世界一とも言われる熱狂的なファンが支える阪神タイガース。そのタイガースの魅力にどっぷりハマった外国人がいます。なぜタイガースにハマったのか？また、タイガースを応援し続ける理由とは？世界に“虎情報”を発信する外国人の日常に迫りました。

「甲子園の応援が一番」自宅の“タイガース部屋”には５０点以上のグッズ

　カナダ人のトレバー・レイチュラさんが初めて甲子園に足を踏み入れたのは１１年前。それ以来、タイガースの虜になりました。

　（トレバー・レイチュラさん）
　「日本のプロ野球の応援の仕方が素晴らしいですよね。特に甲子園が一番だと思うんですけどね」

　甲子園のおひざ元である兵庫県西宮市にトレバーさんの自宅はあります。２４年前に来日したトレバーさん。日本人の妻と９歳・６歳の息子２人と４人で暮らしています。

　自宅にある“タイガース部屋”に案内してもらうと、ユニフォームが１枚、そして別のユニフォームなど、タイガースグッズが次々と出てきます。その数なんと５０点以上。

　さらに本棚にもあふれんばかりのタイガース愛。チームに関する歴史の本などがびっしりと並びます。

　数あるグッズの中でもお気に入りというユニフォームを見せてもらいました。

　（トレバー・レイチュラさん）
　「『ＧＡＩＪＩＮＳ』って書いていますね。『ＧＡＩＪＩＮ』に『Ｓ』で複数形。これは私が阪神ファンになってからの外国人野手の全員の背番号が書かれています」

　そんな“熱烈虎党”のトレバーさん。最近のイチオシ選手は？

　（トレバー・レイチュラさん）
　「佐藤輝明ですね。（背番号）８番。阪神に素晴らしい選手が現れて、応援せざるを得ないですね。（佐藤選手は）去年、『今年こそ優勝しましょう』とかそういった話をしたと思うんですよ。いきなりの１年目の選手が今年『こそ』っていう言葉をなぜ選択したのかっていうのが気になったんですよね。その言葉を聞いて、彼は僕らの仲間・味方ですという確信がありました」

教壇に立つときも“つかみ”は阪神タイガース

　普段は立命館大学の英語講師として教壇に立つトレバーさん。そこでも“つかみ”はやはり、阪神タイガース。

　（授業で話すトレバー・レイチュラさん）
　「Ｉ　ｒｅａｌｌｙ　ｌｉｋｅ　ｔｈｅ　Ｈａｎｓｈｉｎ　Ｔｉｇｅｒｓ．Ｉ　ｆｅｌｌ　ｉｎ　ｌｏｖｅ　ｗｉｔｈ　ｔｈｉｓ　ｔｅａｍ　ａｎｄ　ｗｉｔｈ　ｔｈｉｓ　ｓｔａｄｉｕｍ　ａｎｄ　ｗｉｔｈ　ｆａｎｓ．（私は阪神タイガースが大好きです。このチームの虜になりました。球場もファンもみんな大好きです）」

　授業の合間も、やっぱりタイガースのチーム事情が気になります。次期監督に関する記事が書かれたスポーツ新聞を見て…。

　（トレバー・レイチュラさん）
　「岡田ですね～。これも驚きました。うれしいですよ。期待しています」

同僚に誘われて甲子園へ…気付けばタイガースに夢中に

　でもなぜ、ここまでタイガースを好きになったのでしょうか。そのきっかけを聞きました。

　（トレバー・レイチュラさん）
　「教員室で周りの教員たちの会話を聞いて、あとスポーツ紙が置いてあって、それを毎日のように見て聞いて、僕も甲子園に行ってみようかなという気持ちになったんです」

　同僚に誘われ、初めて踏み入れた甲子園。球場の雰囲気に衝撃を受け、気付けば夢中になっていたそうです。

　（同僚の講師）
　「もちろんレイチュラさんがタイガースにとても熱狂しているのは知っています。球場にも何試合か一緒に観にいきました」

試合を英語で伝えるサイトを立ち上げ…メッセンジャー氏らの家族から感謝の連絡！？

　そんなタイガース愛が強すぎるトレバーさん。８年前に趣味で、あるホームページを立ち上げました。その名も「Ｈａｎｓｈｉｎ　Ｔｉｇｅｒｓ　Ｅｎｇｌｉｓｈ　Ｎｅｗｓ」。

　タイガースの全１４３試合を英語で伝えるというもので、選手の成績はもちろん、毎試合、独自目線でＭＶＰを選ぶなど専門誌顔負けの充実ぶり。これがスポーツ紙の記者の目に止まり、“阪神大好き外国人”としてコラム連載を担当するまでに。

　さらに、思わぬ反響はほかにもあったそうです。

　（トレバー・レイチュラさん）
　「一番が、ランディ・メッセンジャーのお母さんから連絡がきたことです」

　なんと、あの元阪神タイガースの大投手であるランディ・メッセンジャー氏の母親から連絡がきたのです。

　【メッセンジャー氏の母親からの連絡の内容】
　『本当にありがとうございます。あなたにいくら感謝してもしきれません』

　また、ウィルカーソン投手の妻からは『英語翻訳に感謝しています』、ガンケル投手の妻からは『記事がとっても素晴らしいです！ありがとう』という連絡が。助っ人選手の家族にとって大切な情報となり、記事を心待ちにする人が年々増えてきているのです。

　（トレバー・レイチュラさん）
　「（Ｑ面倒くささは？）ありますね、あります。シーズン始まって序盤のほう、最初の２５試合で４勝しかしなかったんですよね。『負け試合をずっと報告しても、誰が見るねん』と。（Ｑそれでも続ける理由は？）阪神が好きっていうのもあって、いろんな人の役に立ちたいっていう気持ちが一番大きいですかね」

「みんなが１つになって応援するのが日本を象徴している」

　シーズン終盤、クライマックスシリーズ進出をかけて戦いを続けていたタイガース。９月２０日、トレバーさんの姿は甲子園にありました。２位の横浜ＤｅＮＡベイスターズとの重要な一戦です。

　１回表、阪神はいきなり先制を許してしまいます。

　（トレバー・レイチュラさん）
　「甘かったな。まあでも大丈夫、大丈夫」

　その後は反撃の糸口を探ります。ところで、阪神タイガースの象徴と言えば熱狂的な応援ですが…。

　（トレバー・レイチュラさん）
　「気づいたんですけど、この３年間、声が出せないから新しい応援歌を覚えていないんですよ」

　徐々に緩和されているとはいえ、いまだにマスク。声を出しての応援ができない球場内。

　（トレバー・レイチュラさん）
　「みんなが１つになって、同じ気持ちで応援するのが、日本を象徴していると思います。（海外のように）早く日本も同じようになってほしいなと思いますね」

　８回裏、阪神は勝ち越しに成功して３対２に。なおも迎えるバッターは、トレバーさんのイチオシ・佐藤輝明選手。バットを折られながらも執念のタイムリーを放ち、点差を広げます。ところが喜びもつかの間、その後、投手陣が粘れず、終わってみれば４対５で逆転負け。

「人生だって優勝ばっかりじゃない。阪神は人生に似ている」

　うまくいきそうでいかない。タイガースの応援を続ける理由はここにもあるといいます。

　（トレバー・レイチュラさん）
　「人生だって優勝・優勝・優勝ばっかりじゃないですよね。良いときもあれば苦しいときもあります。その面において阪神は人生に似ていると思うんですけど、もうちょっと優勝があればいいなと。人生にも、阪神にも」

　苦しいときがあるからこそ、喜びは倍増する。日本一に向けた挑戦はまだ続きます。