WORK職種紹介

#09

DOCUMENTARYDIRECTORドキュメンタリー
ディレクター

NAME
吉川 元基Genki Kikkawa
DEPARTMENT
報道情報局/番組センター
CAREER
2012年度入社

COMMENT

学生時代は六畳一間、風呂トイレ台所共同の、家賃2万のアパートで過ごす。高齢者や人に言えない事情を持つ人が60人近く住む環境でともに暮らすなか、アパートを取材にきた記者が住人から次々と「言葉」を引き出していく魔法のような仕事ぶりを見て、報道の仕事に興味を持つ。MBSへ入社した後は営業デスク、報道記者を経験し、現在はドキュメンタリー『映像』シリーズのディレクターとして活躍中。

おシゴト紹介01 / 04

映像で、
たくさんの人生を
後押しする。

あなたの仕事を教えてください。

2023年に43年目を迎えるドキュメンタリー『映像』シリーズのディレクターを担当しています。取材対象者のリサーチからはじまり、企画、取材、構成、編集など、番組制作のすべてに携わるのがディレクターの仕事。企画内容は、弁護士や大学教授などの人脈を活かして、話を聞きながら探していきます。

私がドキュメンタリーの“主人公”とするのは、人生を賭けて頑張っている人や、誰にも助けられず困っている人。放送を通じて後押しをしたいという想いをモチベーションに、主人公に対して世界一詳しくなる意気込みで制作に臨んでいます。ただ、センシティブな事情を持っている方も多く、進め方には工夫や配慮が必要です。たとえ撮影許可をいただくことができたとしても、すぐにカメラを回してインタビューをはじめるのでは打ち解けていただけません。相手から見て「この人であれば話してもいいか」と思っていただくことが重要となります。もちろん人それぞれ関係性の築き方は変わるので、一緒に映画を観に行くこともあれば、お子さんと遊園地へ遊びに行くこともあります。

主人公に納得してもらえる映像、観る人の心に刺さる映像…さまざまな人に、観て、何かを感じてもらえる番組をつくりたいですね。

おシゴトの魅力02 / 04

放送後には、
少しずつ人生が
動くことも。

印象深い仕事はなんですか。

『93歳のゲイ』の取材です。パートナーができたこともなく、ずっと孤独と向き合ってきた男性。差別が怖くて、自分が同性愛者であることを89歳まで心に秘めて生きてきた方でした。なぜ発信できなかったのか、どんな社会的・歴史的背景があって発信できなかったのか、すごく知りたいと思いました。93歳で記憶も曖昧な彼。部屋にある写真を一緒に見て、当時の記憶を遡りながら質問を重ねていきました。取材期間はおよそ半年、撮影時間は3200分にも及び、取材を通じて、この人の人生を何かの形で表現したいと、強く思うようになりました。

放送後、男性は番組をきっかけに「自分の経験を後世に伝えたい」という想いを強め、LGBTの集会にも参加するようになりました。番組のDVDをお渡しした際にもとても喜んでくださり、「これ見てよ」と友人にも配ったそうです。社会のために、人生の辛さや苦しさを伝えたいと思うようになってくださる。この仕事の、新しい価値を発見した気持ちでした。また、放送後の反響も多くありました。性的マイノリティの方から「社会に溶け込んでいるけど自分を隠している人を、取り上げてくれてありがとうございます」というコメントをいただいたり、YouTube配信で180万回以上の閲覧を記録したり。なんと、2023年3月には映画化もされました。ドキュメンタリーをきっかけに、ひとつの人生がどう世の中に広がっていくのか、とても楽しみです。

おシゴトへの想い03 / 04

「MBSなら」と、
心を開いてくれる方も。

MBSのドキュメンタリーとは?

ドキュメンタリーは、人の心を動かすもの。テレビ局で長年培われてきた、カメラ、音声、編集などの技術力を存分に活かせる仕事です。なかでもMBSのドキュメンタリーの鉄則は、真摯に、取材対象者と向き合うこと。真実性を重視するため、実名・顔出しが原則です。

だからこそ、取材交渉を行う際にも、信頼できる放送局かどうかは取材可否を決める大きなポイントとなります。『映像』シリーズは2020年に40周年を迎えた歴史あるコンテンツ。事前に取材対象者に対し、「こんな番組を放送しています」と過去の放送を観ていただくのですが、それを観て「この番組なら」と答えてくださる方もいます。個人では決してできない、番組の信頼あってこそ届けることができる情報も多いと思います。

そんなドキュメンタリーの良いところは、視聴率には反映されない、社会的な影響力が大きいところ。報道記者時代、私の仕事は10分間の番組づくりでした。制作をしながら感じていたことは、1時間の特集をつくって、もっとたくさんの人に、時間をかけて情報を伝えたいという想い。『映像』は根強いファンもたくさんおり、今、当時の想いを満たして働くことができています。