか?
(坂本龍太朗さん)
「過去と違うのは、やはりアフリカやシリアなどの難民と比べて、そこはある程度白人社会とそうではないというところの違いがあるということが、この場ではっきり認めていかなければならないと思います。このポーランドから見ますと、ウクライナ人をなぜここまで温かく受け入れているかといいますと、言語的にウクライナ語、ポーランド語もスラヴ語派です。家庭に入ってもそこでそれなりの会話が成り立つわけです。また民族的にもスラヴ民族ということもありますし、ウクライナの西部は元々ポーランドの領域内であったこともあるわけです。そういった意味では、ウクライナ人はポーランドととても深い繋がりがありまして、今回の侵攻が始まる前、ウクライナ人はポーランドに約100万人住んでいたんですね。学生であったり、結婚していたり、または土木事業に、そういったところに従事していたウクライナ人がたくさんいたんです。そういった意味では、もう既にポーランド人の中には同僚、上司や部下であったり、学校の友達がウクライナ人、そういった人が多かったんですね。そのような意味でヨーロッパでは比較的ウクライナからの方々を受け入れる準備ができていると思います。ポーランドの経済支援として二つの点があります。一つはウクライナ人に対して、もう一つはポーランド人の受け入れに対してです。まず初めにウクライナ人に関してはいくつかの大きな支援があります。例えば、パスポートや就労ビザ、そういうのも全く持っていないわけですね。ワクチン証明書もみんな置いてきてるんです。そういったものを全て取っ払って、例えばビザがなくても、今、ウクライナ人は就労することができます。2つ目にそのポーランドの国鉄はポーランド国内どこでも乗り放題という状況です。3つ目に今現在ポーランドと首都ワルシャワ、そして国境の街の間に『人道特別列車』というが走っています。これでも移動できるようになっています。最後に、これはとても大きいんですけど、ポーランドでポーランド人と同じようにウクライナの子どもたちにも、子ども手当が来週あたりから支給される予定です。ポーランド側に対しては、現在のところ、正直、全て受け入れに関しては自治体の負担となっているわけですね。今後はポーランドでも電気代やガス代が上がってるわけですが、そうした中で部屋があるんだけど、経費の面で受け入れができないという家庭も、実際に周りにはあるんですね。そういったところで今後、ウクライナ人を受け入れているポーランド人の家庭や自治体に対してやはり何らかの財政的な措置というのは必要になってくると思います」
「日本でもぜひ温かく受け入れてほしい」
ーー坂本さん自身もご自宅で難民を受け入れたり、受け入れようとされていらっしゃるんでしょうか?
(坂本龍太朗さん)
「ワルシャワにはまだそれなりに受け入れ家庭がありますし、家でも受け入れる予定なんですね。私個人的な話なんですけど、子どもが2人いるんです。5歳と1歳半の子どもがいます。子どもに対しては本当にいい環境だと思うので、正直、お母さんと子ども2人ですとか、またはその妊婦さんであっても家では受け入れる態勢を整えています」
ーー日本も難民の受け入れをする方向で話が進んでいます。もしウクライナの皆さんが日本にやってきたときに、我々今からどういう準備をしておけばいいか、そしてどういう気持ちで受け入れたらいいか何かアドバイスはありますか?
(坂本龍太朗さん)
「大阪という話で言いますととても特別な場所なんですね。なぜかといいますと、今からちょうど100年前、1922年に大阪はポーランドの孤児を受け入れているんです。ポーランドはロシアに虐げられ多くのポーランド人が政治難民としてシベリアに送られました。その時にどんな思いで当時の大阪の人たちが温かく、ポーランドの難民の子どもたちを受け入れたのか。そういったところをまず大阪の皆さんに知ってもらい、こういった歴史の上で今回これからウクライナの難民を受け入れるってことをぜひ検討していただきたいなと思います。女性も子どもも今戦っているウクライナのお父さんやお兄さんから預かった大切な命なんですね。彼らは今後のウクライナの復興に絶対に必要な人材です。そういったところも含めまして日本の皆様には本当に温かく受け入れていただきたいなと思っています」
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